ベッドマットレス下のセンサーで心不全リスクを検出 -呼吸安定性を指標としたモニタリング技術の可能性-(デジタルヘルスケア分野の国際学術誌 DIGITAL HEALTH に掲載)

 医学部保健学科理学療法学専攻の横川吉晴准教授と大学院博士課程2年の田丸哲朗さん (総合医理工学研究科 医学系専攻 保健学分野 老年保健学ユニット、指導教員:横川吉晴准教授)、そして株式会社Z-Worksとの共同研究成果が、デジタルヘルスケア分野の国際学術誌DIGITAL HEALTHに掲載されました。
 本研究では、圧電式非接触(非装着/ベッド下設置)センサー用いて心不全患者の夜間呼吸安定性を測定し、退院後1年間の再入院や死亡リスクを予測できる新たな指標を開発しました。
 心不全患者の在宅療養を支援する遠隔モニタリングが注目されていますが、心拍数や血圧といった従来の生体指標では、心不全特有の変化を十分に捉えられないという課題がありました。心不全では呼吸不安定化が予後不良の兆候とされており、呼吸安定性を非侵襲的に測定できる技術は心不全特異的なモニタリングに有用であると考えられます。
 共同研究チームは入院中の心不全患者のベッドマットレス下に圧電式センサーを設置し夜間の呼吸パターンを取得しました。これを周波数解析により評価し呼吸安定性指標 (Respiratory Rate Stability:RRS)という指標を算出しました。呼吸安定性が低い群 (Low RRS)と安定している群 (Normal RRS)に分類し、退院後1年間の死亡や再入院の発生を追跡した結果、安定性の低い群ではイベント発生までの期間が有意に短い結果でした (203日 vs 477日) 。この結果から、圧電式センサーによる呼吸解析が、心不全患者のリスク層別化に有効である可能性が示されました。
 本研究で用いたRRSは、非侵襲的に心不全患者のリスクを特定できる指標です。また、この技術は日本の介護現場で既に普及している圧電式センサーを活用しており、ベッドマットレス下に設置するだけで呼吸状態を継続的に測定できます。今後は、日常生活環境でのモニタリングを通じて、心不全の遠隔管理を支援する技術としての応用が期待されます。

 ※「非接触」は患者に非接触(非装着)を意味します。本センサーはベッド/マットレスに設置します。

掲載論文情報

著者名: Tetsuroh Tamaru, Makoto Ogawa, Yasuyuki Kurasawa, Minato Hayashi, Yoshiharu Yokokawa
論文名: Association between heart failure events and nighttime respiratory stability measured using a piezoelectric vibration sensor: A prospective observational study
掲載されたジャーナル: DIGITAL HEALTH
論文掲載URL: doi: 10.1177/20552076251388137

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図. RRS群別にみた死亡・再入院イベント発生までのKaplan-Meier曲線
p値はlog-rank検定結果
(RRS安定群に比べ低値群の生命予後が不良)