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2019年度「農林フィールド基礎実習」を実施しました

お知らせ演習林系の実習

植生断面調査(10月5日):簡易レベル測量と立木調査
植生断面調査(10月5日):簡易レベル測量と立木調査
鳥類調査(10月6日):構内演習林の作業道にて
鳥類調査(10月6日):構内演習林の作業道にて
植生図の作成(10月6日):戸谷川の河畔林にて
植生図の作成(10月6日):戸谷川の河畔林にて

1.演習名
「農林フィールド基礎実習」

2.実習目的
林業や緑地管理とかかわる植生や植物についての基礎的素養と,調査・観察するための着眼点および方法を習得する。植物以外の野生生物や地形,河川などについても基礎的な知見を身につける。これにより,自然環境を多角的な視野でとらえる素養や,今後の各種フィールドでの活動に必要とされる地図読み能力と安全確保の意識も身につける。

2.実施日
当初の予定:令和元年10月5日・6日、12日・13日 4日間
(土・日×2回)
実際の実施日:令和元年10月5日・6日、26日(土) 3日間
(台風19号による長野県内の被害の影響と安全対策のため、後半の日程を延期・短縮)

3.実施場所
①10月5日・6日
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
構内ステーション,手良沢山ステーション(予定どおり)
②10月26日
千曲市姨捨・八幡(実施場所を箕輪町から変更)

4.担当教員・講師
教員2名(荒瀬輝夫准教授,内川義行助教)
ティーチングアシスタント2名(信州大学農学部3年生・女子)

5.参加人数
全1名
信州大学:工学部1名(建築学科2年生・女子)

6.実習スケジュール
(1)当初の計画
スケジュール_1日目.jpgスケジュール_2日目.jpgスケジュール_3日目.jpgスケジュール_4日目.jpg

(2)実習中のスケジュール変更
演習内容の変更点は以下のとおりである。

・3・4日目(演習⑤~⑧)
台風19号により,長野県内の公共交通機関(鉄道・高速バス)が寸断され,受講者(信州大学工学部:長野市)が農学部(伊那)に移動できなくなった。また,実習予定地の演習林でも倒木や林道通行止が発生した。まだ被災地の復旧が続いている時期であるという事への配慮・自粛と,実習を強行すると参加できても帰れなくなるといった二次被害が生じる危険があったため,しばらく延期して状況を見守った。しかし,あまり時期が遅くなるとフィールド実習が困難になるという事情も懸念された。

そこで,受講者と日程調整して,開催日を10月26日(1日のみ)とした。実習⑦・⑧(森林と農地のつながり1・2)を同じ趣旨で実施でき,受講者の在住地(長野市)からも近く往復の容易な場所ということで,千曲市姨捨(棚田)・八幡(ため池・水源林)に変更した。

なお,実習⑤(資源植物とは?)⑥(初歩 地図読み演習)については,実習⑦⑧の実施中に説明でき体験させることのできる内容のため,残念ながら単独テーマでの実習実施は割愛し,資料を渡して説明・実演するにとどめた。

実際の10月26日の内容は以下のとおりである。

スケジュール_変更3日目.jpg

写真4 姨捨棚田の巡検(10月26日).jpg  写真5 長楽寺にて(10月26日).jpg

(左)姨捨棚田の巡検(10月26日)
棚田の稲作,水利用,畦畔植生の概説
(右)長楽寺にて(10月26日)
姨捨棚田地区,芭蕉の句碑のある古刹

写真6 姨捨大池の巡検(10月26日).jpg

姨捨大池の巡検(10月26日)
棚田水源のため池と水源林の概説

7.成果と今後の課題・展望

(1)実習の成果
実習の課題レポートは,前半の①~④については各回の最後に時間をとって作成・提出してもらった。また,⑦,⑧については,後日,配布資料の復習とレポート提出を課した。いずれも充分な水準に達しており,最終的な成績評価は合格(秀)と判断された。

馴染みのない場所で,受講者(女子学生)1人だけではストレスを感じてしまうのではないかと当初懸念されたが,実習を通して疲れや戸惑いなどの様子は見受けられず,最後まで熱心に聴講・実習に取り組んでいて,演習予定時間の短縮や休憩時間を延長するといった措置を講じずに済んだ。これには,受講学生の前向きな性格と関心の深さ,アシスタントの農学部学生(受講者が女子であることを考慮して女子学生に依頼)のサポートの寄与が大きい。

