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2020年度「農林フィールド基礎実習」を実施しました

お知らせ演習林系の実習

植生図の作成と樹木の観察①/構内演習林~戸谷川河畔林で実施(10月3日)
植生図の作成と樹木の観察①/構内演習林~戸谷川河畔林で実施(10月3日)
植生図の作成と樹木の観察②/構内演習林~戸谷川河畔林で実施(10月3日) ※屋内ではマスク着用としたが、野外では お互いに距離をとればマスクを外しても よいこととした。
植生図の作成と樹木の観察②/構内演習林~戸谷川河畔林で実施(10月3日) ※屋内ではマスク着用としたが、野外では お互いに距離をとればマスクを外しても よいこととした。
箕輪ダムの見学(10月4日)
箕輪ダムの見学(10月4日)
東山山麓の用水路の見学(10月4日)
東山山麓の用水路の見学(10月4日)
箕輪町郷土博物館の見学(10月4日)/水源の森林と、山麓の集落の暮らしや 農地とのつながりを「水」を通して解説。
箕輪町郷土博物館の見学(10月4日)/水源の森林と、山麓の集落の暮らしや 農地とのつながりを「水」を通して解説。

1.演習名
 「農林フィールド基礎実習」

2.実習目的
 農林業や緑地管理とかかわる植生や植物についての基礎的素養と、調査・
 観察するための着眼点および方法を習得する。植物以外の野生生物や地
 形、河川などについても基礎的な知見を身につける。これにより、自然環
 境を多角的な視野でとらえる素養や、今後の各種フィールドでの活動に必
 要とされる地図読み能力と安全確保の意識も身につける。

3.実施日
 令和2年10月3日・4日、10日・11日 4日間(土・日×2回)

4.実施場所
 ①10月3日、10月10・11日
  農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
  構内ステーション、手良沢山ステーション、西駒ステーション各演習林
 ②10月4日
  箕輪ダム、東山山麓、箕輪町郷土博物館(上伊那郡箕輪町)

5.担当教員・講師
 教員3名(荒瀬輝夫准教授、岡野哲郎教授、内川義行助教)
 ティーチング・アシスタント2名(信州大学農学部4年生・女子)

6.参加人数 全3名
 山形大学:2名(農学部食料生命環境学科、3年生男子)
 筑波大学:1名(生命環境学群生物資源学類、2年生男子)

7.実習開催の経緯
 令和2年度、新型コロナウイルス感染拡大による影響で、信州大学の学内
 でも学生向けの授業が大きな制約を受けた。具体的には、5月中までは休
 校(学生の入構禁止)となり、6月以降にようやく、感染予防対策を徹底
 するという厳しい条件付きで(直近2週間の移動制限、体調の確認、検温
 と消毒の徹底、授業中のマスク着用とソーシャルディスタンスの確保な
 ど)、一部の授業(そのほとんどは野外での実習演習)について対面での
 開講が認められた。その後、後期授業では、教室の定員を半分以下に制限
 する形で、講義科目についても対面授業が認められるようになった。

 一方、学外の学生を対象とした授業に関しては、受講者の長距離移動(感
 染拡大の都市部を経由する可能性大)や共同生活(大人数での宿泊)によ
 りリスクが高まるため、公開森林実習のほとんど(「山岳環境保全学演
 習」「自然の成り立ちと山の生業演習」など)がかなり早い段階で中止決
 定となった。

 唯一、本実習(農林フィールド基礎実習)は、10月開催であること、単位
 互換協定を結んでいる長野県内のコンソーシアム大学の学生(日帰り可
 能)を想定していたため、開講2週間前に開講するか否かを判断するとい
 うことで広報・募集を実施した。結果として、受講希望者3名とも県外の
 大学の学生(やや想定外の事態)となった。長野県および信州大学全学の
 方針、さらに受講者の移動の経由地になると思われる首都圏の感染状況を
 注視しつつ、予定どおり開講すべきかどうか、附属施設係・学務係の事務
 方とも確認・協議した。その結果、

 ①全国的に感染拡大状況が底打ちの小康状態になりつつあり、政府として
  越県移動を10月以降に推奨する経済政策を決定し、それに対し長野県や
  信州大学で人の移動制限をかける動きがない
 ②感染予防対策をとりながらの授業運営を、担当教員が前期授業で経験済
  み
 ③少人数で目が行き届く(車での移動も定員の半数に収まる)
 ④宿泊を伴う共同生活がない(演習林学生宿舎を使用せず、宿泊を受講者
  が各自手配)
 ⑤TA学生をのぞき、不特定多数の本学学生との接触がない(休日開催で講義室も使わない)
 ⑥「受講案内」に、感染状況や災害により、実習の日程が変更もしくは途中で打ち切りになる可能性がある旨を明記
 ⑦同じく「受講案内」に、実習の場所・内容を変更する場合の代替スケジュールについて明記、周到に準備も行う

