蔵書紹介
寺崎昌男『日本近代大学史』(東京大学出版会、2020年)
2023.11.16
――戦前戦後を貫く日本の大学史――
明治期に日本に大学が設立されてから現代までの、包括的な大学史です。国立のみならず公立・私立大学も網羅し、大学の自治という観点から、ここ数十年の大学改革の流れが捉えなおされています。大綱化の前後の時代では、まだ楽観的な受け止めが多く、これから大学はより自主・自律性を獲得して、自由度が高まると期待されていました。それが、どのような経緯で現在のような状況になったのか。一方で、その頃に既に始まっていた政策もあり、読むほどに、現在の高等教育をめぐる状況に対して、驚きと、厳しさと、やるせなさとを感じます。
関連図書:
土持ゲーリー法一『戦後日本の高等教育改革政策』(玉川大学出版部、2005年)
アメリカの大学(と教育政策)との比較を軸に、戦後日本の教養教育・一般教育と大学院教育の改革史を追った研究。アメリカの大学自体が取り組んだ改革も並行して紹介され、アメリカ教育局が日本に対して行った指導と日本の大学の対応の齟齬、そして、本来の導入の思想や趣旨からかけ離れていくさまが記述され、こちらもやるせない思いが募ります。
それとは別に、新制大学で模索された教養教育の配置方法のモデルは(pp.179-183)、一読の価値があります。教養教育改革の議論の土台となるでしょう。