症例のご紹介(下肢班)

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股関節の症例

股関節周辺の疾患や外傷の診療を幅広く行っています。主な疾患として変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、人工股関節のゆるみ、臼蓋形成不全、大腿骨寛骨臼インピンジメント、骨盤骨折や脱臼等の外傷性疾患を治療しています。
外科治療としては人工股関節(再)置換術、寛骨臼回転骨切り術、股関節鏡などを患者さんの状態に応じて最適な術式を選択して行っております。昨年の股関節疾患に対する手術は105件でした。

人工股関節置換術93件、人工股関節再置換術5件、寛骨臼回転骨切術2件、股関節鏡3件

変形性股関節症の治療

変形性股関節症とは?

人工股関節置換術について

傷んだ骨盤と大腿骨にそれぞれ部品を埋め込み関節の機能を再建する方法です。当院では国内でも古くからこの方法を行っており長い方では30年以上経過している人もいます。人工股関節置換術の場合には、現在前方アプローチ・側方アプローチ・後方アプローチを患者さんの股関節の状態に応じて使い分け、術後により良い関節の動き(可動域)を得られるように工夫しています。傷口は患者さんの状態によっても変わりますが10~15cmの皮膚切開で手術が出来るようになっています。

手術に際して予想される出血に対しては、自分の血液を予め貯めておきそれを手術の際に使用します(自己血輸血)。術後翌日で車椅子によるトイレ移動を開始、術後2~3日で歩行訓練を開始、術後2~3週間には1本杖または松葉杖歩行で退院、というスケジュールで行っています。

使用する部品の種類はその患者さんの骨の質、形に合わせてもっとも適合性が良いものを選択します。また必要に応じて患者さんの自宅近くの関連病院とも連携をとり、スムーズな社会復帰が可能となるように心掛けています。退院後は定期的に外来への通院をしていただき、術後の経過を確認しています。

合併症

術後の合併症として細菌感染がありますがこれを予防するため清浄度の高い手術室(クリーンルーム)で特殊な手術着を着て行っています。この部屋は肝移植を行う部屋よりも高い清浄度を有しています。このためこの8年間で初回手術例では1例(0.25%)しか細菌感染が発生していません。

他の合併症として脱臼が挙げられます。これに関しては

  1. 患者さんの状況に合わせて手術計画を立てる事
  2. 適切な位置に部品を設置する事
  3. 危険性が高い方には危険肢位の指導

をしっかり行う等、予防に努めています。

過去7年間で初回手術例での脱臼は2関節(0.8%)で非常に少ない頻度を維持しています。また人工股関節は長く使っていると部品が弛んでくるため、この様な患者さんには再置換術を行っています。この様な場合骨が大きく破壊されている事が多く、院内の骨バンクで厳重に管理された同種骨を用います。この骨は他の方の手術で採取・保管されたもので、日本整形外科学会の同種組織保存管理マニュアルに基づいて処理しています。同種骨に加えて人工骨や補強金属を用い骨の土台を十分に再建する事によって良好な成績を得ることが出来ています。人工股関節置換術後のリハビリテーションでは、当科では患者さんの日常生活動作における支障の程度・家庭での生活状況さらには仕事の内容・就労状況などを考慮し、さまざまな治療方法に関して相談に応じています。どうぞ股関節の症状でお困りの方は、症状の程度にかかわらず、お気軽にご相談下さい。

人工股関節術前計画システム

当院では患者さんの骨の形に正確に設置するために人工関節の手術計画システムを他施設に先駆けて導入しています。これは撮影したCTのデータから股関節の各方向の断面や立体画像を作成し、その画像上で部品の設置位置を詳細に計画できるものです。従来は2方向から撮影されたX線フィルムを用いて計画を立てていましたが、不正確になることが多く、この方法を用いることでより正確な計画を立てることが可能になりました。また、人工股関節では術後の脱臼が合併症として起こりえます。このシステムではその患者さんに部品を入れた状態でどのような姿勢で脱臼が生じるかの術前シュミレーションが可能になります。この得られた情報をもとに部品の設置位置を微調整し術後の脱臼を減らすように工夫しております。当院で手術をする方には全例このシステムを用いて詳細な手術計画を作成しています。

