起き上がるときの血圧変化に着目!Sit-up試験で高齢者の血圧調節機能を見える化-老年医学の国際学術誌BMC Geriatricsに掲載-

 医学部保健学科理学療法学専攻の小宅一彰准教授及び横川吉晴准教授の研究成果が、老年医学の国際学術誌BMC Geriatricsに掲載されました。
 起立性低血圧は、心疾患や脳卒中など将来の重大な健康問題の発症リスクを高めることが知られています。小宅准教授は特殊な検査ベッドが不要かつ転倒リスクを最小化した起立性低血圧の評価手法"Sit-up試験"の開発研究に取り組んできました(関連論文)。Sit-up試験では、仰向けから端座位への起き上がるときに生じる血圧変化を測定します。本研究では、松本市四賀地区の地域在住高齢者102名を対象にSit-up試験を行い、起立性低血圧と血圧調節機能の関係および起立性低血圧と健康状態の関係を調査しました。
 対象者のうち34名(33%)がSit-up試験で起立性低血圧に該当しました。起立性低血圧を認めた高齢者の血圧調節機能について、以下の3つの特徴を発見しました(図1); ①仰向け姿勢での収縮期血圧が高く約半数が仰向け姿勢での高血圧(臥位高血圧)に該当する、②起き上がったときに収縮期血圧が大きく低下する、③起き上がったときの拡張期血圧(最低血圧)の上昇が小さい。これらの結果は、自律神経機能の不調や血管収縮機能の低下を反映していると考えられます。また、起立性低血圧を有する高齢者は、何らかの併存疾患を有する割合やフレイル・プレフレイル(加齢に関連する虚弱)に該当する割合が大きいことが明らかになりました(表1)。なお、臥位高血圧や座位高血圧の有無は、このような健康状態との関係を認めませんでした。
 本研究の結果は、高齢者の健康管理にSit-up試験を臨床応用するうえで有益な情報を提供すると考えられます。今後の研究では、将来の健康問題発生の予測や疾病予防にSit-up試験の結果を活用することの有効性を検証し、健康寿命の延伸に貢献するエビデンスを創出したいと考えています。

掲載論文情報

著者名: Kazuaki Oyake, Yoshiharu Yokokawa.
論文名: Sit-up Test for Assessing Impaired Blood Pressure Regulation in Community-Dwelling Older Adults: A Cross-Sectional Study
掲載されたジャーナル: BMC Geriatrics
論文掲載URL: doi: 10.1186/s12877-025-06456-w

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図1. Sit-up試験中の血圧変化
はそれぞれ起立性低血圧なし群と起立性低血圧あり群の平均値を示す。
エラーバーは95%信頼区間、*はBonferroni法でp < 0.05を示す。
表1. 起立性低血圧、臥位高血圧、座位高血圧と健康状態の関係を調べた多変量解析結果の一部202510_rigaku_researchpaper2.png
CI, confidence interval; OR, odds ratio; B, partial regression coefficient
ハイライトは統計的に有意な関係を認めた箇所を示す。