水循環社会の実現により
世界中の人々の「生活の質」
(QOL,Quality of Life)を向上

世界の水を取り巻く現状は?

人口爆発が進み、2050年には世界人口が
98億人超となる中で、豊かな生活環境を形成・
維持するために必要な水の確保が
困難な状況に直面しています。

1.
現在、世界で22億人*1が安全な飲料水にアクセスできず、
また農業用水が十分に確保されない等で
8億人以上*2が食糧不足にさらされています。
*1 「飲み水と衛生の進歩と格差」(ユニセフ・WHO共同監査報告書、2019年)
*2 「世界の食糧安全保障と栄養の現状」(国連FAO、2019年)

2.
経済発展に必要な工業用水や資源開発用水の確保に加えて、
資源産出時の排水処理や水汚染問題は国際的な環境問題であり、
循環して利用する新技術が求められています。

3.
世界的に見ると水が偏在化していますが、
それ以上に人口の偏在化も起こっており、
需要と供給のバランスが取れておらず
『水の危機』が問題視されています。

4.
水不足を補う水源として、海水・かん水等が注目されていますが、
海水・かん水の淡水化等の造水においては、
低コスト化、省エネ化が最大の課題となっています。

5.
かん水、海水等には有用資源も含まれており、
水圏有用資源の採取の重要性、国際競争が増しています。

6.
既存の人為的な水循環システムは自然循環を考慮していないので、
地域の水循環はその周囲の地域の水循環との相互関係の上に成り立つ
オープンシステムが必要です。

水に求められる質と量のバランス

水は人類にとって必要不可欠なものですが、
地球上の水のほとんどは海水や氷河等、
物性面や地理的な問題から人類が使用することが困難な水です。
人類が利用可能な淡水源(浅地下水・河川水等)は 約14万 km³(全体の 0.01%)に過ぎません。

出典: 平成30 年度水循環白書( 内閣官房水循環施策本部事務局)

人類の生活に必要な水として、
多くの国や地域で、水道水が飲用に耐える水質を保つことが要求されていますが、
同時に水道水は工業や農業用にも幅広く使われています。

飲用水では、より安全で良質の水への欲求が強く、
わずかな異臭や有害物質の混入が不安・不満の原因となります。

一方で、水の使用量の9割を占める農業用水や工業用水においては、
飲用水ほどの品質は必要とはなりません。

しかし、水の量の不足は依然深刻で、世界人口の増加により、
今後ますます水の確保が困難になると懸念されています。
2050年に世界人口が98億人を超えるとされ、人口増加や経済発展に伴う水需要の大幅な増大が
水の危機に拍車をかけると予想されています。
このため用途に合わせた水の量と質を確保することが重要となるのです。

こうした世界の水問題の解決に向け、信州大学アクア・イノベーション拠点は、
海水・排水・表流水など多様な水源から安全で適正な価格の水を
最小限の自然負荷で提供できる技術およびシステムの開発と、その事業化を目指しています。