平成28年度「森林利用デザイン演習」を実施しました。
<演習名>
「森林利用デザイン演習」
<実習目的>
本実習の目的は、望ましい間伐方法や運材方法を検討・採用・実践する能力、すなわち、素材生産に関する将来まで見通した森林経営のデザイン能力を身につけることにある。実習は、林分状況を把握することからはじまり、実際に林業機械の操作を行いながら、一貫した収穫技術の流れ、諸機械の特徴および操作方法を学習する。
<実施日程>
平成28年8月29日(月)~9月1日(木) 3泊4日
<実施場所>
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)手良沢山ステーション
<担当教員>
植木達人教授、小林元准教授、齋藤仁志助教、白澤紘明助手
<参加人数>
5名(信州大学理学部1名、工学部1名、琉球大学農学部1名、公立鳥取環境大学環境学部1名、鳥取大学農学部1名)
<スケジュール>
初日は伊那キャンパスから手良沢山ステーションに移動後、実習のガイダンスと林分調査の説明を受けた。次に、実習地へ移動し林分調査を実施し、調査林分における間伐施業の必要性を確かめた。宿舎に戻ってからは、チェーンソー操作に不慣れな非森林系の学生を中心に、チェーンソーの練習を行った。
2日目と3日目午前は、「搬出作業実習」を行い、路網作設から運材までの素材生産の流れを体験した。
3日午後と4日目午前は「高性能機械実習」を行い、ハーベスタといった最新の林業機械に触れることでその利便性を体感した。さらに、薪とチップを生産し、いわゆる未利用木材の有効な利用方法を学んだ。
実習は5班に分かれて、ローテーションで行い、以下の工程の作業に取り組んだ。括弧内は使用した機械・道具である。
搬出作業実習:路網作設(バックホウ)、伐倒(チェーンソー)、集材(スイングヤーダ)、造材(チェーンソー)、運材(林内作業車)
高性能機械実習:伐倒・造材(ハーベスタ)、集材(油圧式集材機※見学のみ)、薪割り(ヨキ・薪割り機)、チッピング(チッパー)
2日目の午前中と4日目の午後は、搬出作業や実習で使用する機械・道具に関する講義を行った。4日目は閉講式を実施した後、伊那キャンパスに移動し解散した。
<成果と今後>
本実習は農学部内で実施している実習を信大農学部生以外も参加できるように、公開森林実習としたものであり、今回が初の試みであった。参加者たちは素材生産における一連の工程作業を連続的に体験することで、単に機械を操作するだけでなく、工程間の結びつきを実感し、路網と林業機械の組み合わせである生産システム全体をイメージすることができたものと思われる。アンケートには、講義で学んだことを現場で実践的に学習でき有意義であったとの感想が大半であった。また、現場で行われている作業を知る事ができたのは将来にとても役に立つとの感想もあり、満足度の高い実習であったことがうかがえる。
本実習は、非森林系の学生にとっては、まず接することのない林業機械や素材生産作業に触れる貴重な機会であった。一方、将来、林業職公務員やフォレスターなどとして地域林業の振興に従事することの多い森林系の学生にとっては、素材生産の現場で何が起こっているかを考え、現場に根差した発想を養う絶好の機会であったものと考えられる。
今回の実習は怪我や事故なく無事に終了することができた。今後も安全第一に努めながら、大学演習林で実際の素材生産を学ぶことができるという数少ない実習を継続していきたい。
なお、本実習の実施にあたり、前田製作所、日立建機日本、イワフジ工業の皆様には多大なるご協力をいただいた。ここに記して謝意を表する。