膝関節の症例

膝関節に関しては変形性膝関節症などの加齢に伴う疾患やスポーツ外傷に伴う靱帯損傷、半月板損傷などの疾患を多岐にわたり治療しています。
変形性膝関節症に対する治療としては初期の方には関節鏡視下デブリードマンを、中期の方には膝関節周囲骨切り術(遠位大腿骨々切り術、高位脛骨々切り術)を、重度の方には人工膝関節置換術(全置換術・単顆置換術)を行っています。昨年の膝関節手術は184件でした。

人工膝関節置換術54件(全置換40件、単顆置換14件)、人工膝関節再置換術1件、膝周囲骨切り術29件(遠位大腿骨々切り術5件、高位脛骨々切り術24件)、前十字靱帯再建術54件(うち再再建2件)、内側膝蓋大腿靱帯再建3件、関節鏡視下半月板切除術6件、関節鏡視下半月板縫合術16件

変形性膝関節症の治療

変形性膝関節症とは?

仕事や運動、加齢などによって膝の軟骨がすり減って膝関節が変形し痛みが出現する状態です。痛み・可動域制限によって運動や様々な日常生活動作が障害され、ひどい場合には起立や歩行なども障害されてしまいます。病気の状態は人それぞれで、関節症の進行度、その人の職業・運動・生活様式に合わせた治療法の選択が必要になってきます。初期には患部の安静や減量、鎮痛剤投与、ヒアルロン酸注射を行い症状の改善を目指します。しかし、このような方法で改善しない場合には手術治療が必要となります。当科では以下の手術治療法を行っており、患者様の状況に合わせた方法を選択しご提案しています。(より高い運動機能を獲得するために、本来の膝関節機能をなるべく温存できるような術式をお勧めしています。)

変形性膝関節症に対する治療方法

鏡視デブリードマン(滑膜切除・半月板切除)

利点:手術としては小さい、短期の入院、リハビリが簡便
欠点:手術の適応が狭い、変形の強い人・軟骨損傷が強い人は効果がない

高位脛骨骨切り術(HTO)

利点:肉体労働やスポーツも可能(若い人向け)
欠点:リハビリにやや時間がかかる、多少の痛みは残る、軟骨は再生しない

人工関節単顆置換術(UKA)

利点:回復が早い、曲がりが悪くならない
欠点:寿命がやや短い、若い人・肥満や活動性の高い人には向いていない

人工膝関節全置換術(TKA)

利点:リハビリが簡単、変形がひどくてもできる
欠点:曲がりが悪くなる、仕事や運動はやりづらくなる

患者さんの年齢・関節症の重症度・活動性・希望を元にこの中から最適な手術方法をご提案いたします。

関節鏡視下デブリードマン(滑膜切除・半月板部分切除または縫合)

初期には軟骨はさほど傷んでおらず、加齢によって弱くなった半月板が切れたり擦り減ったりして骨の間に引っ掛かり、関節の痛みや可動域の制限を生じます。また、半月板の損傷や軟骨の摩耗によって関節内の滑膜という組織に炎症が生じ膝に水がたまるようになります。このため傷んだ半月板を部分的に切除したり、増殖した滑膜を切除して出来るだけ膝に水が貯まらないようにします。この手術は膝の軟骨の損傷があまり強くない初期の段階の方に行います。入院期間は3〜4日で、2〜3週間ほどで仕事に復帰する事が可能です。手術後には関節鏡の膝の内部の状態を患者様にも見ていただき、その後の膝の使い方について細かいアドバイスをさせていただきます。

高位脛骨々切り術

この方法はすねの骨の形を変えて膝の内側にかかる荷重を外側に逃がすことで痛みを軽減する手術方法です。膝の軟骨の損傷が中程度で変形の軽い方にはこの方法をお勧めします。また、運動や膝に負担のかかる仕事を継続したいという方にもお勧めです。この方法は古くから行われていた方法で膝関節の機能が温存され膝の曲がりが悪くならないという利点を有していましたが、リハビリや入院期間がかかるという欠点もありました。この問題を解決するために改良型の骨切り法が開発され、当院でも2008年よりこの新しい方法を導入し、以来多くの方に行っていますが、良好な成績を得ています。

