生命機能に学ぶ高分子材料の研究室です
一言コメント | タンパク質からなる生物繊維に関する先端研究を推進しています。詳細については研究者総覧をご覧下さい。 |
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研究紹介
生物化学研究のフロンティアが拓く未来とは?
大川研究室では、水中に生活する生物がつくる繊維の生物科学・生化学研究を進めています。研究対象は主に軟体動物門と節足動物門の生物です。海に棲む二枚貝は、「足糸」と呼ばれる繊維をつくります。足糸繊維は、ジュール・ベルヌ作の冒険小説「海底2万里」にも登場し、カイコも羊も綿花もない海中で手に入る足糸繊維をつかい、潜水艦ノーチラス号の乗組員は衣類をつくったと描かれています。18〜19世紀南欧州の貴族達は、足糸繊維の希少な衣類や工芸品を所有し、互いの品を自慢しあったそうです。
ミドリイガイ (Perna viridis) が水中でつくる不思議な足糸繊維。 | 足糸繊維は、先端の接着円盤 (左:くっつく部分)、遠位糸状部 (中央:硬く強い繊維)、近位糸状部 (右:コシの強い繊維) からできている。 |
≪研究から広がる未来≫
足糸繊維はタンパク質でできています。タンパク質はアミノ酸が連結した鎖のような分子です。水中で足糸繊維をつくるために最適なアミノ酸の並び順があるはずで、生物進化の途中では、より強い繊維をつくるために、とてつもなく永い時間を経て、アミノ酸配列が次第に改良されながら、今に至っていると考えられます。水中で優れた繊維をつくるために生物が獲得してきた「知恵」は、最新の分析化学を駆使して明らかにされようとしています。「生物がつくった繊維材料」から、研究者が学べることは大変に多いのです。そして、未来の繊維材料工学につながります。