私たちの生活環境に欠かせない電気。
身近な家電から発生する磁気の力を活用することで、
新しい未来が見えるかもしれない。

プロジェクト概要

可能性に立ち向かうことの意義

信州大学スピンデバイステクノロジーセンター(SDTC)は磁気応用の研究を行う20名近くの教員が集まったバーチャルな研究所です。信州大学環境磁界発電プロジェクトは、磁束収束技術、渦電流抑制技術、複合媒質を用いた波長短縮効果、CMOSプロセスを用いたAC/DC変換素子というキーテクノロジーを持ち寄った初めてのスピンオフプロジェクトです。国際非電離放射線防護委員会が定めるICNIRP2010のガイドライン値以下の磁界を、私たちの生活環境下での存在を許容された「環境磁界」と定義します。人工的に生成された環境磁界、つまり再生可能エネルギーを回収する「発電する部品」の開発と「キラーアプリケーションの提案」を行います。50/60Hz等の低周波から2.45GHz等の高周波までの電磁界周波数を幅広くターゲットとした環境発電・非接触給電への取り組みは世界的にも珍しいです。
地方大学の強みを生かし、教育・研究・産学連携との相乗効果を生み出しながら、次の「スピンオフ研究プロジェクト」の輩出も狙います。

2冊のプロジェクト報告書と開発品の例(磁界警報機など)

楽しくなければイノベーションは起こせない

全ては2012年6月、居酒屋での5名の教員によるプロジェクト会議からスタートしました。現在は教員、コーディネータ、技術職員、事務員の11名で構成されたメンバーで活動しています。2015年1月の段階で、英語による招待講演を3回、主催の講演会を1回、協賛の研究会・講演会を5回、展示会出展3回を行っています。
本プロジェクトは平成25年度信州大学地の森未来プロジェクト(PLANTheFirst推進経費)採択事業としても採択されました。信州大学環境磁界発電プロジェクトの存在は、2014年12月に科学技術出版より出版された「電界磁界結合型ワイヤレス給電技術(科学技術出版)」の中にも紹介しました。プロジェクト会議は通常の会議室や宴会とは一線を画した、密度の濃い議論を交えながら年に6回程度続けています。2014年5月の段階で12回目の会議報告をまとめた2冊の会議報告書をメンバー向けに作成しました。
近年様々なプロジェクトの立ち上げを目にしますが、3年以上もスタート当初の勢いそのままに続けることは難しいです。開発者が楽しくなければ、出来上がったモノも笑顔で世の中に受け入れられないと考えます。今もコードネーム「ふくろう」(不苦労!みんなで何か楽しいイノベーションを!メンバーには集合場所の意味も含む)の名のもと、次の3年を目指し活動を行います。

メンバー

メンバー紹介

田代 晋久

田代 晋久 (EH01~EH28)

過去を振り返ると,これだけ企画と参加が楽しい会議はありませんでした!対内的には議事録,対外的には書籍や論文といった記録を残すことが継続のカギであったと考察しています。これがなかったら5名の懇親会で終わっていた可能性の方が高かった活動だと実感しています。長野の地らしく,7年という区切りで終活が行えたことにご縁と感謝を覚えます。現在の成果は,人のつながりの重要性を知る契機をいただけたと個人的に思います。専門を同じとする同世代の研究者だけでなく,年齢も考え方も異なるメンバーとの会話の機会の重要性を知りました。学内の色々な意思疎通や,日常では出会えないテーマにも向き合える契機にもなりました。医工連携や農工連携研究にも発展しました。将来への展望として,参加者全員が楽しみを見つける工夫を入れることだと思います。本プロジェクト会議のスタイルは,時代遅れあるいは時代の最先端を行き過ぎた感もありました。働き方改革が叫ばれる昨今,窮屈感を感じることもあります。仕事と遊びの敷居を無くした「プロジェクト」に携われる機会がまたあれば幸甚です。

【環境磁界発電原理と設計法(1, 2.1, 3.1, 4.1, 5.1-2)執筆・監修】

研究者紹介を見る

水野 勉

水野 勉(EH01~EH28)

