令和5年度「自然の成り立ちと山の生業演習」を実施しました
1.演習名
「自然の成り立ちと山の生業演習」
2.実習目的
「山岳環境保全学演習」「森林生産実践演習」「木材工学演習」の3つの演習を融合し、本格的なフィールド演習の未経験な非農学部生にも「自然の成り立ち」から森林作業と木材加工による「山の生業」を安全に体験できる初心者向けのダイジェスト演習として,演習林の各ステーションを利用して3泊4日の日程で開催する。
3.実施日
令和5年9月5日(火)~9月8日(金)
4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
西駒ステーション,手良沢山ステーション
5.担当教員
小林 元准教授,荒瀬輝夫准教授,宮本裕美子助手
6.参加人数
4名
7.概要
令和5年の自然の成り立ちと山の生業演習は手良沢山演習林の学生宿舎が改修のため利用できないことから,受講生には宿泊先として農学部の食と緑の科学資料館「ゆりの木」の宿泊施設を斡旋した。実習指導は小林 元,荒瀬輝夫の両准教授と宮本裕美子助手の他,技術職員として北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの高橋悠河職員,信州大学アルプス圏フィールド科学教育研究センターの木下 渉,野溝幸雄の両職員に2名のTAを加えて実施した。
初日の座学では演習林各ステーションの自然紹介と中部山岳の里山に関する講義,西駒演習林の地域研究を国土地理院の地形図を用いて行った。講義の感想として受講生からは,地域住人の森との関わりが森林の形態にどのような影響を与えているか知ることができてよかった,土地が違うと人と森との関わり方も違って面白かった。山や森には様々な歴史的背景があり,同じ人の手が加わったものでもその後大きく様々が変化することが学びになった,等の回答が得られた。
2日目の「自然の成り立ち編」は西駒ステーションで行った。桂小場ルートを経由して標高2,200mの亜高山帯まで登山した。この日は曇天で時折小雨もパラつく中,信大分岐からシラベ小屋を経由して信大ルートを下山する予定通りのコースを踏破した。受講生からは,前日の講義で学んだ人による森林利用の歴史と林内の様子の関係が分かりやすく見られて驚いた,国有林と民有林の違いが分かりやすく確認でき面白かった。亜高山帯の植生を見られてよかった,自分の住んでいる地域では見ることのできない植生が見られて非常に楽しかった。信大ルートの藪こぎでは,あれほどササが生い茂る山に行ったのは初めてだった,等の感想を得られた。
3日目の「山の生業編」は手良沢山ステーションで行った。38年生のヒノキ林において林分調査を行い,間伐によって林内環境がどのように変化するか調べた。また,管理棟の土場においてチェンソーを用いた丸太切りと斧をつかった薪割りを体験した。受講生からは,人工林の調査方法などを知ることができてよかった,調査が自分の思っていたよりも大変で重要なことであるのを気付かされた。チェンソーの使い方や手入れの方法を体験できて楽しかった。道具を実際に使ってみることができたのが有意義だった,チェンソーや斧など,なかなか自分の手で操作することがないため,新鮮で興味深かった,等の感想が得られた。
4日目の最終日には林分データを集計し,間伐による林分構造の変化を直径階ヒストグラムから考察した。合わせて,間伐による林内光環境の改善と公益的機能の向上について議論した。受講生からは,ヒストグラムを初めて使った,人工林についての授業は今までに受けたことがなかったので受けられて良かった,等の感想が得られた。
8.感想・今後の展望と課題
延べ4日間にわたって登山に森林調査,森林作業,データ解析と忙しい毎日であったが,大きな天候の崩れもなく,少人数でアットホームな実習を開講できたと思う。受講生から全体を通じた感想として,自然や環境について学べる機会があっても林業や木材加工について学べる機会がなかったので,今回詳しく学べてよかった。亜高山帯の動植物について詳しく学ぶことができ,山や森に対する興味が高まった。照葉樹林文化論のことも勉強してみたいと思う,等の回答が寄せられた。今回の実習は手良沢山学生宿舎改修のために安価な宿泊施設を利用することができず,他大学からの受講生が少なかった。次年度は新しく改修した学生宿舎に大勢の学生を迎え入れて実習を開催したい。