航空機システム部門の概要

航空機産業は、自動車産業分野などと比べると現時点での市場規模は大きくはありませんが、高い成長性と安定した受注が見込まれる分野です。航空機分野において求められる高度な品質基準をクリアできる商品を市場に送り出すことができる企業は、技術力・品質保証の面においてアピールでき、外部からの評価の向上・新たな受注へとつながることが期待されていますが、その産業基盤はまだ十分整備されているとはいえない状況にあります。このような状況から国(関係7省庁をはじめとする関係機関)は、「基幹産業化に向けた航空ビジネス戦略に関する関係省庁会議」を開催し、「航空産業ビジョン」を策定して(2015年12月)、航空機産業支援を開始しました。

2014年には長野県飯田・下伊那地域が、中部5県が取り組む国際戦略特区「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」に指定されていましたが、国による上記ビジョン制定を受けて長野県は、「長野県航空機産業振興ビジョン」を策定しました(2016年5月)。ここでは、従来の部品単体を生産・販売するビジネスから、装備品システムを製作し、航空機メーカーに直接供給する企業(Tier1)への発展を目指す方針が示されており、その実現に向けて地域が一丸となって活発に技術開発活動を行っているところです。
今、世界ではベンチャー企業から大企業まで様々なプレイヤーが、人を乗せて移動できる「空飛ぶクルマ」のプロジェクトを立ち上げ、研究開発や実証事業を実施しています。日本においても、自動車や航空機の業界などの有志が集まる団体や、ドローンなどのベンチャー企業、投資ファンドなどの様々な分野の関係者が、都市の渋滞を避けた通勤、通学や通園、離島や山間部での新しい移動手段、災害時の救急搬送や迅速な物資輸送などの構想を描いて、「空飛ぶクルマ」の研究開発を始めています。当部門の研究者も、国が推進するプロジェクト研究に参画しています。長野県では、航空機システム電動化プロジェクトを進めており、このプロジェクトにも当部門の研究者が参画して、航空機装備品の電動化や業務用電動無人航空機の研究開発に取り組んでいます。
当部門では、以前より社会人教育講座を開講し人材育成支援を行っている飯田・下伊那地域に新たな拠点を構え、大学の保有する要素技術を結集するとともに、地元企業や関連技術を有する研究機関・企業等と連携して航空機システム(航空機装備品システム)の高度化や高付加価値化、モジュール化するための研究開発を行っており、その成果を通して航空装備品企業へ貢献することを目指しています。また、研究開発と並行して人材育成を目的とした「航空機システム共同研究講座」を開講し、大学院生を主な対象とした教育活動も実施しています。

主な取り組み

・以下の航空装備品システムに関する研究・技術開発
  ミリ波レーダ技術を活用した無視界進入技術
  高速VTOL機のエンジン故障発生時の安全性向上技術
  有翼再使用型宇宙機のシミュレーション検討
  GPS/INS複合航法システム
  FDM(Flight Data Monitoring)装置の記録の航空事故調査への活用
  小型航空機の運航安全に向けたHMD(Head Mounted Display)システム
  航空機用ブレーキシステム
  うず電流ブレーキにおける電力回生と蓄電システム
  次世代空モビリティの電動推進システムの設計・製造承認に向けた環境試験技術
  層流翼航空機の基盤技術研究

・JAXA連携大学院協定に基づく学生教育

スタッフ

スタッフ写真                                     
氏名 所属・職位〔専門〕
部門長
松原 雅春
工学系教授
〔流体工学〕
副部門長
柳原 正明
特任教授
〔飛行力学・飛行制御〕
菊池 良巳 特任教授〔センサ/アクチュエータ工学〕
辺見 信彦 工学系教授〔精密工学〕
亀山 正樹 工学系准教授〔機械材料・材料力学・航空宇宙工学〕
加藤 賢太郎 工学系助教〔流体力学・流体工学〕
小松 勝彦 助教〔センサ/レーダー工学〕
村上 曜 助教〔飛行力学・流体力学〕
各務 博之 特任教授〔航空装備品認証技術〕
篠﨑 厚志 南信州・飯田産業センター
飯田サテライトキャンパス研究開発支援
湯沢 陽子
研究支援推進員(飯田)

※競争的資金、受託・共同研究など新規のプロジェクトごとに、学内公募して協力教員の参画を得ます。