プロジェックトを成功させる秘訣について考えてみたい。大事なのは,プロジェックトの目的が明確になっていること,出口がはっきりしていること,参加者のGive and takeが得られることであろう。予算があれば,なお良い。参加者の研究・思考のベクトルは,個人個人で異なっているので,結束を高めるためには「御旗」的な方向付けが必要である。また,理詰ばかりではなく,キャラクターにも依存しており,懇親会などにおける情報の共有や意見交換も大事に思える。上述の観点から本プロジェックトを振り返ると,まず「エナジーハーベスト」という目的から,各研究テーマを3つの周波数帯に分けて仲間が参画している。また,論文や図書の出版の出口も明確であった。さらに,懇親会では情報共有や多方面からの意見交換のGive and takeがなされた。参加して「楽しい」と思えることが長年に渡り継続できた理由であろう。

【環境磁界発電原理と設計法(3.2)執筆。】

研究者紹介を見る

脇若 弘之

脇若 弘之 (EH01~EH28)

環境磁界発電プロジェクト開始の時期は,研究室の枠を超えて共同研究を広げるよう提言されていた時期でした。本プロジェクトの会議は,同じまたは関係する分野の研究に取り組んでいる仲間同士が、打ち解けた雰囲気で始められたことが最大の良かった点ではないでしょうか。研究・研究課題の面では,環境磁界発電プロジェクトが始まる前,類似の用語として「環境発電」や「電磁環境」がありました。プロジェクト開始早々に「環境磁界発電」が提案され,プロジェクト進行に伴い「磁気エネルギー」回収に有効な技術が低周波から高周波にわたる範囲まで統一的に扱う基本軸として見なすことができるようになったと思います。「この世にたやすい仕事はない」(6) との見方もありますが,『仕事が楽しみなら人生は極楽だ!仕事が義務なら人生は地獄だ。』(7) における「仕事」を「研究」に置き換え,諸課題に取り組んでいきたいと思います。

(6) 津村記久子,"この世にたやすい仕事はない",新潮文庫,2018.

(7) マクシム・ゴーリキィ, "どん底", 岩波文庫, 1961.

【環境磁界発電原理と設計法(2.1, 3.1, 4.1, 5.3)執筆】

研究者紹介を見る

佐藤 敏郎

佐藤 敏郎(EH01~EH27)

小生は1996年9月に民間企業から大学に移りました。大学に移ってすぐに,「大学は色んな分野の研究者が集う専門家集団である.」という当たり前のことを改めて実感するとともに,研究室同士の横の繋がりがほとんどなく,様々な研究が相互作用することなしに独立に行われている印象を強く持ちました。さて,産学連携研究プロジェクトが国内外を問わず,活発になっており,大学教育にもその流れが加速して導入されてきています。大学に着任してから,民間企業との共同研究を積極的に行ってきましたが,他の研究室と連携すればさらに大型の共同研究,あるいは研究プロジェクトが可能になるとの思いが強くなっていきました。信州大学には,磁気物性,磁性材料,磁気応用など磁気分野の研究者が多く集い,規模の上では磁気研究の世界的メッカである東北大学に次ぐものと自負しておりますが,それまでほとんど交流のなかった学内の磁気分野の研究者を結集して,相互交流/連携をとおして大型研究を推進するスピンデバイステクノロジーセンターを2006年に設置し,磁気分野でのプレゼンス向上を目的に活動してきました。信州大学環境磁界発電プロジェクトはスピンデバイステクノロジーセンターからのスピンオフプロジェクトであると同時に,民間企業や高専などと連携し広く間口を取って活動してきました。小生自身は大きな貢献はできませんでしたが,こういった取り組みが今後も続々と出てくることを強く願っています。

【環境磁界発電原理と設計法(2.2, 3.3)執筆】

研究者紹介を見る

曽根原 誠

曽根原 誠(EH01~EH24)

田代先生が記載されている通り,本プロジェクトに参加していたからこそ知ることができた研究テーマが多々あったことが一番の思い出です。また,本プロジェクトから生まれた書籍「環境磁界発電原理と設計法」(科学情報出版)の第2章 環境磁界を模擬 2.2 平面を対象および第3章 環境磁界の回収 3.3 複合材料技術について分担執筆者として携われたことも良い思い出であり,貴重な経験になりました。あまりお役に立てませんでしたが,代表の田代先生に敬意を表すと共に,メンバー一同,関係各位に感謝致します。

【環境磁界発電原理と設計法(2.2, 3.3)執筆】

研究者紹介を見る

卜 穎剛

卜 穎剛(EH02~EH24)

