令和3年3月26日、オンラインで開催された森林計画学会2020年度総会において、信州大学先鋭領域融合研究群 山岳科学研究拠点 DENG SONGQIU特任助教が黒岩菊郎記念研究奨励賞を受賞しました。受賞式は同日オンライン会議で行われました。
<1>受賞論文タイトル:Comparison of Tree Species Classifications at the Individual Tree Level by Combining ALS Data and RGB Images Using Different Algorithms
 評価された点:先端的なリモートセンシングの高度利用に資する内容で、単木レベルの樹種分類に機械学習を網羅的に適用し、それらの精度を丁寧に比較した点を評価されたことから受賞した。

<2>論文・研究の目的と概要
 林業の成長産業化のため、広葉樹林も含めた針葉樹人工林の樹種別本数や材積などの単木レベルでの正確な森林資源情報が求められている。しかし、日本や中国、東南アジアにある森林は、ヨーロッパや北米の森林と異なり、林分の構成が多様で複雑なことから、空からの森林資源の把握に対して高い樹種分類技術が必要である。この解決方法として、航空レーザによる三次元点群データの活用が期待されるが、レーザ解析は高度な専門知識が必要なことから精密な森林把握への利用や解析は進んでいない。
 本受賞業績では、日本国内で優占する立木密度の高い針広混交林を対象とした単木検出及び樹種分類を行い、航空レーザデータの有用性、最適な特徴量の組合せと最優な分類方法を評価することを目的とした。本受賞業績で開発したオリジナル技術(特許第6570039号)で対象地の単木樹冠を抽出したうえで、点群データとRGBオルソ画像から計算した23種類の特徴量を用いて24種類の機械学習手法で検出された単木樹冠を4クラス(アカマツ、ヒノキ、カラマツと広葉樹)に分類した。結果として、RGBオルソ画像から計算した樹冠内平均値および標準偏差などの計6種と点群データから計算した点群密度、形状係数等の計6種を特徴量に使用して構築したQSVM(Quadratic Support Vector Machines)分類法が分類精度90.8%で最高であった。

<3>論文・研究の対象分野、表彰概要、今後の研究展開,可能性
 本受賞業績で開発された単木検出及び樹種分類方法は、日本の森林だけではなく、人工林面積が増えている中国、熱帯広葉樹林の東南アジア、針葉樹天然林の広がる北米など諸外国の森林にも応用可能なことで表彰に値する成果であるといえる。森林調査をせずに森林資源が客観的かつ広域的に推定・区分できることから、森林調査を基本にした資源把握が効率的になり、コストの削減効果が大きい。本論文の国際共著者のHyyppä教授は、単木抽出方法の世界的権威である。本受賞業績の被引用文献として国際誌論文に数多く掲載されており、本受賞業績の高い学術的価値および先駆性を示すものである。
 また、本受賞業績から確立した方法を用いて、約8割の森林に計測範囲が広がっている航空レーザデータを使用して、高精度な単木レベルの森林資源情報提供が可能になることから、林業の成長産業化に貢献できる。

       
            黒岩菊郎記念研究奨励賞             DENG SONGQIU特任助教