信州大学

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ナノロッド状の窒化タンタルからなる赤色透明な酸素生成光電極を開発 ―世界トップレベルの太陽光エネルギー変換効率10%を達成―

2023.08.21

 信州大学 先鋭材料研究所の堂免特別特任教授を中心とする研究チームは人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)、東京大学、産業技術総合研究所、宮崎大学と共同で、ナノロッド状の窒化タンタル光触媒を用いて、太陽光を利用して水を高効率に分解できる赤色透明な酸素生成光電極を開発しました。そして窒化タンタルを用いた光電極系において、世界トップレベルの太陽光・水素エネルギー変換効率、10%、を達成しました。

これらの成果は、光吸収によって生じた励起キャリアを高効率に捕集して酸素生成反応を駆動できる光電極を開発し、その光電極が赤色透明であることを活かして水分解用のタンデムセルを構築することで得られました。

堂免一成特別特任教授、久富隆史教授を含む信州大学の研究チームは窒化タンタル光触媒とその表面に担持された助触媒の表面分析を担当しました。
本手法で製造される水素は太陽エネルギーを利用し製造時にCO2発生がない次世代グリーンエネルギーとして期待されています。今後は、本研究で得られた科学的知見を基にして、より安価に水素製造が可能となる粉末型光触媒シートの太陽光エネルギー変換効率の向上、および光触媒を用いた水素製造の社会実装を目指します。

この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の結果得られたものです。本研究で得られた科学的知見をもとにして、より安価に水素製造が可能となる粉末型光触媒シートの太陽光・水素エネルギー変換効率の向上、および光触媒を用いた水素製造の社会実装を目指した研究開発を、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業」の一部である「CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」プロジェクトで継続しています。

今回の研究成果は、2023年8月15日(火)(欧州標準時)に欧州科学誌「Advanced Energy Materials」のオンライン速報版で公開されました。
Yuiry Pihosh, Vikas, Nandal, Tomohiro, Higashi, Ryota Shoji, Raman Bekarevich, Hiroshi, Nishiyama, Taro Yamada, Valeria Nicolosi, Takashi Hisatomi, Hiroyuki Matsuzaki, Kazuhiko Seki, Kazunari Domen, Tantalum Nitride-Enabled Solar Water Splitting with Efficiency Above 10%, Advanced Energy Materials (2023) https://doi.org/10.1002/aenm.202301327



下記写真:開発したナノロッド状の窒化タンタル(Ta3N5-NR)光触媒からなる赤色透明な酸素生成光電極


(a) Ta3N5-NR透明光電極の写真, (b) Ta3N5-NR透明光電極の断面の走査型電子顕微鏡像.
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