記者会見の様子

 山岳科学研究所 森林資源研究部門 加藤正人教授は、JAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)から「先進光学衛星センサの林業分野での有用性評価」を受託しました。
 この受託を受け、去る平成29年9月21日信州大学松本キャンパスにおいて、記者会見が行われました。

 本研究は、平成32年度打ち上げ予定の先進光学衛星センサの利用検討を行うため、加藤教授が開発した技術シーズをもとに、先進光学衛星の観測バンドを用いた樹種の分類や松くい虫被害の区分についての有用性の評価を、長野県・松本市・伊那市・北信州森林組合と連携して行います。
 林業分野で人工衛星を使った実証事例はほとんどなく、安価な国産人工衛星による調査が本格化すれば、経費は圧縮され、全国の自治体で活用される先行事例となります。

■■ 内 容 ■■
1 松くい虫被害の区分(健全木・感染木・枯死木)
長野県は近年、松くい虫の被害が爆発的に増え、人海戦術での目視による被害状況の把握は調査漏れが多いのが現状です。松本市及び伊那市耕地林務課は、被害の最前線にある感染木を伐採して松枯れの広がりを抑えるために、人工衛星での単木ごとの精密な被害区分に期待しています。使用する知財技術は、松くい虫の被害区分算定方法(特願2016-54551)のプログラムを用いて、松くい虫の被害前と被害後の衛星データを比較し、健全木・感染木・枯死木の区分を行います。

2 単木ごとの樹種分類
センサは森林の広葉樹や針葉樹の構成などを把握し、スギやヒノキ、カラマツの森林資源の活用につなげるのにも有効であり、北信州森林組合(中野市)で実施します。使用する知財技術は樹木本数算定方法(特許番号4858793号)、樹種分類方法及び樹種分類システム、間伐対象区域の選定方法(特許番号:4900356号)、森林資源情報算定方法(特願2016-227207)の各プログラムを用いて、衛星画像の解析から単木ごとの樹冠を抽出し、樹種分類や本数・樹高・胸高直径・材積などの森林情報を解析します。

本研究は、スマート林業の実現と林業の成長産業化に大きく貢献するものと期待されます。

会見の冒頭に挨拶をする 濱田州博学長

本研究の概要について説明をする 加藤正人教授



先進光学衛星を用いて、単木単位で樹木情報を把握します。所有者境界ごとに樹種別に樹木本数を自動カウントします。

松くい虫の被害区分算定方法(特願2016-54551)のプログラムを用いて、松くい虫の被害前と被害後の衛星データを比較し、健全木・感染木・枯死木の区分を行います。