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設計工学研究室
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設計工学研究室

研究室概要

 機械の設計は、材料の性質や力学、地球環境への配慮、設計方法など多くの知識が総合される過程です。機械の軽量化や高性能化、エネルギー・資源の使用量低減には最適化が欠かせません。製品の製造から使用・廃棄、材料の再利用、安全・安心の保証まで、物づくり全般における環境適合設計が必要です。ものづくりと地球環境および人間との"調和"を実現する「最適化」の技術、まだ存在しない"未来"を計画し創造する「設計」の技術をキーフレーズとして、機械工学分野の各種最適設計や最適化手法、設計開発手法について研究しています。

  • 熱磁気モーターの数値モデル構築と最適設計

     原子力発電所や火力発電所では,高温高圧の蒸気によりタービンを回転させ,発電機を駆動して電力を得ています.タービンを回した後の蒸気は海水などの冷却水で冷やされ水に戻ります.このとき冷却水が温められて排出されるのが温排水です.温排水はまだ熱エネルギーを持っています.温排水の熱エネルギーを機械エネルギーとして取り出すことが可能であると考えられているのが熱磁気モーターです.温排水や温泉水などの比較的低温の熱源を低質熱源と言います.  熱磁気モーターには永久磁石と温度変化に伴って磁性が変化する材料である感温磁性材料と動力を取り出すローターと軸が使われます.また,低質熱源として温泉水と雪解け水などの冷熱源を利用します.永久磁石と感温磁性体,加熱冷却回路を適切に配置すると,感温磁性体を磁気回路に引きつけてその後離脱させることができ,ロータを回転させることができます.ロータ軸に発電機をつなぐことで発電機が駆動競れ電力が得られます.すなわち未利用な低質熱源からエネルギーを取り出すことができます.  熱磁気モータの効率的な駆動には使われている部品の配置が重要です.磁石と感温磁性体に間希有する磁場と,冷却加熱水の温度範囲や流量,機械装置の大きさや重量などを適切に定める必要があります.このためには,物理現象をうまく表現できる数値モデルの構築が欠かせません.本研究では,複数の物理現象が関連しながら,複雑な条件を検討することができる数値解析を利用して,熱磁気モータの最適設計のための数値モデルを構築することを目的としています。

  • 太陽電池アレイの配置最適化

     環境問題やエネルギー確保の点から,再生可能エネルギー利用の拡大が求められています.再生可能エネルギーの中でも太陽エネルギーは枯渇する心配がなく持続可能なエネルギー源として期待されています.太陽光パネルを使った発電は急速に普及し,パネルを設置する場所の工夫が求められます.太陽光発電を地上で行う場合,太陽電池アレイと呼ばれる,太陽電池パネルを架台に取り付けたものを設置します.アレイの受光量を向上させるために,研究室では配置に着目して研究を行っています.アレイを配置する際,地域によって異なる太陽軌道や,パネル上に影が大きく生じないように考慮して配置する必要があります.  本研究では,太陽電池アレイの年間総受光量が最大となる配置を最適化問題として考え,進化的アルゴリズムと呼ばれる最適化アルゴリズムを使って解析する研究を行っています.

  • 営農型太陽光発電の太陽光パネル配置最適化

     昨今SDGsの観点から再生可能エネルギーが注目されており,中でも太陽光エネルギーは様々な場所で普及が進んでいます.営農型太陽光発電とは畑などの農地上部空間に太陽光発電設備を設置し,太陽光を農地と太陽光パネルで共有する方法です.通常の太陽光発電と異なり太陽光パネルの受ける日射量に加えて農作物への日射量の確保も考える必要があり,またこれらの日射量は太陽光パネルの配置によって左右されることが分かっています.つまり,太陽光パネルの配置を工夫することで農業と発電をより効果的に行えます.  研究室では,発電と農業を効率的に行う太陽光パネルの配置問題を多目的最適化問題として考え,進化計算アルゴリズムの一つであるNSGA-Ⅱを用いて解析する研究を行っています.