術翌日に車椅子によるトイレ移動を開始、術後3~4日で機械を用いて可動域訓練を開始,術後7日で歩行訓練を開始、術後2~3週間には松葉杖歩行で退院、というスケジュールで行っています。退院後は定期的に外来への通院をしていただき、骨の付き具合を確認していきます。十分に骨がついて安定した状態になったところで金属を抜く手術を行います。(大体術後1〜2年で行うことが一般的です)

合併症

この方法では傷んだ軟骨が再生するわけではないので多少の痛みが残存する可能性があります。また、術中や術後に骨が折れたり、また骨のつきが悪かったりする事があり、この場合は予定よりもゆっくりとリハビリを進めてゆきます。また、何年か後にまた軟骨がすり減り変形を来し再手術が必要になる事もあります。この場合には後に述べる人工関節を行うことになります。

人工膝関節置換術

1)人工膝関節単顆置換術

膝関節の内側または外側の関節だけが痛んでいる方はこの方法をお勧めします。人工膝関節全置換術は膝の表面の骨や軟骨を全部削って置換してしまうため正常の関節部分も犠牲にしなければならないという欠点がありました。この単顆置換術では痛んだ関節面のみ部品で置換し、正常の関節面や全ての靭帯が温存されるため、より正常の膝関節機能を術後に得る事が可能です。また傷口が小さく(10cm前後)、膝に与えるダメージが少ないため回復が早いという利点があります。しかし、軟骨の損傷が片側の関節面に限られている事、靭帯機能が温存されている事、可動域が保たれている事、肥満が無い事等の手術を行う上でのいくつかの制限があり、どなたでもこの手術を受けられるわけではありません。また、若い方(60歳以下)や活動性が高い方もこの手術には適していません。

2)人工膝関節全置換術

これは病気が進んだ重度の変形性膝関節症の方に行う手術方法です。お互いの骨の表面を部品の形に合わせて薄く削り、そこに人工の部品をはめ込んで固定します。

人工膝関節置換術もおよそ13~15cmの皮膚切開で手術が出来るようになっています。手術中は駆血を行うためほとんど出血せず、自己血は使用しません。術翌日に車椅子によるトイレ移動を開始、術後3~4日で機械を用いて可動域訓練を開始、術後5日で歩行訓練を開始、術後2~3週間には松葉杖歩行で退院、というスケジュールで行っています。退院後は定期的に外来への通院をしていただき、術後の経過を確認しています。

合併症

術後の合併症として細菌感染がありますがこれを予防するため清浄度の高い手術室(クリーンルーム)で特殊な手術着を着て行っています。このためこの8年間で初回手術例では2例(0.5%)しか細菌感染は発生していません。また、長い間使っていると部品の一部がすり減って弛んできます。平均は15~20年位で、その場合は再置換術も当院で行っています。股関節同様専用の部品や同種骨を使用し良好な成績を得ております。

人工膝関節術前計画システム

当院では患者さんの骨の形に正確に設置するために人工膝関節の手術計画システムを他施設に先駆けて導入しています。これは撮影したCTのデータから各方向の断面や膝の立体画像を作成し、その画像上で部品の設置位置を計画できるものです。従来は2方向から撮影されたX線フィルムを用いて計画を行っていましたが、不正確になることが多く、この方法を用いることでより正確な計画を立てることが可能になりました。当院で手術をする方には全例このシステムを用いて詳細な手術計画を作成しています。また、当グループではこの手術前計画ソフトと手術中の機器を連携させてより正確に手術を行う支援システムを企業と共同で開発しております。

前十字靱帯損傷

前十字靱帯損傷とは?

前十字靱帯断裂は膝関節の中央にあって大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)を結ぶ強靭な靱帯です。脛骨が前方へずれたり、内側に捻じれたりする動きを制限しています。膝のスポーツ外傷で非常に頻度の多いけがです。

バスケ・スキー・サッカー・ラグビーなどの急激な方向転換を要する競技や予期せぬ外力が膝にかかる競技で損傷する頻度が多い事が知られています。この靱帯は非常に治癒力が弱く損傷されても自然に治癒する事はありません。靭帯を損傷した直後はかなり強い痛みと腫れがあります。数日で痛みと腫れは改善しますが、階段の降りる時や坂道で膝がぐらぐらした感じやずれたような感じが出現してきます。また、スポーツで方向転換をしたときに同様の症状が出現する事があります。ぐらぐらした感じ(不安定感)が続き、怪我をする前の状態でのスポーツを行う事が困難になります。また、膝崩れを何度も繰り返すことで半月板や軟骨が痛んできてしまいます。こういったことが繰り返される事により膝関節の変形が進行し、いわゆる変形性膝関節症の状態になってしまいます。

前十字靱帯再建術とは?

