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ゲノム情報整備を通して非モデル生物で形質遺伝学を実践する

興味のある形質があれば、その形質を持つ個体と持たない個体を交配し、F1世代を得る。続いてF1個体を、親のどちらかに戻し交配させ、BF1世代を得る。形質発現を支配する遺伝子を同定するために必要な作業は、つまるところただこれだけである。しかし、「ただこれだけ」が容易でないのが非モデル生物である。非モデル生物では、モデル生物での常識は通用しない。交配ができない、年に1回しか発生しない、ゲノム情報がない、ゲノム編集ができない、ネガティブな点を挙げていけばキリがない。しかし、だからといって、モデル生物だけを研究対象としていたら、進化の深奥を覗くことはできない。種の比較を通してこそ、我々はそれらの種がいかにして進化してきたか、その輪郭を掴むことができる。

 

 
これほど技術が発達してもなお、「解読できないゲノム領域」は存在する。W染色体は、その一例である。不完全ながらも、HiFiリードと光学マッピング技術を利用してカイコとイチジクカサンのW染色体の配列を解読することに成功した。
  天蚕糸を作る目的で飼育されるヤママユガは、屋内で飼育すると黄色の繭をつくり、屋外(あるいは青色LEDの下)で飼育すると緑色の繭を作る。しかし、そのメカニズムは未解明である。

 

≪研究から広がる未来≫


仮に、現存する全ての種のゲノムを解読し、それを比較することができたならば、我々はこれ以上ない分解能で、昆虫進化の輪郭を描くことになる。それが直ちに何かの役に立つのかどうかは分からない。確かなことは、現在、かつてない速さで生物多様性は失われており、「今この瞬間」を逃せば次はない、ということである。