ポリロタキサンとセルロース・キチン微結晶

教員氏名 | 荒木 潤 |
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職名 | 教授 |
所属 | 化学・材料学科 |
研究分野 | 超分子化学、高分子科学、多糖類科学 |
出身校 | 東京大学 |
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一言コメント
ネックレス状超分子であるポリロタキサンや、天然多糖類のセルロース・キチンの結晶微粒子を用いた新規機能性材料の創製を試みています。詳細は研究室HPをご覧ください。
研究紹介
ネックレス状の「超分子」とセルロース・キチンウィスカー補強材料
荒木研究室では大きく2つのテーマで研究を進めています。1つ目は「ポリロタキサン」と呼ばれるネックレス状の超分子を作り、様々な化学修飾を施して、ゲル・繊維・フィルムなどの機能性材料を作ろうとしています。2つ目は、木材や植物から取れる「セルロース」やカニ・エビの殻に含まれる「キチン」の微結晶粒子を使った実験です。これらの微結晶は天然由来でナノサイズ、さらに1本の弾性率や強度は鋼鉄よりも強く、さらに生分解性がある魅力的な材料で、フィルムや繊維の補強材料として応用を進めています。
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ポリロタキサンは幅1ナノメートルの"ナノサイズネックレス分子"フィルムに成型することもでき、携帯電話の外装にも使われた。 | 左は植物中のセルロースウィスカー。ナノサイズのファイバーは鋼鉄よりも強い弾性率を持つ。さらに偏光板の間で光る液晶にもなる。 |
≪研究から広がる未来≫
ポリロタキサンと、セルロース・キチンの微結晶。どちらも形や性質が興味深く、大学の学術的な研究対象としても興味深いのですが、将来様々なところで役に立つ可能性も秘めています。ポリロタキサンを混ぜた塗装は、傷がつきにくい携帯電話の塗装として既に実用化されています。また、セルロース微結晶を補強材料として使うための特許出願に向けた研究も進められています。当研究室で自分の興味深いテーマを追求しながら発見した新しい材料が、社会で広く使われるようになることでしょう。
ガラス繊維より硬い天然の補強材! "セルロースナノウィスカー"
暗闇で怪しい光を放つ謎の液体 (動画あり:上)。その正体は、植物由来食物繊維のセルロースの微細繊維 "セルロースナノウィスカー" です。植物や海藻、ホヤという動物、ナタデココの中などに、食物繊維の一種であるセルロースが含まれています。セルロースの長い分子が束になって形成している超微細繊維を塩酸や硫酸を使って取り出すと、電子顕微鏡でなければ観察できないような微粒子 (幅10 nm、長さ100 nm;写真中央) を取り出すことができます。このセルロースの微粒子はとても軽いのにその一本の強度はガラス繊維よりも強く、生分解性があります。燃やしても有毒ガスを発生しないので環境負荷を与えず、そのためプラスチックの補強材として世界各国で研究が進められています。化学・材料学科の荒木 潤 准教授は、このセルロース微粒子を抽出する技術、またさまざまな物質の補強のために表面を改質するための、世界最先端の技術を持っています。セルロースに銀の微粒子や高分子鎖を結合して分散性や抗菌性を上げたり、セルロース粒子だけを使って繊維を紡糸する技術を開発したりしています (写真下)。
荒木准教授はセルロース粒子の乾燥粉末を世界で初めて開発し、ベンチャー企業から商品化するだけでなく、他の企業との共同研究も盛んに行っています。
(上) 木材から抽出したナノセルロースの水懸濁液を偏光で観察
(中央) 綿から取り出したセルロース微粒子の電子顕微鏡写真
(下) セルロース微粒子を射出して繊維を紡糸
(掲載期間 平成31年 3・4月)