靱帯は自然治癒せず、また、手術で縫い合わせてもその機能は元に戻らない事が知られています。このため、損傷した靱帯の部位に自己組織を移植し再建する方法が一般的と言われています(靱帯再建術)。 大腿骨と脛骨に6~7mmほどの細いトンネル(骨孔)を作ります。作ったトンネルに採取した自己組織を通して骨の表面で固定します。 移植した組織は骨の中で時間とともにくっついてゆき安定した状態になっていきます。

最近は正常の前十字靱帯の機能を再現するため2本の組織で靱帯を再建する方法(解剖学的2重束再建術)を行っています。再建に使用する自己組織としては膝を曲げる筋肉(ハムストリング)の腱や膝を伸ばす筋肉の腱(膝蓋腱)を使用します。どちらの方法も利点と欠点があります。我々の施設では基本的にはハムストリングを使用して手術をしていますが患者さんのスポーツ内容や希望によっては膝蓋腱を用いて手術を行います。

ナビゲーション手術とは?

この手術では骨の正確な位置に骨トンネルを作成し、そこに再建靱帯を設置する事が重要です。通常使用する内視鏡だけでは前後の位置関係が分かりづらく、意図した位置からずれて骨トンネルが作成されてしまう事がありました。我々はこういった手術の問題点を解決し、成績を向上させるためコンピューターナビゲーションをH19年7月から前十字靱帯再建術に導入しています。これは車のナビゲーションと同じで、手術中に今どの位置・方向に骨トンネル作成しようとしているかを、3次元的に知ることが出来る方法です。

この方法はH21年11月先進医療に認定されました。国内で当方法が認定されているのは当院も入れて3施設のみです。

術後のリハビリ

術前や術後に膝関節周囲の筋力は低下します。十分な膝の安定性を得るため、また再度の受傷を予防するためには術後のきちんとしたリハビリが重要です。当院リハビリ室には、バイオデックス(筋力測定器)、自転車エルゴメーターなどがあり設備は充実しており、入院中も専任の理学療法士が指導します。当院では術後のリハビリ用パンフレット・DVDを作成し、手術を受けられる方に差し上げています。通院ができなくてもこのマニュアルやDVDを用いる事でスケジュールに沿って自主的にリハビリを進めることが可能です。もし、自主的なリハビリが不安な方は当院でのリハビリやご自宅近くの病院でリハビリができるようにいたします。退院後はバイオデックスで定期的に筋力測定を行い、手術後の筋力の回復状況をチェックします。

また当班ではスポーツ選手のリハビリに定評のある相澤病院スポーツ障害予防治療センターと提携しております。ご希望のある方はこちらでリハビリを行っていただくことも可能です。ご希望の方は担当医師にご相談ください。

半月板損傷

半月板損傷とは?

半月板は衝撃の吸収・関節の安定性・潤滑等の機能を持ち、膝関節にとって大変な重要な組織です。しかし、ゴムのように柔らかい組織であるため、運動などで強く膝をひねったり踏ん張ったときに、大きな負荷がかかると切れたり欠けたりしてしまいます。運動時の怪我によって生じ、この場合は若い人に多いのですが、加齢と共に強度が弱くなって(変性)断裂することもあり、この場合は中高年の方に発生することが特徴です。

残念ながら半月板は血流に乏しく治癒力に乏しい組織であり、自然に治癒することはありません。症状が軽くなった場合には様子を見ることもありますが、症状が続く場合には手術が必要です。手術は昔から損傷が生じた場合にはほとんどの患者さんに対して切除術が行われてきました。しかし、長期的には切除を行った後に軟骨の摩耗や関節の変形が進行する事が分かってきて、その機能の重要性が再認識されています。このため当科では積極的に半月板を温存し、断裂部の縫合を行っています。従来は縫合を行うのは全体の3割程度でしたが、手術手技の改良や最新の縫合器機を用いて現在は7割ほどの患者さんに対して縫合が行われるようになっています。また、半月板の劣化(変性)が著しく、状態が悪い場合には、患者さんの血液を20ccほど採取し、フィブリンクロットという血の塊を作成します。