 などを鑑みると、感染リスクは充分低く抑えられると判断された。そのため、開催2週間前の9月18日時点で、予定どお
 り開講すること(ただし上記⑥のとおり、開講直前や実習中でも臨機応変に中止や打ち切りを行う前提で)を決定した。

8.実習スケジュール
(1)当初のスケジュール(受講希望者向け「受講案内」、9月18日版)スケジュール_1003.jpgスケジュール_1004.jpgスケジュール_1010.jpgスケジュール_1011.jpg

(2)実習中のスケジュール変更
 実習内容の変更点は以下のとおりである。
 ・1日目(実習①を実習⑦まで深めて実施)
  当初、信州の樹木の分類・観察までの初歩的内容に留める予定であったが、受講者全員が森林科学系の学生であり樹
  木の分類について一定の素養を有していたため、植物群落としてより広い視点でとらえる「植生図の作成」(実習
  ⑦)まで先取りして実施した。
 ・3日目、4日目(実施日を入れ替え、実習⑦の場所と内容を変更)
  3日目が雨天となり、山岳域の西駒演習林での実施を見合わせ、天候回復を待つため4日目に順延した。そのため3日
  目には、午前中に実習⑥(11時ごろまで降雨が続いたため、野鳥の見分け方、生態、調査法について屋内で講義)
  を行った。午後にはほぼ雨は上がったが、実習⑦は1日目にすでに実施していたことと、降雨後が林道の排水設備の
  観察のまたとない好機であるとの判断から、車で手良沢山演習林に移動し、悪天候時の代替内容の1つであった「林
  道・獣害の観察」を実施した。

 変更して実際に実施したスケジュールは、以下の通りである。

 (変更部分のみ抜粋)変更_1003.jpg変更_1010.jpg変更_1011.jpg

写真6_林道の巡検(手良沢山演習林)1010.jpg林道の巡検(手良沢山演習林)
横断溝(排水施設)や獣害の観察
(10月10日)
写真7_資源植物の観察(西駒)1011.jpg資源植物の観察(西駒演習林)
アケビの果実を観察している場面
(10月11日)
写真8_地図読み演習1011.jpg地図読み演習(西駒演習林)
桂小場試験地の上部の湧水地まで
(10月11日)
写真9_閉講式1011.jpg閉講式
講義棟・事務棟の玄関前にて
(10月11日)

9.成果と今後の課題・展望
(1)実習の成果
 実習の課題レポートは、以下のように課した。
 ・1日目 実習①:当日実習中に作成したものを提出
 ・2日目 実習②③:宿題レポートを課し、次週(3日目)に持参・提出
 ・3日目 実習⑥:当日実習中に作成したものを提出/実習⑦:現地での資料の解説と巡検・観察のみ(体験重視)
 ・4日目 実習④:現地での資料の解説と巡検・観察のみ(体験重視)/実習⑤:地図に書き込んでもらったものを現
  地で確認・評価
  (3名とも体力的に余裕があり、演習林の山奥まで行きたいという希望が強かったため、目的地を若干遠くに変更し、
  安全な林道や登山道ぞいに、通常装備で行ける場所まで往復した)

 実習への取り組み、課題レポートとも、いずれも充分な水準に達しており、最終的な成績評価は合格(秀)と判断され
 た。

 実習を通して受講者に疲れや戸惑いなどの様子は見受けられず、最後まで熱心に聴講・実習に取り組んでいた。感染予
 防対策を怠って注意するような場面もなく、実習予定時間の短縮や休憩時間の延長などの措置も講じずに済んだ。これ
 には、受講学生の前向きな性格と関心の深さと、アシスタントの本学学生(農学部4年生)のサポートの寄与も大きい。

(2)実習アンケート
 受講者によると、所属大学における授業開講はかなり制限されており、前期から夏季休暇中の学内のフィールド実習
 演習もなかったとのことで、受講前の段階で本実習への期待が非常に高かった。アンケート記述内容からも、とくに、
 実際に演習林フィールドで活動した内容の満足度が高かったことが伺え、期待通りの興味関心をわき起こす教育効果が
 あったものと推察される。

 アンケート調査の回収率は100%であるが回答者3名のみのため、あまり詳細な分析は行えないものの、以下のような
 ことが読み取れた。

【実習内容の満足度】
 「楽しさ」と「有益さ」の回答の内訳は全く同一となっており、「楽しさ」では「大変満足」~「満足」、「有益さ」
 では「大変有益」~「まあまあ」という回答(いずれも上位2段階までの評価)がほとんどであったであった。とくに、
 実習①(森林と樹木の見方~植生図作成)、実習④(資源植物の観察)、実習⑤(地図読み演習)、実習⑥(鳥類調査)
 では全員が「大変満足」「大変有益」であり、演習林フィールドの自然を充分に体験できる内容がやはり好印象であった
 といえる。

