2024年7月26日(金)に松本キャンパス理学部で、マレーシア・サラワク大学ボルネオ研究所所長のポーリン・バラ教授のセミナーが開催されました。
最初に金沢謙太郎教授から、マレーシア、サラワク州北東部のクラビット高原出身であるポーリン・バラ教授の紹介がありました。また、ボルネオ研究所を現地カウンターパートとするボルネオ中央高地での共同研究についても紹介がありました。
今回のセミナーは「Protecting Nature in the Heart of Borneo: The Kelabit Perspective & Experiences in the Kelabit Highlands of Central Borneo(ボルネオ中央部の自然を守る:クラビット高地におけるクラビット人の視点と経験)」という演題で講演いただきました。セミナーは会場とオンライン(Zoom)を結んで行われ、他大学の先生方にも参加いただきました。




冒頭、クラビット語の伝統的な言い伝えとして「me ngerang mado(遠くまで旅する)」というフレーズが紹介されました。旅をして新しいアイデアや技術を持ち帰ること、同時に双方にとって新たな知見につながる芽となること、バラ教授は今回の訪問と研究所間の学術交流の意義について強調されました。



「The Heart of Borneo(ハート・オブ・ボルネオ)」というのは文字通りボルネオ島の心臓部に当たる自然の保護を目指して、2007年から始まった国際的なプロジェクトです。
バラ教授はハート・オブ・ボルネオの中にあるクラビット高原の自然や稲作などの写真とともに、景観やコミュニティの変化について語りました。それは、1980年代のPulong Tau(プロン・タウ)国立公園の構想から、現在に至る州政府の政策、コミュニティの混乱などの歴史と関係しています。加えて、クラビット高原の土地利用、森林保全、コミュニティの認識に関する問題、国や州政府に対する疑問点を解説いただきました。

また、コミュニティが主導して毎年開催している「Pesta Nukenen Bario(バリオの食と文化祭)」についても紹介いただきました。
講演後には、セミナー参加者からハート・オブ・ボルネオの国際的評価や参加各国の取組み状況、先住民族間の差異や関係性などに関する質問がありました。

セミナーに先立って、バラ教授は、山岳科学研究拠点事務局がある農学部を表敬訪問されました。拠点の活動概要について、森林資源研究部門の安江恒部門長から説明があり、山岳生態系研究部門の山田明義部門長も同席しました。気候変動に伴う山岳生態系および地域社会への影響についての研究力強化、連携強化が重要であるという認識を共有しました。