このフィブリンクロットの内部には組織の修復を促す各種因子が含まれていると言われており、これを断裂部に挟み込んで縫合を行うことでより良好な半月板の治癒を目指しています。しかし、あまりにも半月板の状態が悪く縫合しても治癒が期待できない場合には切除を行います。この場合も症状の原因となっている部分だけを切除し、できるだけ多くの半月板を残すように心がけています。

足部・足関節の症例

足は歩行に際して地面に接し、その反力を体幹に伝えるという重要な働きをしています。したがって、足部・足関節の異常はただちに歩容に影響を及ぼし、日常生活も障害されます。明治の始めに西洋靴が導入されて以降、日本でも靴による足の障害が年々増加してきており、さらに近年スポーツ愛好者の増加からスポーツによる傷害も増加しています。足部・足関節の疾患に対して、装具による治療や手術治療を行っています。

靴の障害や外傷後に生じる後天的足部・足関節障害

外反母趾や扁平足(後脛骨筋腱機能不全症)、変形性足関節症、Morton病等があります。いずれも変形の程度や患者さんの希望に応じて、保存治療と手術治療を行います。保存治療では、足のアーチに合わせたインソールを作製します。またMorton病の場合は注射を行うことがあります。保存治療で難渋する場合や変形が強い場合は、手術治療を考慮します。外反母趾は、矯正骨切り術を行います。扁平足は、踵骨の骨切り術や変性した腱の補強手術を行います。変形性足関節症に対しては、低位脛骨骨切り術や関節鏡視下固定術等を行います。Morton病は注射で改善しない場合、神経切除術を行うことがあります。

スポーツにともなう足部・足関節傷害

1回の負荷による外傷と、繰り返される負荷による傷害があります。足関節靱帯損傷、足関節骨折、アキレス腱断裂、腓骨筋腱脱臼、足関節骨軟骨損傷、骨棘障害、過剰骨障害(有痛性三角骨、外脛骨)、種子骨障害、疲労骨折等があげられます。これらの疾患のなかには、下に記載する足関節鏡を用いて、診断・治療を効果的に行うことができるものがあります。頻度の多い足関節外側靱帯損傷は、解剖学的な再建術を行い、早期スポーツ復帰を目指しています。

足関節鏡

近年足の外科領域でひろまっている手術方法です。
従来、関節内を観察するには、大きな皮膚切開が必要でしたが、関節鏡を用いると1cm弱の小さな創2つで、足関節内部を広く観察することができます。特に軟骨損傷、外側靱帯損傷の診断にとても有用です。また骨棘障害は、関節鏡で観察しながら、骨棘を切除する治療を行うことができます。

足関節の後方に痛みがあり、足首を伸ばしにくくなる三角骨障害に対しても、内視鏡を用いた方法で、治療を行うことができます。従来は大きな皮膚切開が必要で、創の痛みが長引くため、スポーツ復帰に時間がかかりましたが、内視鏡では小さい創で手術を行うことができ、スポーツ復帰が早くなりました。

関節リウマチによる足部・足関節の障害

リウマチ性足関節症に対しては、変形の程度に応じて、鏡視下または開放関節固定術を行っています。また、リウマチ性前足部変形(外反母趾、第2-5趾の変形)に対しては、変形の程度に応じて、矯正骨切り術や、人工関節置換術(母趾)、切除関節形成術等を組み合わせて行っています。

先天性足部・足関節の障害、麻痺性足部変形

先天性内反足、小児扁平足、Freiberg病、足根骨癒合症や、片麻痺、外傷後等の変形に対して治療を行っています。

関節軟骨修復手術(自家培養軟骨細胞移植術)

