医学部は家族性アミロイド・ポリニューロパチー(FAP)の遺伝子治療の臨床実験を始めました。10ヵ国の医療機関が参加する国際臨床試験の一環で、世界で初めての試みです。臨床試験は脳神経内科、リウマチ・膠原病内科の関島良樹准教授(神経内科学、バイオメディカル研究所併任教員)らのグループが担当します。

FAPは肝臓で作られるトランスサイレチンという物質に異常があり、これが変化したアミロイドという物質が徐々に臓器や神経に沈着して手足の感覚がなくなったり、身体が衰弱したりする病気で、唯一の治療法が肝移植とされており、厚労省が難病に指定しています。

遺伝子治療では細胞内のDNA(遺伝子)にあたるタンパクの「設計図」を細胞内の「タンパク製造工場」(リボソーム)に運ぶRNAを破壊し、病気の原因となる変異タンパク質の生成を抑えます。臨床試験では細胞内のRNAと結合して破壊する合成RNAが含まれた点滴を3週間に1度のペースで1年半患者さんに投与します。タンパクの生成量がゼロになるとビタミンA欠乏症という副作用が起きますが、遺伝子治療では通常の約2割の量が残るように合成RNAの成分を調整することで、副作用が起こりにくくなり、病気の進行抑止に高い効果が得られます。

関島准教授は「一つの病気の克服には複数の治療法が必要なことが多い。試験がうまくいけば、患者さんに良い選択肢が生まれる」と話しています。