  • 太陽光・太陽熱利用の最適化

     環境問題やエネルギー確保の点から,再生可能エネルギー利用の拡大が求められています.再生可能エネルギーの中でも太陽エネルギーは枯渇する心配がなく持続可能なエネルギー源として期待されています.太陽光パネルを使った発電は急速に普及し,パネルを設置する場所の工夫が求められます.すなわち,さまざまな形の敷地にパネルをうまく配置し,太陽光の受光量を最大化すると効果的です.また,太陽熱発電施設も稼働しています.ヘリオスタットと呼ばれる鏡が太陽を自動追尾して反射光をタワー上部の集熱部に集め,高温の熱エネルギーとして使ってタービンを駆動して発電します.この場合もヘリオスタットの影の影響を避け,反射光を遮らないようにヘリオスタットの配置を工夫する必要があります.  研究室では,任意の形状の敷地に太陽光パネルを適切に配置する問題,太陽光と太陽熱を同時に利用して敷地を有効利用するためのハイブリッド化の問題を最適設計問題として考え,進化的アルゴリズムと呼ばれる最適化アルゴリズムを使って解析する研究を行っています.

  • 小型ドローンの飛行経路最適化

     マルチコプターは構造物の点検や測量に利用されており,さらなる活用が期待されています.大型のマルチコプターは屋外においてGPSを用いることで定められた軌道にそって飛行することができます.重量が100g未満の機体は小型無人機と定義され,小型マルチコプターは小型無人機に含まれます.小型マルチコプターは大型のものに比べ機体が小さいため,屋内や狭い通路等のGPSを利用できない場所で使用される場合が多いです. 本研究では小型マルチコプターの自律飛行を目指して障害物を回避して飛行する最適飛行経路を導出することを目的としています.小型マルチコプターとしてプロペラが4つ搭載されているクアッドコプターの最適経路を導出します.目的関数として飛行時間と消費エネルギーの2つとし,多目的最適化を行います.また,制約条件として障害物上と飛行経路が干渉しないようにするために,予め障害物のデータを三次元再構成により入手します.

  • 線状立体構造物の3次元再構成

     物体形状と空間構造を異なる投影角度で撮影した2次元画像の集合から、元の構造を計算機内で数値モデル化する3次元再構成は、多様な用途で使用されています。対象物の3次元データは画像内の点の撮影位置と焦点距離の変化から得ることができ、複数画像間の点の対応を探索することで構造物を点群として再構成します。この再構成手法の課題として、点群にノイズが混入することが挙げられます。特に、樹木や細い鉄筋などの不規則かつ複雑に重なり合った対象物の点群は、線状構造の間にノイズが発生しやすく、これらのノイズ除去処理が必要となります。  本研究では、細長い形状が不規則かつ複雑に重なり合った線上立体構造物の3次元再構成を目的としています。再構成された点群に対するノイズ除去手法として、セルベース手法により不要な背景の点群を除去後に、セルベースの点の密度に準拠したクラスタリングを組み合わせてノイズを除去する手法を提案しています。

  • 二足歩行ロボットの歩容最適化

     二足歩行ロボットはモータを動力として動作し、歩行道制御を行うことができます.脚式駆動機構を有するため、平面での歩行のみならず、昇降動作や障害物回避歩行などが可能です。人間の代わりにロボットが作業を行う場面が増加しており、二足歩行ロボットの動作生成では最適化や強化学習を用いた歩容生成が実機やシミュレーションを用いて行われています。安定性を確保できる動作を人間とは異なる駅動メカニズムを有するロボットに実装することが困難であることから、人間の歩行を参照するニューラルネットワークや強化学習を用いた歩容生成手法では、歩行安定性の確保が課題です。  本研究では,安定性が保証された歩行動作生成を行うために,遺伝的アルゴリズムを用いた最適化手法を用いて,歩行ロボットの動力学モデルに対して障害物回避歩行動作を生成しています。

  • 板の曲げ振動によるプラスチック粒子の分離

     プラスチックは,利便性から多くの製品に利用されていますが,環境に流出すると半永久的に残留し微細化して回収困難となるため,使用後の廃プラスチックが海洋汚染の一因となっています.プラスチックを廃棄・リサイクルするときに,異種材料が混合すると,焼却時に有害物質が発生したり,リサイクル製品の品質低下につながります.そのため,リサイクルでは同じ材質に分離することが重要となります.リサイクルにおいて粉砕処理による方法では,金属とプラスチックは分離できますが,プラスチックは異種プラスチック粒子が混在したものとなり,それらの材質分離が課題です.プラスチックの選別分離技術として,比重分離や風力分離,静電分離などがありますが,水を汚染してしまうことや分離精度に課題が残っています.  本研究では,環境影響の大きいPVCの効率的な材質分離を目指します.連成解析ソフトウェアCOMSOLによる解析結果から,実験装置に使用する矩形金属板の寸法と板厚を定めます.その後,実験装置を組み立て,PVC粒子と数種類の異なる材質のプラスチック粒子による材質分離実験を行い,得られた結果からPVC粒子の分離割合を求めます.