このプロジェクトの始めた直後に私が信州大学に着任して,すぐプロジェクト発起人の田代先生に誘われ,2回目の会議から参加してきました。当時は「環境磁界発電」すらわからないままで,飲み会兼研究会議に参加し,メンバーの方々と技術や仕事,生活に関する情報交換が出来た。面白くて,楽しいプロジェクトと感じていました。現在の成果は,本プロジェクトをきっかけに,他の研究者の研究成果や異分野の研究への学習することを習慣化になりました。違う分野の内容検討で,自分の研究にヒントを与えてくれることもなります。将来への展望は,仕事も生活も,楽しみ要素を取り入れることが,いかに重要かと認識しました。仕事の活性化,高効率化にもつながる「味の素」であると思います。今後,このプロジェクトの成果を用いて,新しい仕事に挑戦したいと思います。

【環境磁界発電原理と設計法(2.3, 5.4)執筆】

研究者紹介を見る

宮地 幸祐

宮地 幸祐(EH06~EH28)

2013年4月に信州大学に着任してすぐにこのプロジェクトにお誘いいただき,以来最後まで関わらせていただきました。最初のIC試作はこのプロジェクトだったことも大変思い出深いです。また,アクティブな懇親会などを通じ,学内外様々な方とご縁を持つきっかけとなり,今では大切な財産となっております。現在の研究は異分野協調,交流が当たり前となっておりますが,いつでも人とのつながりの最初の取り掛かり一番難しいものだと思います。人を集い,このような場を提供していただいた田代先生をはじめ,温かく迎え入れていただいたメンバーの皆様に心より感謝申し上げますとともに,今後の益々のご発展を祈念いたします。新しい形の連携を模索する機会がまたどこかであれば幸いです。

【環境磁界発電原理と設計法(4.2)執筆】

研究者紹介を見る

笠井 利幸

笠井 利幸(EH08~EH28)

田代先生が信州大学工学部に勤務されて以来,研究や学生への教育のお手伝いしてまいりました。そして,本プロジェクトを立ち上げられた当初は,磁気に関連する教員のみなさんが日頃の研究成果を発表し,今後の研究方針を決定するような会議の場と思い参加を辞退しておりました。プロジェクトが発足した1,2年後に,学部内のいろいろな立場の方が,研究だけでなくコミュニケーションの場として活用されていると伺い参加を決めました。プロジェクトでは会議内容を議事録にまとめることを中心に参加しましたが,単に研究成果の発表や議論を行うだけでなく,色々な分野の新たな情報の提供,出張や旅行における体験談や失敗談など多岐にわたり興味深く伺うことができました。最近では,プロジェクトメンバーも公私にわたってお忙しくなり,フルメンバーが集まることが難しくなってきた為,残念ですが一旦区切りをつけることになりました。今後もこのような機会があればぜひとも参加したいと思います。プロジェクトメンバーの一層のご活躍を祈念して締めたいと存じます。

【環境磁界発電原理と設計法(5.7)執筆】

研究者紹介を見る

中澤 達夫

中澤 達夫(EH08~EH28)

このプロジェクトの特徴は,何より参加者の自由な意見交換の場であることだったと思います。時代の要請に即した環境磁界発電研究を中心テーマに据えて,電磁気関連の研究者の集まりとして始まったそうですが,初めからあまり狭い分野に限定することなく幅広い人々が集まり,楽しく議論(懇親?)を深めていました。一つの大きな成果として,この交流から,グループによる専門書籍を上梓できたことがあります。また,我々のような産学連携を進める立場の,いわゆる研究者とは少し異なるメンバーも参加させてもらい,楽しく対等な意見交換に加わってやや視点の違う情報などを(臆面もなく)提供することで,多少なりとも研究が広い分野に展開していくお手伝いができたのではないかと思います。これからへの期待として,さらに広い,例えば社会科学や経済・経営分野の方々ともざっくばらんな交流をしながら互いの研究の融合を模索する場になっていければと思います。「まあ,固いことは言わないで」研究のその先の夢を語り合い,何とかその夢の実現に向かっていく元気が出せるような場がもっと生まれてほしいと思います 【環境磁界発電原理と設計法(5.5)執筆】
生稲 弘明

生稲 弘明(EH08~EH27)

