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北海道千歳市・苫小牧市におけるニホンジカの市街地周辺での増加を示した事例を報告

研究

野生動物管理学研究室の池田敬助教らの研究チームは、北海道千歳市や苫小牧市の市街地付近に生息するニホンジカの生息密度の増加を報告しました。
近年、北海道では、ニホンジカの生息数が増加し、農作物被害だけではなく、自動車や鉄道との衝突事故も増加しています。さらに、市街地周辺でのニホンジカの増加は、マダニが媒介する人獣共通感染症のリスクも懸念されています。
これらのリスクを予測するためには、市街地周辺におけるニホンジカの生息状況を把握し、その動向を長期的にモニタリングすることが,市街地における人間とニホンジカの軋轢に対する効果的な対策の立案に繋がります。しかし、日本では、市街地周辺におけるニホンジカの生息状況を長期的にモニタリングしている事例は皆無でした。
そこで本研究チームは、北海道千歳市や苫小牧市の市街地周辺において、2011-15年と2022-24年にスポットライトカウント調査を実施し、ニホンジカの生息状況をモニタリングし、市街地との関連性を評価しました。
その結果、ニホンジカは市街地周辺だけではなく市街地から離れた地域でも増加し、生息状況は10年間で3.5倍増加していることが明らかになりました。特に、千歳市に隣接する2つの調査ルートでは、市街地周辺で著しい増加と高い生息密度が確認され、人間との軋轢がさらに悪化する可能性が懸念されます。
以上より、市街地における人間とニホンジカとの軋轢を緩和するためには、ニホンジカにとって好適な生息地を特定し、市街地周辺だけではなく、市街地から離れた地域においても捕獲を実施することの必要性が示唆されました。また、本研究は、全国各地で増加している市街地に出没する野生動物への対応策を立案するための一助になると考えています。

本研究成果は,2025年6月14日に国際誌「Urban Ecosystems」に公開されました。詳細は以下をご覧ください。

タイトル:Trends in sika deer population in an urban-suburban area
著者:Takashi Ikeda 1, Yukiko Matsuura 2, Hiroshi Takahashi 3, Hiromasa Igota 4, Takuma Watanabe 5, and Tomoya Shichijo 6
著者所属:1信州大学学術研究院(農学系),2国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所北海道支所,3国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所東北支所,4酪農学園大学環境共生学類,5一般社団法人エゾシカ協会,6岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター

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