ゲノムから昆虫の進化を解き明かす
| 教員氏名 | 李 允求 |
|---|---|
| 職名 | 助教 |
| 所属 | 応用生物科学科 |
| 研究分野 | 遺伝学、ゲノム科学、進化生物学 |
| 研究課題 | 1. (鱗翅目昆虫を中心とした)昆虫のゲノム解読 |
| 出身校 | 東京大学 |
一言コメント
昆虫を大量に飼育していると、そのうち観察眼が涵養される。身につけた観察眼を以てすれば、何を研究するべきか、昆虫の方が教えてくれる。遺伝学は、現象の根本的な原因を突き止めるための方法論を発展させてきた。昆虫で遺伝学を実践するということは、要するに観察が全てであり、その前段となる飼育が全てである。
研究紹介
ゲノム情報整備を通して非モデル生物で形質遺伝学を実践する
興味のある形質があれば、その形質を持つ個体と持たない個体を交配し、F1世代を得る。続いてF1個体を、親のどちらかに戻し交配させ、BF1世代を得る。形質発現を支配する遺伝子を同定するために必要な作業は、つまるところただこれだけである。しかし、「ただこれだけ」が容易でないのが非モデル生物である。非モデル生物では、モデル生物での常識は通用しない。交配ができない、年に1回しか発生しない、ゲノム情報がない、ゲノム編集ができない、ネガティブな点を挙げていけばキリがない。しかし、だからといって、モデル生物だけを研究対象としていたら、進化の深奥を覗くことはできない。種の比較を通してこそ、我々はそれらの種がいかにして進化してきたか、その輪郭を掴むことができる。
|
|
|
|
これほど技術が発達してもなお、「解読できないゲノム領域」は存在する。W染色体は、その一例である。不完全ながらも、HiFiリードと光学マッピング技術を利用してカイコとイチジクカサンのW染色体の配列を解読することに成功した。 |
天蚕糸を作る目的で飼育されるヤママユガは、屋内で飼育すると黄色の繭をつくり、屋外(あるいは青色LEDの下)で飼育すると緑色の繭を作る。しかし、そのメカニズムは未解明である。 |
≪研究から広がる未来≫
仮に、現存する全ての種のゲノムを解読し、それを比較することができたならば、我々はこれ以上ない分解能で、昆虫進化の輪郭を描くことになる。それが直ちに何かの役に立つのかどうかは分からない。確かなことは、現在、かつてない速さで生物多様性は失われており、「今この瞬間」を逃せば次はない、ということである。