関節軟骨は関節面において骨の表面を被い、骨にかかるストレスを分散・吸収するショックアブソーバーの働きや関節表面の摩擦を低下させ滑動性を良くする役割を持っています。外力に弱いため、外傷などで大きな衝撃が加わったり、スポーツで繰り返しのストレスがかかると骨軟骨骨折・離断性骨軟骨炎等の軟骨損傷が生じます。体の中の多くの組織や臓器は傷害された時に、残存する細胞の増殖によって傷害された部分を修復し、元の状態へと復元する再生能力を有していますが、関節軟骨の再生能力は非常に弱く、損傷されると、本来の組織で修復されることはありません。

現在、障害された臓器を各種の細胞を用いて再現させることにより、組織や臓器の再生を目指す「再生医療」が注目されています。その先駆けとして関節軟骨では1994年にBrittbergらが自家培養軟骨細胞移植法を発表しました。これは膝関節の正常軟骨組織を一部採取して、体外で培養し軟骨細胞を増殖させて軟骨損傷部に移植する方法です。これを本邦の越智がコラーゲンのゲル内に細胞を含ませて移植する方法を開発しより成績が改善しました。平成24年7月にこの方法が日本で初めて承認され、平成25年4月より膝関節の軟骨損傷に対して保険適用になりました。この自家培養軟骨による治療は施設基準があり、導入している施設は全国でも数十箇所と限られておりますが、当信州大学下肢関節グループで当方法を行う認定施設としてH25年12月に承認されました(詳細はこちら。http://www.jpte.co.jp/business/regenerative/cultured_cartilage.html)。

これにより、膝関節の広範囲な軟骨損傷の患者さんに対して、この方法を用いて治療を開始する予定です。もし、膝の軟骨の障害でお困りの方がいらっしゃいましたら当グループ外来に受診、ご相談ください。(残念ながら加齢や使いすぎによる軟骨障害(変形性膝関節症)の方は当治療法の対象になっておりません。)

スタッフ紹介

天正 恵治

【役職】

附属病院整形外科 講師

【卒業年度】

1997年 信州大学

【所属学会】

日本整形外科学会、日本リウマチ学会、日本足の外科学会、日本人工関節学会、日本関節鏡/膝/スポーツ整形外科学会(JOSKAS)、 中部日本整形災害外科学会

【専門医・認定医】

医学博士、日本整形外科学会認定専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定、リウマチ医、日本リウマチ学会認定専門医、JOSKAS関節鏡技術認定医(第2回)、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)評議員、中部日本整形災害外科学会 評議員、信州関節外科フォーラム 代表世話人、甲信足の外科フォーラム 世話人

下平 浩揮

【役職】

運動機能学教室 助教

【卒業年度】

2004年 弘前大学

【所属学会】

日本整形外科学会、日本人工関節学会、日本股関節学会、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)、中部整形外科災害外科学会

【専門医・認定医】

医学博士、日本整形外科学会認定専門医

小山 傑

【役職】

医員(大学院生)

【卒業年度】

2007年 信州大学

【所属学会】

日本整形外科学会、日本人工関節学会、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)、中部整形外科災害外科学会、日本股関節学会

【専門医・認定医】

日本整形外科学会認定専門医

岩浅 智哉

【役職】

医員(大学院生)

【卒業年度】

2012年 信州大学

【所属学会】

日本整形外科学会、日本人工関節学会、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)、中部整形外科災害外科学会

【専門医・認定医】

日本整形外科学会認定専門医

研究テーマ

大学病院の特徴を生かして様々な臨床研究に取り組んでいます。以下は現在行っている研究テーマです。

  • 骨髄間葉系細胞移植による軟骨再生
  • ナビゲーションシステムを用いたACL再建
  • ナビゲーションシステムを用いたTHA再置換時のセメント除去法の確立
  • DEXAを用いたセメント人工股関節術後ストレスシールディングの検討
  • 術後創縫合方法の違いが創治癒に与える影響の検討
  • 人工関節術後DVT予防薬剤の有効性・副作用に関する研究
  • β-TCPの生体内でのリモデリングに関する研究
  • ウサギを用いたステロイド性大腿骨頭壊死症の病態解明

学術活動

信州大学整形外科下肢関節グループでは診療の他に研究の分野でも力を入れています。
多数の国内・海外学会で発表を行っている他、ここ数年整形外科領域の一流雑誌に多数の論文を発表しています。