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2019年度「高冷地植物生産生態学演習」を実施しました

お知らせ農場系の実習

JA長野八ヶ岳集荷場にて視察
JA長野八ヶ岳集荷場にて視察
キャベツの収穫に挑戦
キャベツの収穫に挑戦

1.演習名
「高冷地植物生産生態学演習」

2.演習の目的
高冷地という特殊な環境下における農業について学び、持続可能な農業生産について考える機会を創出することが目的である。また、共同作業の重要性を知り、協調性を培う機会を創出することも目的である。

3.実施日
2019年8月19日(月)~8月22日(木)

4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)
野辺山ステーション

5.担当教員
鈴木香奈子助教、春日重光教授、濱野光市教授、荒瀬輝夫准教授、関沼幹夫助手

6.参加人数
49名(信州大学繊維学部1名、信州大学農学部48名)

7.演習内容の概要

【1日目】
JA長野八ヶ岳の集荷場と生産者訪問を実施した。講義内容は、高冷地農業への理解を深めてもらうために、野辺山の高原野菜ブランド発足までの歴史や要因に関するものとした。この日に提案した課題レポートは、「高冷地農業における現状の問題点を踏まえ、持続的な農業を行っていくためにはどのような手法や戦略が必要と思うか?」であった。

【2日目】
キャベツの収穫・出荷作業を行った。構成した作業班が交代でブルーベリーやイチゴの収穫も行った。講義内容はキャベツの生態や西アフリカ地域の農業に関する内容を実施した。

【3日目】
午前中はキャベツの収穫・出荷作業をメインとし、ジャガイモの収穫も取り入れた内容の演習を実施した。午後はうどん加工実習を行った。講義は、リンゴを題材とした作物の育種について、育種目標の重要性に関する内容とした。

【4日目】
野辺山、八ヶ岳の野生生物の調査・観察を行った。また、高冷地における絶滅危惧種の植物などを観察した。午後1時に課題レポートを提出し、演習全行程を終了した。

8.成果

8.1. 全体的な評価
演習を終了後、参加者を対象としたアンケートを実施した。その結果を踏まえて、演習の成果を報告する。

演習全行程において大変満足した55%、満足34%、普通9%、不満2%と、8割強の参加者が満足したことが分かった(図1左)。有益さについては、大変有益68%、まあまあ26%、普通4%、あまり2%という結果であった(図1右)。参加者の7割が有益さを感じたことが分かった。

演習を満足した、もしくは有益であったと感じた理由は、普段行うことのできないキャベツの収穫作業を通して農家の大変さを知ることができたこと、現場の方々の話を直接聞くことができたこと、また講義から学ぶことが多かったこと、などが挙げられていた。しかしながら、不満と感じた参加者もおり、その理由は、天候に恵まれなかったこと、演習期間が長いと感じたことなどが理由であった。

図1. 演習の楽しさ(左)と有益さ(右)についてのアンケート結果.jpg

8.2. 各演習内容について
キャベツ収穫実習は、約9割の参加者に最も満足された実習だった(図2)。JA長野八ヶ岳集荷場や農家視察は、約7割強の参加者が満足した実習だった。約9割近くの参加者が講義について満足した結果となった(図2)。野生生物観察は約7割、うどんの加工は約8割強の参加者が満足したとの結果になった。

JA長野八ヶ岳の集荷場や生産者訪問を通して、多くの参加者は野辺山の高原野菜のコールドチェーンの仕組みやその維持管理の重要性、問題点を知ることができた。視察と併せて実施したキャベツの収穫作業は、生産者の方々の大変さを実感できる経験となった。一方、現場視察やキャベツ収穫作業に不満と感じた参加者もいた。現場視察では説明者の方々の声が聞き取りにくかったことから不満と感じたようである。また、キャベツの収穫作業への不満の理由としては重労働であったこと、休憩時間が不十分であったことなどが考えられた。

講義やレポート作成を通して、野辺山の歴史、高原野菜ブランド地になった転機、現状に関心をもった参加者が多かった。また、異なる環境における農業についても高い関心を抱いたようである。参加者達の多くは新たな知識を得ることができたと回答している。

野生生物の観察はあいにく天候が崩れ、十分な観察ができなかったものの、高冷地という特殊な環境の植物を観察できたことで充実した実習になったようである。加えて、うどんの加工についても、自分達でうどん打ちに初めて挑戦したことにとても楽しみを感じたようである。

図2. 各実習・講義への評価のアンケート結果.jpg

8.3. 演習後、興味関心が増した事
演習後に関心が増した事柄についての回答結果は、高冷地28%、農業20%、野菜18%、環境16%、食料11%、家畜3%、その他2%となった(図3)。その他は、海外の農業、経営であった。

高冷地や農業への関心を高めることが演習目的であったことから、演習の成果は現れたと考える。関心が増した理由としては、JAや生産者といった現場の方々から現状を教えていただいたこと、キャベツ収穫を体験したことが大きな要因であった。また、環境や植物の異なりに大きな関心を抱いたようである。レポート課題がきっかけとなり、持続的な農業や環境保全に興味をもった参加者もいた。

その他で、海外の農業と回答した理由は今まで聞いたことのない話を講義で聞き、興味をもつようになったためであった。経営については、現状を知ったことにより、栽培技術だけではなく、経営学もとても大切だと感じたためであった。

今回の演習では、JA長野八ヶ岳関係者や生産者の協力により、現実的な経営状況についての詳細を知ることができた。ゆえに、経営の視点から、持続的農業についてのレポートに記載した参加者が多く見受けられた。現状を知る事、それが参加者の高い関心と強い興味を生み出したことは、演習の大きな成果である。

図3. 演習後に興味・関心が増大した事柄についてのアンケート結果.jpg

9. 今後の予定と改善点
来年度も同様の時期に演習を実施する予定である。

改善すべき点は、スケジュール内容や施設の利用情報について事前に詳細に説明することである。実施者はこれらの情報を理解しているものと考えていたが、さらに周知が必要と考えられた。また、作業がハードであったと感じる参加者もいたことから、十分な休憩時間を取るなど改善する必要があると思った。加えて、現地視察における説明の聞き取りにくいという問題については、マイクを利用することが簡易的であるが、その場で作業をされている現地の方々に迷惑にならないよう、最善の策を今後検討する。

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