当時 私は工学部 地域共同研究センターでコーディネーターとしてエネルギー関連の仕事をしておりました。田代先生を始めとして先生方との交流が深まりましたのは 仕事の関連は勿論ですが 闊達に意見、議論する先生方の研究会の雰囲気を通してでした。通常の研究会の発表、討論は会議机を挟んで 研究発表と質問で時間が過ぎますが、先生方の研究会は食卓を囲み、ビール片手に互いに意見をのべあう、自由闊達に議論する楽しくも未来志向型のすばらしい研究発表会でした。議論の内容は専門外の私には理解を超える内容が多かったのですが、私の実務に役立つ事も多く、その一つの事例といたしまして、世界で初めて磁界発電方式による「ワイヤレス電流センサ」を M社と共同で開発いたしました。製造工場の各製造設備に取り付けることにより 1秒以下の単位で各設備のエネルギの使用状況の把握が出来 又生産状況の推移が一括で把握出来 次第に改善点が見えてきます。≒25%程度の省エネが図られるばかしでなく、生産性UP活動に欠かせないセンサとなっております。又 余談ですが 電流センサから得られる膨大なデータを分析、解析し自動的に対策案を推論するプログラムの開発を趣味的ですが現在取り組んでおります。

【環境磁界発電原理と設計法(5.6)執筆】

新井 愛美

新井 愛美(EH08~EH17)

楽しい会を過ごさせていただきました。皆さんの難しいお話を聞かせていただいて,自分も頭がよくなったような気がしました!

小林一樹

小林一樹(EH25~EH28)

田代先生,7年間お疲れ様でした!私の参加は,書籍が出版された後で一段落した雰囲気の時期からだったですが,打ち合わせのスタイルも,その内容も大変勉強になりました.電気電子系と情報系は近い研究分野ですが,違いも大きく,私なりに楽しませて頂きました。打ち合わせは必ず居酒屋で実施されるにもかかわらず,紙の資料が配布され,話し合いの内容はボイスレコーダで記録されるというローテクとハイテクが混ざったような独特なスタイルはいつも刺激的でした。今でも覚えているのは,宮地先生が発表した論文の新規性を教えてもらったときであり,非常に分かりやすい説明で,その分野ではそういう点が最新なのかと,ワクワクしました。また,私が紹介する文献や話題は,情報系の応用寄りであるにもかかわらず,水野先生や佐藤先生が想像以上に興味を示してくれたことも嬉しくてよく覚えています。こういった普段触れることがない刺激が,新しいことを生み出すきっかけになることを肌で感じることができました。最後になりますが,私が一番気になっていることは,笠井さんが,毎回どんな気持ちでボイスレコーダから議事録を作成していたのだろうということです。お酒が入ることで,時間とともに,支離滅裂な発言が増える中,議事録としての体裁を保つために筋の通った内容に編集しなければならない作業は,素面で聞くには耐え難く,また,発言者の意図を忖度してどこまで文章とするのか,あるいは削るのか,を判断する必要があり,まさにAIが超えられない壁を体現したものではないかと考えています。何はともあれ,このような文章を書くことも他には無い貴重な機会であり,ここまで楽しませて頂いた田代先生に改めて感謝致します。ありがとうございました。

研究者紹介を見る

手塚 吉彦

手塚 吉彦 (EH26~EH28)

大学を卒業してから凡そ40年の時を経て、コーディネータ活動を通じて本会へ参加させて頂きました。本プロジェクト会議をとおして科学の魅力を再認識する機会となりました。メンバーの皆様と創造的で楽しい時間を共有できたことは素晴らしい思い出として大切にしていきたいと思います。皆様のご健勝とご活躍をお祈り致します。ありがとうございました。

研究者紹介を見る

笹森 文仁

笹森 文仁 (EH27~EH28)

私はEH27からの参加なので振り返る過去はあまりありませんが,それぞれ持ち寄った資料を元に飲みながら議論するというのはとても斬新なアイデアで,参加した2回の会議はいずれも楽しく有意義な時間でした。私の研究分野である無線通信技術でも低消費電力化の研究は進んでいます。エネルギーハーベスティング技術と無線通信技術の融合が進み,モノのインターネット(IoT)の普及が加速することを期待しています。

研究者紹介を見る

お問い合わせ

TEL/FAXでのお問い合わせ
026-269-5216 【受付時間】 9:00~17:00
※土・日・祝祭日はお休みをいただきます
Eメールでのお問い合わせ
tashiro@shinshu-u.ac.jp