人生の集大成を支える老年看護の探究:看護学と医学の融合
本領域は、老年看護学を専門とする看護職2名と医師1名で構成されています。高齢者一人ひとりがその人らしく生きることを支えるため、老年医学と看護学の知見を融合させた教育・研究を行っています。
私たちの探究フィールドは、健康づくりのための生活習慣病予防から、病院・施設・在宅での医療・ケア、重症心不全やがんなどの疾患・障害を抱える患者と家族への支援、そして人生の最期に寄り添う終末期ケア(看取り)まで、高齢者の生活のあらゆる場面にわたっています。また、現場のスタッフがより良く働けるための「看護管理・看護教育」の視点からの研究や、多職種連携による「チーム医療(IPW)」の研究にも注力しています。
常に「現場のリアルな課題」と向き合い、医学的エビデンスと看護学の専門性を統合した温かい高齢者ケアのあり方を追求・創造しています。
會田 信子 教授(老年看護学):高齢者ケアの実践・技術向上と、現場スタッフの心理・社会的課題の解決を研究しています。また次世代育成を見据え、老年看護学の教育方法や多職種連携教育も探求。臨床と教育の両面からより良い老年看護の実現を目指します。
伊澤 淳 教授(循環器内科学):脳心血管病の病態と関連する要因を分析し、発症や病態の進行を予防する方法について研究するとともに、疫学的な分析に取り組んでいます。また、重症心不全に対する集学的治療のあり方について多面的に探求しています。
塚田 尚子 助教(老年看護学):独居がん患者や認知症患者に焦点を当て、終末期ケア・緩和ケアにおける療養上の課題と支援のあり方を検討しています。社会的孤立の視点を踏まえ、早期支援につながるアセスメントと実践モデルの構築を目指しています。
老年看護学領域では、学生さん一人ひとりが実習や生活の中で抱いた「なぜ?」という問いを大切にしています。
卒業研究では、高齢者の尊厳を守るケアから、医学的根拠に基づいた高度な実践、多職種連携のあり方に至るまで、自ら設定したテーマを深く考察することを目標にしています。看護の課題を自ら見出し、論理的に解決する力を養います。
研究手法は、既存の知見を科学的に統合し、将来の看護実践に直結するエビデンスを導き出せるよう、文献研究(システマティックレビューやメタアナリシスなど)を中心に取り組んでいます。
また、論文提出後には領域内で「卒論シェア会」を開催しています。この会は、学生と教員が井戸端会議のように自由に発言し合う『Buzz Session(バズ・セッション)』形式で行います。多様な視点の研究に触れることで、「こんな視点もあったのか!」「研究っておもしろい!」「研究と実践はこうつながるんだ!」といった新たな発見が生まれます。こうした活発な対話は、研究への興味を深め、将来の大学院進学への架け橋となっています。
下記に、最近の卒業研究の主なテーマを示します。
・男性介護者の介護負担に関する文献研究
・在宅で高齢者を看取った介護家族の悲嘆に関する文献研究
・デスカンファレンスの進め方と効果に関する文献研究
・ユマニチュードに関する文献研究
・地域で暮らす認知症の人の社会参加継続における困難要因
・パーキンソン病在宅療養者の家族介護者におけるファミリーレジリエンスの実態と影響要因
・在宅の認知症高齢者への園芸療法がBPSDにもたらす効果
・一般病棟の看護師のがん患者に対する看取り期の看護実践力と困難感の現状
・高血圧・糖尿病等の慢性疾患に関する文献研究
・脳心血管病や認知症など高齢期の疾患に関する文献研究
・食事や運動・睡眠等の生活習慣による健康障害に関する文献研究
・慢性心不全に随伴する諸課題に関する文献研究
学部4年次の「統合実習(老年領域)」で実施している『生活習慣予防外来』の様子です。将来の生活習慣病を防ぐため、学童期のお子さんと保護者の方へ多職種連携によるサポートを行っています。この写真は、個別のヒアリングに基づき栄養指導を行っている場面です。
老年看護学領域の大学院(修士課程・博士課程)では、複雑化する超高齢社会の課題に対し、高度な専門知識と科学的根拠を融合させた革新的なケアのあり方を追究しています。大学院生一人ひとりが臨床現場や地域社会で見出した重要な課題に対し、国内外の広範な文献検討(システマティックレビュー)や緻密な研究デザイン、多職種連携(IPW)の視点を取り入れながら、理論的かつ体系的にアプローチします。
老年看護学に関する多岐にわたる研究を通じて、科学的根拠に基づいた実践(Evidence-Based Practice; EBP)を推進し、老年期における健康課題の解決に寄与することを目指しています。また、研究成果は、学会発表や学術論文として世に問い、社会へ還元することを目指します。専門職としての確かな視座を養い、老年看護学の発展をリードする次世代の研究者・実践者を育成しています。
<修士論文>
長野県の介護老人保健施設に勤務する女性介護・看護職員の感情労働と自己効力感および職務継続意向の関係
人間ドックを受診する高齢者の保健行動と関連要因に関する研究
病院看護師のワーク・エンゲイジメントと性別・ジェンダー・パーソナリティとの関連性と影響要因
女性看護師のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)とジョブ・クラフティングに関する研究
慢性心不全高齢患者のセルフケアと老年的超越に関する研究
<博士論文>
急性期医療を担う病院における認知症看護実践に関する組織風土尺度の開発と信頼性・妥当性の検討
定年年齢前後の看護師の就業に関連した研究