 雨天時の代替内容であった実習⑦(林道と獣害の観察)では、楽しさ:「満足」、有益さ:「まあまあ」という回答が
 各1名あり、雨後で足元が良くなかったため行動範囲が限られたことが影響した可能性がある。また、実習②③(森林
 と農地のつながり)では、楽しさ・有益さでそれぞれ「普通」という回答が1名あり、自由記述内容から、所属大学の
 講義で類似の内容を学んだ経験があり、あまり真新しさがないという印象を与えたかもしれないことが理由として推測
 された。

【参加後に興味関心が増大した事】
 「ない」という回答者はおらず、「ある」と回答した項目は「動物・植物」(3名全員)、「農林業」「河川・水路」、
 「自然環境」、「その他(農村の文化)」(各1名ずつ)であった。

 とりわけ「動物・植物」について全員の興味関心を喚起できたことは狙い通りであったが、それ以外の項目が多岐にわ
 たっていたことは、同じ実習を通じて受講者がそれぞれの感度で様々なことに目を向けるきっかけになったことを示唆
 しており、担当者として喜ばしい結果と考えられた。

 (自由記載内容)
  ・資源植物を学習してみたい。山に入ったときの視野が広がると思う。野鳥も同様。
  ・最も身近な野生動物、鳥類についてもっと知識をつけたいと思った。また、農村に根ざす問題は複雑で深刻なため、
   自分でも考えてみようと思った。
  ・今学んでいること(生物資源・森林)の他に、基盤となるダムなどの整備や、資源の価値を高めるための工夫(経
   済)、人々の営みや歴史など様々なことを学ぶ必要があると感じた。また身近な植物について、その形態や生態、
   人間との関わりや利用について、人に伝えられるようになりたい。

【人的交流】
 山形大学学生2名(3年生)に対して筑波大学学生1名(2年生)という構成だったため、当初、この3名がうまく打ち解
 けて実習に取り組めるかどうか懸念された。しかし、初日の集合時点で、教員側から促すまでもなく自然に自己紹介が
 始まって盛り上がっており、連絡先の交換もしていて、全くの杞憂であった。

 アンケートの回答にはとくに記載はなかったものの、受講者間や、受講者と授業担当者との今後の交流も期待できると
 思われる。

【要望・改善すべき点】
 実習中の申し出や、アンケートへの記述はとくになかった。感染予防対策をとりながら実習を行うという、平時より不
 自由な状況であったものの、実習中に問題や不満・不快なことはなかったようであった。

 (自由記載内容)
  ・先生はとても話しやすく、知識も豊富でとてもよかったです。機会があれば沢登りなどご一緒して山について教え
   ていただきたいです。
  ・非常に興味をもって楽しく学べました。ありがとうございました。植物標本の製作や農地の見学などもやってみた
   いです。

(3)次年度に向けての課題・展望
 ①受講者誘致
  今年度は開講2年目で、1年目の成果や課題を踏まえ、実習の広報と受講者誘致を展開するところであったものの、
  新型コロナウイルス感染拡大により、身動きの取れない期間が長く続いた。全国的にも、演習林共同利用拠点の実習
  が軒並み中止になる中、開講は信州大学(本実習)と鹿児島大学(3月開講予定)の2校に限られていた。このような
  状況下で、3名の受講学生があったことは非常に貴重であり、受講者から好評を得たことは、今後に活かせるものと期
  待される。

  ただし、本実習はもともと県内の私立大学等をターゲットに想定しており(受講しやすいよう土日開講=日帰り可能
  としている)、県内大学からの受講申込みが昨年度に続いて0であったことは課題として残る結果となった。実習メ
  ニューとしては、森林調査、動植物調査、農林業に関することを軸として、今年度実施した内容以外にも幾つかのメ
  ニューを提示することが可能である。次年度以降、相手方のニーズの把握と広報活動に力を入れて、本実習の周知と
  受講者誘致を図ることが肝要である。

 ②実習内容、授業運営
  実習の実施方法としては、悪天候時の代替内容を予め告知・準備していたことで、雨天時の対応を非常に円滑に行うこ
  とができた。次年度以降も、様々な状況を想定して、実習の品揃えを充実させることを継続したい。

  今後、受講者が増加することを見据えて、ティーチング・アシスタント学生の事前教育などの方法も検討課題になる
  と思われる。というのも、受講者が多くなると誘導や指示の徹底、安全対策などの必要性が増すからである。また今
  年度、実習中の記録写真について、事前にどのような場面を撮影すべきかアシスタント学生に詳しく指導していな
  かったため、残念ながら大半の写真が使用に耐えないものとなってしまったことも大きな反省点である。

 ③施設・生活面
  今年度は演習林の学生宿舎などのインフラを使用していないが、次年度、感染予防対策を取りながらの利用になるこ
  とも充分予想される。AFC演習林の教職員・事務で連携のもと、一年間外部利用のなかった宿舎インフラの事前確認の
  実施と、休日の緊急時の連絡体制の確認をしっかり行うことが必要である。

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