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精密デバイス設計研究室
精密デバイス設計研究室

精密デバイス設計研究室

研究室概要

 辺見研究室では,実験と数値解析の両面から研究活動を行っています.センサやアクチュエータの開発と応用,精密機構の設計,運動や振動の制御,触感インターフェースの開発,筋電位情報の設計評価への応用など,メカトロニクスシステムに関するあらゆる研究にチャレンジしています。

 また,センサの開発などすぐに実用に結びつくことを目指した研究と並行して,圧電素子の材料としての基本的な特性を詳細に調査したり,新しい機能的特性を検討するなど将来の応用に結びつく学術的に興味深い現象等を解明するための基礎研究も実施しています。

  • 圧電式ジャークセンサの開発

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     加速度の時間微分値をジャーク(加加速度)と言います.ジャークは物体の動きの急峻さを表す物理量です.従来から様々な研究者がジャークを計測するセンサを研究していましたが,いまだに市販されているジャークセンサはありません.本研究室では圧電素子を使ってジャークを測定するための簡便な新しい方法を独自に考案し,その有効性を実証しました.右図のような独自のセンサも開発しましたが,この測定法の特徴の一つには,世間一般に広く活用されている加速度センサのセンサ素子をそのままジャークセンサの素子として転用することができるという利点があり,広く普及される可能性を有します.このジャークセンサの開発により,これまでできなかったような様々な新しいことができるようになると考えています.

  • ジャークセンサの優位性と新しいアルゴリズムによる軸受診断システムの開発

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     回転機械には軸受が使われていますが,軸受は使っているうちに摩耗や疲労剥離したり,過負荷がかかって破損することがあります.軸受が損傷を自動診断するために,通常の場合は加速度センサで軸受近傍の振動を計測し,信号を様々なアルゴリズムによる計算手法によって解析して異常な振動が発生しているのかどうかを診断します.回転機械の中でも低速回転軸受の異常信号の検出と診断は非常に難しく,信頼性の高い高精度な診断法の実現が強く求められています.本研究室では,開発したジャークセンサを用いて,異常振動の検出が加速度センサよりも高感度かつ高S/N比(ノイズに対する信号の比率)で可能であることを検証しただけでなく,従来にはない新しいアルゴリズムによる診断法を考案し,1分間に数回転という非常に低速で回転する軸受にも適用可能な,軸受診断システムを開発しています.

  • 新しい材料物性の調査研究(圧電セラミクスのフレクソエレクトリック効果)

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     圧電材料は外力を加えてひずませると,ひずみ量に比例して電気分極し,電界を発生するという性質(圧電効果)を持っており,この性質を利用してセンサや発電素子として利用されてます.この圧電効果はひずみ量に比例して電気分極が発生する現象ですが,近年になって,ひずみの空間的な変化の割合(ひずみ勾配)に対して電気分極を生じるフレクソエレクトリック効果という新しい現象が圧電材料にも存在することがわかってきました.本研究室では,圧電効果とフレクソエレクトリック効果の両方を活用してより効果的に電気分極を発生させ,高効率で多機能なセンサ素子あるいは発電素子の開発を目指して,PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)という圧電セラミック材料のフレクソエレクトリック効果について詳細に調査しています.

  • 圧電素子の基礎的特性の調査(荷重下の特性)

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     圧電材料はひずませると電気分極するが,逆に外部から電界をかけるとひずむという性質(逆圧電効果)を持っています.そのためその性質を利用してアクチュエータとして機能させることができます.アクチュエータとして利用する場合に,素子に圧縮荷重をかけた状態で使用すると,荷重の大きさによっては電界をかけたときの発生変位量が増大するという,不思議な現象がありますが,その詳細については不明な点が多く,理由も明らかにはされていません.本研究室では圧電アクチュエータに静荷重を加えながら駆動するときの変位や誘電率などの特性を詳細に調査し,その現象を明らかにしようとしています.アクチュエータの予圧設定の最適条件の一般化や,将来的な材料開発に資する知見を得ることを目指しています.

  • インパクトダンパーを用いた精密弾性案内機構の制振に関する研究

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     ダンパーとは振動を低減するための装置のことです.その中でもインパクトダンパーは摩擦を使わずに衝突のエネルギーを使って振動を抑制するユニークなダンパーです.一方,超精密な位置決めステージでは,ステージを移動させるとき,ガイドレールなどの案内とステージの間の摩擦が位置決め精度と制御性能を悪化させるため,摩擦のない案内機構として弾性案内が多用されます.弾性案内とは板ばねなどの弾性変形を利用して直線運動や回転運動の案内をとするものです.弾性案内機構は滑らかな運動実現できる反面,弾性要素で構成されているので,急峻な動作をさせると残留振動が長時間継続するという欠点があります.本研究室では,弾性案内を用いた微動機構をインパクトダンパーで制振し,摩擦がないという弾性案内の利点を損なわずに残留振動を低減するということに挑戦し,従来にはあまり考えらなかった,インパクトダンパーと弾性案内機構の組み合わせの有効性を示しました.

  • 表面筋電位の工学設計評価への応用に関する研究

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     筋肉を動かすとき筋肉内部だけでなく皮膚表面の電位も変化します.その発生電位のことを表面筋電位と言います.本研究室ではその表面筋電位を使って工業製品や製品の設置状態などの評価に利用できないかを研究しています.一般に筋肉が疲労すると筋電位信号の周波数スペクトルの大きさの分布は,負荷の大きさがある程度大きいと低周波数側に,小さいと高周波数側に変化します.また,負荷の大きさに応じて周波数スペクトルの大きさも変化します.本研究では,まず手すりの設置状態の評価にそれら周波数スペクトルの変化を用いることを調査しました.どの設置状態がよりよいかと感じるのは人によって様々であり,筋電位信号の変化の傾向もまた様々ですが,複数の設置状態を複数の被験者に比較してもらうと,各人が感じる使いやすさの順位と筋電位信号の周波数スペクトルの変化の傾向が一致することを見出し,工業製品の評価に筋電位が利用できることの可能性を示しました.