平成30年度「木材工学演習」を実施しました
1.演習名
「木材工学演習」
2.実習目的
本実習の目的は,信州産の木材加工を通じて,木材加工技術を習得するこ
と,木材の性質を理解すること,さらには,林業の主要な生産物である木
材の利用意義を学ぶことである。本実習では,多様な木工機械を有する
AFC構内ステーション製材所において,演習林の間伐材を各種木工道具・
機械を用い加工し,一定の構造物(ベンチ)を作製する。
3.実施日程
平成30年9月4日(火)~9月7日(金) 3泊4日
4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
構内ステーション
5.担当教員
武田孝志教授,細尾佳宏准教授,小林 元准教授,白澤紘明助手,
徳本守彦名誉教授
6.参加人数
7名(信州大学工学部5名、総合理工学研究科2名)
7.スケジュール
8.概要
本実習は信大農学部生を対象にしていた実習を他大学の学生も参加できるように,一昨年度より公開森林実習としたも
のである。本実習の特徴として,受講者たちは一つのベンチを完成させる過程を通して,皮むきから製材,加工,組み
上げ,塗装までの一連の工程を体験し,木材加工技術を習得するとともに,木材や木工道具の特徴を実物に触れながら
理解を深める点にある。今回の実習では,台風の影響のため宿泊地が変更になるといった事態が発生したものの,実習
自体は予定していたプログラム内容を滞りなく実施することが出来た。
1日目は,本学総合実験実習棟木材加工室内教室にて,開講式・安全講習を行った後,座学にて木材の特性や樹種によ
る材質の違いについて学んだ。続いて,実演を交えながら木工機械の説明を受け,各種機械の使用方法,使用用途につ
いての理解を深めた。ベンチの作成は2班体制で行った。まず,ベンチの材料となるヒノキ材を選別した。このヒノキ
材は手良沢山ステーションの間伐材である。次に,帯鋸盤による製材作業を行い,製材歩留まりがどの程度であるかを
実感した。そして,皮むき作業を行い,最後に寸法を整えるための自動カンナ盤による切削作業を行った。夕食時には,
同時期に開催されていた「自然の成り立ちと山の生業演習」ならびに「長野大学演習」の参加学生と親睦を深めた。
2日目は,ノコギリやカンナといった木工手道具の説明をうけた後,木目の様子や節,木口面に発生した割れ,アテ材
などの欠点を観察し,その観察の結果をもとに木取り図を完成させた。ここでは,意匠を意識した合理的な木取り方法
を学んだ。そして,図に基づいて部材を切り出し,ノミを用いた接合部分の加工作業を行い,仮組作業を進めた。
3日目は,前日に引き続き作業を進め,仮組を完成させた。サンダーやドリルといった電動工具の説明をうけ,それら
を用いた微調節作業を行った後,ベンチを組み上げた。
4日目は,表面仕上げ,面取り,塗装といった最終的な仕上げ作業を行い,ベンチを完成させた。最後に閉講式を実施
し15時ごろ解散した。
9.感想および今後の展望と課題
アンケートからは,木材加工についての知識や技術を習得し満足したとの感想に加え,建築物の材料に対する興味が深
まったとの感想もあった。各工程で木工道具や木材の特性についての説明を適宜与えることで,実物に触れながらそれ
らへの理解が深まり,木材加工の面白さ・木のぬくもりをよく感じられたものと思う。また,建築に至るまでの,木を
切ってから製材品になるまでの過程を知ることができたとの感想もあり,木材加工を通して,木材の生産段階である林
業にも意識が及び,間伐材や森林資源を循環利用することの重要性にも若干ながら気づけたようである。
満足度の集計結果においても,概ね高評価を得ていた本実習は木材に普段触れる機会の少ない学生たちにとって貴重な
実習であり,木材を身近に感じ,木材を使用することの意義を考える良い契機となったようである。ただ,今回の実習
の宿泊施設は初日のみ演習林宿舎を予定通り使用したが,台風21号の影響により使用できず,ゆりの木資料館宿泊棟を
急遽使用することになった。さらに,例年,昼食と夕食は生協食堂で取っていたが,今年は改修工事のため利用できず,
昼食は生協売店などを利用し夕食は自炊した。これらの変更点に大きな問題もなく対応できたものの,宿泊施設の選定
や食事の用意等に課題が残った。来年度以降はあらゆる事態を想定し万全の態勢で臨みたい。