PSD lattice 構造とその基本骨格、 PSD lattice backbone 構造との関係

鈴木龍雄特任教授(医学部分子細胞生理学教室)、田渕克彦教授(バイオメディカル研究所/医学部分子細胞生理学教室)、Weidong Li教授(上海交通大学Bio-X研究院/バイオメディカル研究所特別招へい教授)らの研究グループは神経伝達の要であるシナプスでの信号情報処理の中枢であるシナプス後肥厚部内部にある骨格構造の精製に成功し、従来のシナプス後部構造モデルを更に進化させました。

脳内興奮性シナプスのシナプス後肥厚部(postsynapticdensity, PSD)に内在する骨格構造(PSD lattice)の精製に成功し、その基本骨格と考えられるPSD lattice backbone構造の存在を明らかにしました。さらに、このPSD lattice backbone構造はチュブリンを最大構成成分として含有し、従来からのPSD分子構築モデル(アッセンブリーモデル)で想定されている複数の鋳型分子(PSD scaffold/adaptor分子)が構築する3次元構造とは異なるものであることを明らかにしました。また、脳組織シナプス後肥厚部にチュブリンが分布することを金標識を用いた包埋後免疫電顕法にて示しました。これらの結果に基づいて、チュブリンが主要分子として形成するPSD lattice backbone構造をプラットホームとして複数のシナプス後肥厚部鋳型分子(PSD scaffold/adaptor分子)やそれらが形成する微小ドメイン(ナノドメイン)、および他のシナプス後部機能分子が結合することによってPSDが構築されるというPSDの分子構築モデルを提唱しました。このモデルは発表者らが2018年に提唱しているPSD lattice構造と鋳型分子アッセンブリー構造とを合体させたPSD分子構築モデル(“combined scaffold-organized structure and PSD lattice” model)の発展型です。

本研究成果は、国際学術誌「Life Science Alliance」に掲載されました。

【論文タイトルと著者】
タイトル:Non-microtubule tubulin-based backbone and subordinate components of postsynaptic density lattices
著者:Tatsuo Suzuki, Nobuo Terada, Shigeki Higashiyama, Kiyokazu Kametani, Yoshinori Shirai, Mamoru Honda, Tsutomu Kai, Weidong Li, and Katsuhiko Tabuchi
掲載誌:Life Science Alliance
掲載日:2021年5月18日(EST)
URL: https://www.life-science-alliance.org
DOI: 10.26508/lsa.202000945

アメリカ科学振興協会(AAAS)のEurekAlert!にも掲載されました。
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-05/su-pdc051321.php

プレスリリース(PDF:749KB)