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お知らせ

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生物資源・環境科学課程 新井亮一助教ら 枯草菌の分裂を阻害するIseAタンパク質の構造解明

2012.12.25

 

~ユニークな“弓のこ型”構造を世界で初めて解明~

 

   国立大学法人信州大学(学長 山沢清人)は、細菌の細胞分離酵素を阻害するIseAタンパク質の新奇な“弓のこ型”構造を世界で初めて解明しました。これは、信州大学繊維学部(学部長 濱田州博)の新井亮一助教(応用生物科学系 生物資源・環境科学課程)、関口順一特任教授、大学院修士2年生(応用生物科学専攻 新井研究室)の福井貞晴、小林直也らによる研究の成果です。本成果は、米国生化学・分子生物学会の学術論文誌『The Journal of Biological Chemistry』の2012年12月28日号に掲載されます。

 

<本研究成果のポイント>

・枯草菌の細胞の分離等に関わる酵素を阻害するIseAタンパク質のユニークで新奇な“弓のこ型”立体構造を、核磁気共鳴(NMR)法により世界で初めて解明

・IseAと酵素との相互作用解析や阻害実験、立体構造に基づくコンピューターシミュレーションなどを組み合わせて、IseAの新たな酵素阻害メカニズムを提唱

・今後、病原菌の増殖に不可欠な酵素を阻害する改変IseAタンパク質を設計開発する研究を展開することにより、新たな抗菌薬の開発につながる応用が期待

 

 

<概要>

   これまでに、信州大学繊維学部 関口順一特任教授らを中心とする研究グループは、枯草菌の細胞壁を分解する酵素群が、細胞の分離や伸長などにおいて非常に重要な役割を果たしていることを世界に先駆けて明らかにしてきました。さらに、近年、枯草菌の細胞表層からIseAタンパク質を発見し、細胞壁を分解して細胞分離を行う酵素をIseA が特異的に阻害することを明らかにしました。しかしながら、IseA がどのようにして酵素の活性を阻害するのか詳しいメカニズムは全くわかっていませんでした。

   そこで、新井亮一助教と関口順一特任教授らを中心とする研究グループは、IseA の阻害メカニズムを解明することを目的として、理化学研究所NMR施設において、核磁気共鳴(NMR)法を用いて、IseA の立体構造解析を行いました。その結果、IseA の立体構造の決定に世界で初めて成功しました。

 

   IseA の立体構造は、これまでに全く報告例がない、非常にユニークで新奇な“弓のこ型”構造であることを解明しました(図1)。特に、弓のこの刃に対応する細いひも状のループ部分が非常に特徴的な構造であることを発見しました。また、IseA と酵素の相互作用解析や、IseA のループ部分の変異体を作製し、酵素活性の阻害を調べる実験を行ったところ、IseA のループ部分が酵素活性を阻害するために非常に重要であることが分かりました。さらに、IseA と酵素の表面形状や電荷分布などの特徴を詳細に考察して、コンピューターシミュレーションを行うことにより、IseA のループ部分が酵素の活性部位の谷間にはまり込み、広範囲に相互作用するタイプの新たな酵素阻害メカニズムモデルを提唱しました(図2)。

   今後、本研究成果をもとにして、病原菌の必須酵素を阻害する改変IseA タンパク質を設計開発する研究を展開することにより、新たな抗菌薬開発への応用が期待されます。

 

   本研究は、日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(A)(研究代表者 関口順一)等をはじめ、文部科学省 テニュアトラック普及・定着事業等の御支援も受けて行われました。また、NMR実験用サンプル調製、NMR測定及び解析等は、理化学研究所横浜研究所NMR施設において行われました。

   本研究成果は、米国生化学・分子生物学会の学術論文誌「The Journal of Biological Chemistry」の2012 年12 月28 日号に掲載されます(http://www.jbc.org/content/287/53/44736.abstract)。また、IseA タンパク質の立体構造座標データは、Protein Data Bank (http://www.rcsb.org/)において公開いたします(PDB ID: 2RSX)。

 

 

詳細は、PDFファイル「報道発表資料241225(IseA タンパク質の構造解明)」をご覧下さい。

報道発表資料241225(IseA タンパク質の構造解明).pdf

 

 

 

  • 図1
  • 図2