実習アンケートを最終日に記入・提出してもらったものの,今年度は受講者1名のみなので集計する性質のものではない。アンケートおよび課題レポートから,受講者の主な感想・意見をまとめると以下のとおりである。

受講者によると,所属学科で古民家など建築物の調査のフィールドワーク演習はあるが,自然環境・農林業に関する内容はないとのことであった。記述内容からも,とくに樹木,野鳥,人と自然のかかわりなどの興味関心をわき起こす教育効果があったものと推察される。

<高評価だった点>

【演習の評価】
すべて「大変満足」~「満足」という回答であった。
(自由記載内容)
・フィールドワークメインの実習内容はとてもおもしろかったです(全体を通じて)
・木の見分け方について知ることができた。これを機に木の種類や性質を知りたいと思った(②)
・野鳥の鳴き声を聞く楽しさを感じた。町で歩いているときも意識が向くようになった(③)
・植生調査の概要を知ることができて,そういったデータの見方が変わった(④)
・人の営みが与える影響について,良し悪しにかかわらず,体感することができた。まちをとらえる視点として,農学的な視点も持てるようにしていきたいと感じた(⑦・⑧)
(実習⑤・⑥:短縮・概要版だったため回答・記述なし。)

【参加後に興味関心が増大した事】
「河川・水路」,「自然環境」,「動物・植物」について「ある」と回答。
(自由記載内容)
・総じて,普段体験することがなかった自然の見方を少し知ることができたと感じる。人工物に囲まれた生活の中では考えることができなかったことに気づく機会になり,今後の勉強や生活に新たな視点を持てた。

【人的交流】
(自由記載内容)
・受講者が一人だったこともあり,先生や学生さんとお話しする時間が多くて,とても楽しかったです。

<改善すべき点>

実習内容については,実習中の申し出やアンケートへの記述もとくになかった。
宿舎(手良沢山演習林学生宿舎)についても,受講学生は山奥の演習林内での生活を楽しんでいたようであった。ただし,宿舎のインフラについて,若干のトラブルがあった。

・ガスの元栓の位置が屋外にあって分かりにくかった。
・女子シャワー室が一箇所,漏水しているようであった。

ガスの元栓については,10月5日到着時はすでに薄暗かったため,受講生とスタッフで探し回って位置を確認した。
土日開講のため本部職員が不在で,連絡・確認が困難であるという問題点が判明した。シャワー室の漏水については,週明けすぐに担当事務に連絡して対応をお願いした。

(2)課題・展望
①受講者誘致
今年度,本実習の立ち上げ初年であまり学外に周知されていない状況で,1名のみとはいえ受講学生があったことは非常に貴重である。1名のみ対象の実習で試行錯誤の面もあったものの,自然環境や農林業にふだん触れていない農学部以外の学部学生にも一定の好評を得たことは,今後に活かせるものと期待される。

本実習は土日開講(宿泊も受け入れるが日帰り可能)なため,もともと県内の私立大学等をターゲットに想定している。実習メニューとしては,森林調査,動植物調査,農林業に関することに限らず,植物分類,食用・薬用資源植物,河川調査,ビオトープ管理・・・等々,他にも幾つかのメニューを提示することが可能である。次年度以降,広報活動に力を入れて,本実習の周知と受講者誘致を図ることが肝要である。

今年度は受講者1名のみのため,受講者どうしの人的交流は望めなかったものの,受講者とアシスタント学生との交流は評価された。今後,受講者が増加することを見据えて,資料準備・スタッフの事前教育などの方法もいずれ検討課題になると思われる。

②演習の方法
今回,台風の影響で後半の内容・スケジュールの変更を余儀なくされたものの,演習内容やその方法については,概ね高評価であったと考えられる。天候や不測の事態で,どうしても実習内容・スケジュールの変更はありえる。次年度以降,できるかぎり事前に,有事のときの代替内容などの情報を受講者に提示するよう心がけたい。

③施設・生活面
直接の支障は生じなかったが,土日で本部職員不在ということもあるので,宿舎インフラの事前確認の実施と,休日の緊急時の連絡体制の確認を行うべきであったと反省される。次年度以降,AFC演習林の教職員・事務(附属施設担当)でしっかりと対応したい。

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