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令和8年度「山岳環境保全学演習」を実施しました

お知らせ演習林系の実習

千畳敷カールでの高山植物の観察(8月19日) ※ 熱中症予防のため、休憩時や危険のない場所ではヘルメットを一時的に外している。
千畳敷カールでの高山植物の観察(8月19日) ※ 熱中症予防のため、休憩時や危険のない場所ではヘルメットを一時的に外している。
主稜線上(木曽駒ヶ岳山頂付近)での登山道の観察(8月19日)
主稜線上(木曽駒ヶ岳山頂付近)での登山道の観察(8月19日)
西駒山荘での天気図作成(8月20日)
西駒山荘での天気図作成(8月20日)
亜高山帯の温暖化試験地での見学と観察(8月20日)
亜高山帯の温暖化試験地での見学と観察(8月20日)

1.演習名
「山岳環境保全学演習」

2.目的
日本アルプスをはじめとする山岳・山地に恵まれた信州という実際の現場において、初歩の種同定から、フィールドワークの実践、記録から取りまとめまでを一貫して身に付ける。

3.実施日
令和8年8月18日火)~21日(金)(3泊4日)
コロナ禍が全国的に深刻化した2020年度以降、本演習は中止、学内(信州大学農学部)学生のみ対象の開講、学外学生向けと学内学生向けの別々(2回)の開講などの対応を取ってきた。2024年度には、withコロナの状況となり、通常の(学内外の学生を交えた)開講を予定していたものの、台風10号の影響で中止となった。2025年度に5年ぶりに通常の形で演習を開講し、2026年度も引きつづき開講することができた。

4.実施場所
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)西駒、構内ステーション

5.担当教員
荒瀬輝夫准教授、小林 元准教授、室谷楓香助手、TA3名

6.受講者数
15名

7.実施状況概要【実習の概要】
受講生は、他大学学生として5大学から各1名ずつ(計5名)と、学内(信州大学農学部)学生10名の総計15名が集まった。大学院・山岳科学教育プログラムの「山岳フィールド実習A」(山岳環境保全学アドバンス演習)については、今年度の申し込みはなかった。実習指導は荒瀬輝夫、小林 元の両准教授と室谷楓香助手の他、3名のTA(信州大学農学部の4年生2名、修士2年生1名)を加えて実施した。

初日は、食と緑の科学資料館「ゆりの木」にて実習のガイダンスと講義を行い、西駒演習林の自然紹介、中央アルプス登山の歴史、山岳環境、および本演習で掲げているSDGsについて概説した。また、亜高山~高山でみられる針葉樹や鳥類についても解説した。講義後に翌日のスケジュールの確認を行った後、桂小場学生宿舎へと移動し、必要な装備・物品等の確認を行った。

2日目は7時すぎに桂小場学生宿舎を出発し、学バスにて駒ヶ根市の菅の台バスセンターに移動して、路線バスとロープウェイを利用して千畳敷駅(標高2,612 m)まで達した。千畳敷のカール内の登山道ぞいで高山植物の説明を1時間ほど行った。その後、登山道を進み、11時ごろに主稜線(乗越浄土)に登り詰め、中岳を経由して、12時20分ごろ木曽駒ヶ岳の山頂(2,956 m)に至った。この日は霧に時折見舞われたものの天候は曇~晴れで安定していたため、予定通り北方向に主稜線(馬の背)をたどって、西駒山荘に向かった。途中、聖職の碑(大正時代の遭難記念碑)を見学し、西駒山荘には15時20分ごろに無事到着した。

3日目は西駒山荘にて管理人の宮下拓也氏の指導の下、約2時間かけて天気図の作成し、今後の天候について検討した。この日は終日、濃霧・霧雨~曇で、天候にあまり恵まれなかったため、例年実施している山小屋周辺のゴミ拾い活動は中止した。雨対策の装備を準備し、西駒山荘で早めの昼食をとった。11時すぎに西駒山荘を出発し、演習林の最高地点(将棊の頭、2,672 m)をへて、予定どおりの下山ルート(演習林内の丸尾根ルート)を進み、温暖化試験地、固定試験地での亜高山帯森林の見学・観察を実施した。しらべ小屋(標高1,950 mの中継点)に14時15分ごろ、桂小場学生宿舎に16時半すぎに帰着した。

