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生物由来材料の特性を解明し、新たな医療機器を開発する

生体組織から細胞を除去した脱細胞化組織は、医療機器として主に欧米で臨床使用され、患者さん自身の組織と馴染みやすいなどの性質が認められ、注目されています。脱細胞化処理により、ブタなどの組織をヒトへ移植することが可能になり、異種組織、臓器の医療応用が期待されています。根岸研究室は、脱細胞化組織の特性を解析し、その要因を明らかにし、医療用材料へ応用することを目的としています。また、金属加工・食品加工技術で使用されている真空加圧含浸法は、溶液などを材料へ効率よく導入することを可能にする技術です。この技術を医療用材料に応用し、新たな性質を有する医療用材料の開発を目指しています。

 

 
(左)ラット頸動脈移植3日目の未処理ブタ橈骨動脈。
(右)ラット頸動脈移植2週間目の脱細胞化ブタ橈骨動脈。
脱細胞処理により、異種移植の拒絶反応を回避し、血管として機能している。
  (左)凍結乾燥した脱細胞化組織を溶液に浸漬すると組織内の空気が抜けにくいため、不均一な溶液浸透になる。(右)真空加圧含浸法により、組織内の空気を除去した状態で溶液導入が可能になる。
ローダミン(色素)標識したポリエチレングリコールが組織内部まで導入できているとわかる (写真)。

 

≪研究から広がる未来≫


脱細胞化組織などの生物由来材料は、複雑な生体組織構造を再現可能であり、患者自身の細胞による組織の再構築などが期待できる材料と考えられています。幹細胞医療などと併用することで、複雑な生体組織、臓器を生体外で作り出すことが可能になるかもしれません。また、医療材料開発に異分野の技術を転用することで、今までにない性質を持つ医療機器開発が可能になると考えています。