植村健准教授(信州大学学術研究・産学官連携推進機構基盤研究支援センター/バイオメディカル研究所)と田渕克彦教授(バイオメディカル研究所/医学部分子細胞生理学教室)らの研究グループは小脳神経細胞の生存を制御する新しい分子機構を明らかにしました。神経発達障害に関連するシナプス前終末の細胞接着分子であるニューレキシンはシナプス後終末の細胞接着分子と結合することでシナプス形成を誘導します。研究グループは遺伝子改変マウスをもちいて小脳顆粒細胞におけるニューレキシンの機能を解析し、ニューレキシンが軸索からの神経栄養因子放出を調節することで小脳顆粒細胞の生存に必須の役割を担っていることを見出しました。今回の研究成果は脳神経回路形成のメカニズムの解明や自閉症などの神経発達障害に関わる今後の研究に役立つ知見になると期待されます。

本研究成果は米国の国際学術誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。

【論文タイトルと著者】
タイトル:Neurexins Play a Crucial Role in Cerebellar Granule Cell Survival by Organizing Autocrine Machinery for Neurotrophins
著者:Takeshi Uemura, Emi Suzuki-Kouyama, Shiori Kawase, Taiga Kurihara, Misato Yasumura, Tomoyuki Yoshida, Shuya Fukai, Maya Yamazaki, Peng Fei, Manabu Abe, Masahiko Watanabe, Kenji Sakimura, Masayoshi Mishina, Katsuhiko Tabuchi
掲載誌:Cell Reports(オンライン版)
掲載日:2022年4月5日(米国東部標準時間)
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2022.110624

プレスリリース(PDF:718KB)


ニューレキシン1, 2, 3を全て欠損させたマウスでは、小脳顆粒細胞が細胞死を引き起こす。小脳顆粒細胞が消失することで小脳が萎縮する。

野生型マウスでは小脳顆粒細胞の軸索から放出される神経栄養因子の自己分泌作用により細胞生存が維持されている。野生型マウスではニューレキシンはCbln1-GluD2と結合し、小脳シナプス形成を誘導する。ニューレキシン1, 2, 3を全て欠損させた顆粒細胞は神経栄養因子放出機構に異常をきたし、その結果、プログラム細胞死が誘導される。