「食用キノコ マスタケ由来の抗酸化活性物質 inaoside Aの初の全合成」研究がAsian Journal of Organic Chemistry誌に掲載され、Front Coverにも採択されました
天然物合成化学研究室 高尾朋哉さん(大学院総合理工学研究科農学専攻 修士2年)、河村篤 助教(バイオメディカル研究所)、真壁秀文 教授(学術研究院(農学系)/ バイオメディカル研究所)らは、食用キノコ Laetiporus cremeiporus (マスタケ) に含まれる抗酸化活性物質 inaoside A の初の全合成を達成しました。本研究成果はAsian Journal of Organic Chemistry誌に掲載され、Front Coverにも採択されました。Front Coverのイラストは天然物合成化学研究室 齊藤葉名さん(大学院総合理工学研究科農学専攻 修士1年)がデザインしました。
Inaoside A は2024年に河村助教、真壁教授らによって伊那キャンパス構内にて採取した食用キノコ Laetiporus cremeiporus (マスタケ) 子実体の抽出物から発見された抗酸化活性物質です。Inaoside A の構造的特徴として、α-D-リボフラノシド構造が挙げられます。本研究では、Schmidtグリコシル化反応による立体選択的な α-D-リボフラノシド構造の構築、および inaoside A の全合成を目指しました。
Schmidtグリコシル化反応はグリコシド結合の形成反応として一般的な手法です。これまでに報告されているリボース誘導体を用いた本反応は、そのほとんどが β 選択性を示します。リボース誘導体を用いたSchemidtグリコシル化反応の α/β の立体選択性は、リボース部位の保護基の選択に伴うテトラヒドロフラン環のコンフォメーション変化に依存すると考えられています。本研究では、基質の調製とグリコシル化後の脱保護が容易な、3つの水酸基を全てTBS基で保護したリボース誘導体を用いることで、α 選択的なSchemidtグリコシル化反応を実現しました。また、本反応を鍵反応とした inaoside A の初の全合成を達成しました。
今後、inaoside A のより詳細かつ多岐にわたる生物活性評価を実施し、医薬品リードとしての可能性を検討してまいります。
詳細については、以下からご確認ください。
論文タイトル:First Total Synthesis of Inaoside A
著者:Tomoya Takao +, 1, Atsushi Kawamura +, *, 2, Hidefumi Makabe *, 2, 3 (+ equal contribution) (* corresponding author)
著者所属:1信州大学大学院総合理工学研究科農学専攻, 2信州大学先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 3信州大学学術研究院(農学系)
DOI : 10.1002/ajoc.202400547
URL : https://aces.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ajoc.202400547
URL (Front Cover) : https://aces.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ajoc.202481201