最終日は9時に桂小場学生宿舎を出発して食と緑の科学資料館「ゆりの木」に再び集まり、里山から高山・亜高山帯の森林の成り立ちや人とのかかわりについての講義を行い、レポート作成を行った。

レポート作成にあわせて、受講者にアンケートへの協力をお願いした。アンケートの内容は、各実習内容についての満足度と有益さを評価と、演習参加後、興味関心が増大したこと、その他の感想・意見・要望等の自由記述である。

8.成果と課題

a.実習内容
受講者全員からアンケートの回答が得られ、1項目で無回答(1名のみ)が見られたものの、概ね「大変満足」「大変有益」という回答が圧倒的であった。とりわけ「山小屋問題」の評価が高かった(図1)。

評価の理由として、以下のようなコメントが寄せられた。

(動植物の調査・観察)
・専門家の付き添いのもと、高山植物を学べる機会が非常に貴重だから。
・普段は見られない高山植物や野島が観察でき知識がついた。
・様々な植物の説明が丁寧で、興味深かった。
・高山植物の説明も多く、雷鳥やホシガラスなどの野生動物の観察もできた。

(登山道の維持管理)
・多くの人が使うような道を管理することの重要さを実感した。
・植生の保護と、安全性の確保の重要性について理解できた。
・緑のロープを境に植物の有無が変化したため、登山道の必要性を感じた。
・実際の登山客の量や、登山道の状態を観察できて面白かった。

(天気図作成)
・天気図を自分で作成した経験はなく、作成方法や天気図の読み方を知ることができた。
・初めて天気図を作成したが、自分で記入することで理解しやすかった。
・丁寧に教えていただき、これからの登山に役立つ知識だった。
・自分の手で天気図を作成することで気象についての理解が深まった。

(山小屋問題)
・環境負荷を軽減する重要性を知り、意識を持てた。
・山小屋で排水が問題であるということを実状とともに知れたのは今までにない経験だった。
・ごみや排水の削減の大変さを体感できた。
・とてもきれいな山小屋だった。水を汚さないための取組もとてもよかった。

(亜高山帯森林での実地踏査)
・1日で高山帯から下りることで植生の変化を感じることができ良かった。
・標高差のすごい演習林であることを実感した。
・植生と標高による森林の成長の違いについて理解できた。
・普段見ることがない研究現場を見ることができた。

図1)実習の楽しさ.jpg

図1)実習の有益さ.jpg

図1.各実習・講義の楽しさ(上)と有益さ(下)

b.演習参加後に興味関心が増したSDGsの目標(複数回答)
15名中、目標13[気候変動]が8名、目標15[陸上資源]が7名と多く、目標3[保健]は1名と少なめであった。理由のコメントから、目標13[気候変動]については山岳域の植生に与える温暖化の影響、目標15[陸上資源]については植生・環境の保全や人とのあり方、目標3[保健]については体力向上についての気づきがあったことがうかがえた。

c.演習参加後に興味関心が増したこと(複数回答)
15名中、大多数(13名)が「山岳・登山」を挙げており、次いで「野生動植物」7名、「気象(天気図)」5名「山小屋問題」4名が回答しており、「ない」という回答はなかった。各実習での興味・向学心を喚起する学習効果として、山岳・登山の印象が非常に強く残った一方で、それ以外の項目についての印象がやや薄れてしまった可能性もある。

d.その他
要望・改善点についてのコメントとして、実習中の講師の説明が聞き取りにくいという意見は例年みられるが、今年度は1名のみであった。TA学生が集団の後方で補足説明するなどの措置を取ったことに加え、おそらく、受講者数が15名という小集団だったことも有利に働いたと思われる。

一方、演習林の桂小場学生宿舎でのガス給湯が安定せず、シャワーが頻繁に冷水になる状況がつづき、そのことについて15名中12名から要望が寄せられた。滞在中、日中は実習で出払っているため、実習スタッフだけで夜間に原因を特定して復旧することは困難であった。水・電気・ガスは欠かせないインフラであり、実習直前の確認と、不具合が生じたときの本部との連絡・応援体制を強化することを今後の課題としたい。

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