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ニワトリの筋形成に重要な役割を担う遺伝子群を同定

研究

図:卵用鶏と肉用鶏の筋芽細胞における遺伝子発現パターン。筋芽細胞の分化に伴って発現が特徴的に変化する4つの遺伝子群(WD, UD, UG, WG)を同定し、詳細な解析を行った。
図:卵用鶏と肉用鶏の筋芽細胞における遺伝子発現パターン。筋芽細胞の分化に伴って発現が特徴的に変化する4つの遺伝子群(WD, UD, UG, WG)を同定し、詳細な解析を行った。

信州大学学術研究院(農学系)高谷智英助教らと東京農業大学生物資源ゲノム解析センターとの共同研究グループは、ニワトリの筋肉の形成に重要な役割を果たす遺伝子群を同定しました。

ニワトリの筋肉は、鶏肉として身近な食材です。世界的な人口の増加に伴い、鶏肉の消費量は増加し続けており、さらなる生産効率の改善が求められています。鶏肉の生産には、短期間で筋肉が発達する肉用鶏が用いられます。筋肉は、筋芽細胞と呼ばれる筋前駆細胞の増殖と分化によって形成されます。したがって、筋芽細胞の性質を理解することは、肉用鶏の育種や飼養に重要な知見をもたらすと考えられます。

研究グループは、肉用鶏と卵用鶏の筋芽細胞で発現する全ての遺伝子を解析し、ニワトリ筋芽細胞の増殖・分化の過程で特徴的に発現する複数の遺伝子を同定しました(図)。

この遺伝子群には、オピオイドペプチド(注)であるエンケファリンが含まれており、実際に、エンケファリンには筋芽細胞の増殖を抑制する作用があることを確認しました。オピオイドペプチドは様々な食品素材にも存在することから、飼料に含まれるオピオイドペプチドが家畜の筋形成に影響を及ぼしている可能性が考えられます。このように、本研究で同定された遺伝子群を今後さらに解析することで、肉用鶏の品種改良に有用な遺伝マーカーの開発や、飼料の機能性を高める分子の同定につながることが期待されます。

(注)オピオイドペプチド:元々は、脳に作用して情動や痛覚を制御するペプチド(短いアミノ酸配列)として発見された。エンケファリンの他に、脳内麻薬として知られるエンドルフィンなどが知られている。

本研究成果は、2019年11月11日に学術誌Scientific Reportsに掲載されました。

詳しい研究内容については以下をご覧ください。

URL:https://www.nature.com/articles/s41598-019-52946-4

論文タイトル:Distinct cell proliferation, myogenic differentiation, and gene expression in skeletal muscle myoblasts of layer and broiler chickens

著者:Yuma Nihashi1, Koji Umezawa2,3, Sayaka Shinji1, Yu Hamaguchi4, Hisato Kobayashi4,6, Tomohiro Kono5, Tamao Ono1,2, Hiroshi Kagami2, Tomohide Takaya1,2,3*(*責任著者)

著者所属:1Department of Agriculture, Graduate School of Science and Technology, Shinshu University, 8304 Minami-minowa, Kami-ina, Nagano, 399-4598, Japan, 2Department of Agricultural and Life Science, Faculty of Agriculture, Shinshu University, 8304 Minami-minowa, Kami-ina, Nagano, 399-4598, Japan, 3Department of Interdisciplinary Genome Sciences and Cell Metabolism, Institute for Biomedical Sciences, Shinshu University, 8304 Minami-minowa, Kami-ina, Nagano, 399-4598, Japan, 4NODAI Genome Research Center, Tokyo University of Agriculture, 1-1-1 Sakuragaoka, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8502, Japan, 5Department of Bioscience, Tokyo University of Agriculture, 1-1-1 Sakuragaoka, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8502, Japan, 6Department of Embryology, Nara Medical University, 840 Shijo-cho, Kashihara, Nara, 634-8521, Japan

DOI:10.1038/s41598-019-52946-4

【本件に関する問い合わせ先】

信州大学農学部広報委員会

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