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蔵書紹介

藤本昌代・山内麻理・野田文香編著 『欧州の教育・雇用制度と若者のキャリア形成―国境を越えた人材流動化と国際化への指針―』 (白桃書房、2019年)

2023.09.19

――学位と職業資格の国際通用性整備の本家・ヨーロッパ各国の成果と苦悩――

 ヨーロッパ各国の高等教育の質保証は、1999年のボローニャ・プロセスを契機としています。ヨーロッパ域内の労働移動を促進するために、各国の様々な職業資格や学位を標準化し、比較可能なものにすることを合意したのが、このボローニャ・プロセスでした。それ以降、教育訓練システムを分類する基準を作り、各国でも資格枠組みを整備し、学位や資格を説明する公式文書(これがディプロマ・サプリメントの本来の意味)を作り、学校を卒業した若者の流動性を高めると同時に、ヨーロッパ全体の競争力を上げようとしたのです。

 しかし、各国の教育制度や就職・採用慣行、労働文化には大きな違いがあり、かつ、各国間の若者の移動は双方向的というよりは不均衡であり、かつ、若者が持続的に定住し、家族とともに穏やかに生きることが難しくなっている側面もあります。

 本書は、各国の教育システムと雇用システムの接続、若者のキャリア形成をデータとともに丁寧に検証し、日本の大学や企業が学ぶべき課題を示した大著です。編著者たちは、アメリカよりもヨーロッパのあり方の方が日本の慣行に親和的だと考えており、日本は、国際競争力を何のために、どの領域で狙うべきなのか、多くの示唆が得られる本になっています。


関連図書:

米澤彰純・嶋内佐絵・吉田文編著『学士課程教育のグローバル・スタディーズ――国際的視野への転換を展望する』(明石書店、2022年)

羽田貴史・米澤彰純・杉本和弘編著『高等教育質保証の国際比較』(東信堂、2009年)