“バイオマス” と “水” から高付加価値材料を創出

教員氏名 | 長田 光正 |
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職名 | 教授 |
所属 | 化学・材料学科 |
研究分野 | 化学工学、超臨界流体工学、バイオマス工学 |
研究課題 | (1) キチンナノファイバーの調製 |
出身校 | 東北大学 |
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一言コメント
化学というと色々な薬品を使うイメージがあるかもしれませんが、それを環境に優しい "水" に置き換えることが私たちの目的です。"水" を使って、捨てられている地域のバイオマス資源から機能性材料を創りだします。
研究紹介
"水" を使った地域資源バイオマスからの環境に優しい化学の "ものづくり"
最近、温暖化など地球規模での問題がニュースになっています。これまでのように大量かつ安価に "もの" を作るだけでなく、環境に優しい "ものづくり" が求められています。これに対して、私たちは "超臨界水" と "高温高圧水" というちょっと変わった "水" を用いた化学の研究を行っています。"水" を使って、有効利用されずに捨てられている木材・魚鱗・イカ中骨などの地域資源バイオマスから、付加価値の高い化学製品 (食品や医薬品) をつくることが目的です。例えば、イカ中骨などに含まれるキチンからナノファイバーなどの機能性素材をつくっています。
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≪研究から広がる未来≫
化学というと色々な薬品を使うイメージがあるかもしれませんが、それを環境に優しい "水" に置き換えることが私たちの目的です。水は、普通の圧力 (1気圧) では、100℃で沸騰しますが、圧力をかけると100℃以上でも液体状態を保ちます。温度、圧力を操作することで水の性質 (pH [ピーエッチ] など) もコントロールできます。つまり、酸・アルカリを使わなくてもpHが変えられます。この "水" を使って、薬品をできるだけ使わずに、様々な化学製品を作る方法を実現します。
自然界の仕組みに学んだ"水"を使った化学
化学というと色々な薬品を使うイメージがあると思います。化学反応によって何かを作る時には、原子や分子などの組み合わせを変える必要があります。原子や分子は何らかの化学結合で繋がっているので、それを一度切って (結合を弱めて)、また別のものと繋げる (結合を強める) ことが必要です。結合を弱めたり強めたりすることは、目的の原子や分子の周りに「別の物質」を置くことで可能です。この「別の物質」を置くことが、色々な薬品を使うということになります。では、他の方法はないのでしょうか? 自然界には、実験室にあるような薬品はほとんど存在せず、"水"を中心とした化学反応が行われています。その理由は、"水"の機能を最大限利用して「別の物質」をできるだけ使わない仕組みになっているからです。温度や圧力などをコントロールすることで、"水"の様々な性質 (極性やpH) を変えることができます。将来的には、自然の仕組みに学んだ"水"を使った化学にシフトしていくことも考えられます。
化学・材料学科の長田 光正 准教授は、"水"の機能を活用した化学を探求しています。木はセルロースという高分子が集まったナノファイバーという細い繊維から成り立っています。このセルロースのナノファイバーが"水"に分散した液体を、温度160℃、圧力0.6 MPaで30分程度処理すると、写真のような色々な形状を維持したハイドロゲルになります。これはナノファイバーの周りの"水"の環境を適切にコントロールすることで、ナノファイバー同士の間に働く力を変えて、部分的にナノファイバー同士を接着しているためです。このように薬品を使わなくても、"水"の温度や圧力を操作することで、原子や分子の間の力を制御する研究を行っています。
(掲載期間 平成31年 1・2月)