イベント情報

《開催報告》アクア・イノベーション拠点(COI) 第9回シンポジウム ご参加ありがとうございました

アクア・イノベーション拠点として最終となる第9回シンポジウムを2021年11月30日(火)にオンライン開催しました。
国際シンポジウムとして開催した今回のテーマは『 環境世紀への飛躍 ~Towards the Environmental Era~ 』。
一般・関係者合わせて延べ600名、世界12か国からご参加いただき、9年間の研究成果、国内外での実証成果、今後の社会実装に向けた海外機関との連携について報告が行われました。

信州大学の中村宗一郎学長、提案機関である長野県の阿部守一知事(代読)の開会挨拶に続き、来賓として、文部科学省 科学技術・学術政策局 産業連携・地域振興課長の井上睦子氏、サウジアラビア王国大使館文化アタッシェのアリ・アルアナジ氏、COIガバニング委員長の小宮山宏氏よりご挨拶をいただきました。
挨拶では、コロナ禍で水の安全性についても注目が高まる中、信大COIの研究の社会実装に期待する声が多く聞かれました。
また今回は最終のシンポジウムということで、参画企業から、中津英司氏(日立製作所)、阿部晃一氏(東レ)、大西博之氏(LIXIL)が挨拶しました。
続いて大西真人プロジェクトリーダーから、プロジェクト9年間の研究活動について説明がありました。
学長_来賓3名_日立.jpg

◆成果報告(膜開発)
IMG_2595.JPGまず研究リーダーの遠藤守信特別栄誉教授より、カーボンナノチューブを用いた海水淡水化用のCNT/PA複合逆浸透(RO)膜の優れた特性と実証試験で得られた成果、新開発のセルロースナノファイバーを用いたCNF/PA複合RO膜の特長が紹介されました。
CNF/PA複合RO膜はPOU(Point of Use)用に主に家庭用浄水器に搭載されるもので、水道水圧レベルの超低圧で駆動でき、高い透水性・防汚性などの優れた機能を備えています。
国内での実証試験のほか、海外数か国で実証試験が行われており、今回のシンポジウムではタイ王国のキングモンクット工科大学のウィナッダ・ウォングウィリヤパン准教授から、タイでの実証試験の結果が報告されました。

続いて、日立製作所の北村光太郎氏からは、CNT/PA複合RO膜を用いた海水淡水化の社会実装に向け、製膜とモジュール開発、北九州市での実海水を用いた評価試験などの成果の報告がありました。
大学内設備での製膜技術の確立、開発膜の「汚れにくさ」という最大の特長から造水コスト・廃棄物量の大幅な削減が可能、などの成果が報告されました。

◆成果報告(東アフリカ水環境改善プロジェクト)
IMG_2616.JPG吉谷純一教授より、東アフリカにおける飲料水のフッ素汚染の実情とその改善に向けてのプロジェクトの取り組みが紹介されました。
手嶋勝弥教授からは結晶材料「信大クリスタル」の高度なフッ素除去性能とタンザニアでの浄水試験について、そして、この技術を用いた浄水スポット「swee(スウィー)」についての報告がありました。
また木村睦教授からは、飲料水に含まれるフッ素を新材料「MOF」を用いたセンサーで可視化し、それをスマートフォンで読み取ることで浄水の安全性を判定できるシステムについて報告が行われました。
このパートの最後には、活動の中心地であるタンザニアの共同研究者、ガッドフレイ・ムコンゴ氏から、信大COI研究チームが開発したフッ素除去装置・フッ素濃度検出器を使用した住民の声や、信大COIへの更なる期待が伝えられました。

◆COI-S成果報告
高橋桂子研究リーダーから、「過去から現在の水大循環の将来予測」と題して、過去と現在の地球上の水から将来の循環予測を行うシミュレーションモデルの構築について報告され、具体的なシミュレーション例が示されました。
今後は自然的、人為的介入が環境に及ぼす影響についての予測と施策を検討するとしています。

◆AxC-PF概況報告
2019年に発足した会員制のプラットフォーム「アクア・ネクサスカーボン-プラットフォーム(AxC-PF)」の上田新次郎会長からは、AxC-PFの加入状況、活動状況の報告が行われました。
進行中の共同研究の更なる進展と、新たな協働の可能性を探っていきたいとしています。

◆海外機関との連携「海水淡水化とグリーンサウジ」
サウジ大使館_イスラミック大学_遠藤先生.jpg海水による淡水生産量が世界最大規模のサウジアラビアで、現在、現地の研究機関と共同で海水淡水化実証試験を行っています。
今回のシンポジウムでは、サウジアラビアの研究協力者とオンラインで繋ぎ、サウジアラビアで大きな問題となっている水不足の現状とその解決策について報告いただきました。
まず、「グリーンサウジ構想」と巨大スマートシティ計画「NEOM」について、大使館文化アタッシェのアリ氏から報告いただきました。
続くタイフ大学のワラー・アルサニー教授、メディナ・イスラミック大学のアブドゥルラフマーン・アルカッサム教授からはそれぞれの大学の紹介と、信州大学との連携に期待することを伺いました。
また、現在、海水淡水化実証試験を現地で行っているサウジアラビア最大の海水淡水化公社(SWCC)のモハメド・アルナマジ氏からは、中東の海水淡水化事情の説明と、信州大学との研究連携への期待が語られました。

◆特別講演 東レ株式会社フェロー 栗原優様
 「急成長する海水淡水化と新たな技術課題への挑戦」
東レが商品化する逆浸透膜による脱塩システムの生みの親で、国の"Mega-ton Water System"プログラムの中心研究者だった栗原様より、世界の海水淡水化の現状とこれからの技術的課題について語られました。
一日当たりの造水量が40万トン以上の大規模プラントが続々と建設され、造水コストが低下しているという現状と、これからの海淡は省エネルギーと環境負荷の軽減がカギとなることなどが報告されました。


シンポジウムの総評として、COIを管轄する科学技術振興機構(JST)のCOI STREAMビジョン3ビジョナリーリーダー水野正明氏よりお言葉を頂きました。
このあと、東レの高橋弘造サブプロジェクトリーダー、信州大学の天野良彦副学長より挨拶があり、シンポジウムは閉会となりました。

今回で信大COIとしてのシンポジウムは最終となりましたが、過去最高となる延べ600名の方にご参加いただき、国際色豊かに開催することができました。
また、信大COIに期待し支えてきてくださった方々、これまでの研究活動でともに汗を流してきた方々から温かいお言葉をいただき、盛会に終了することができました。
ご協力いただいた皆様、
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
あと数か月で一旦区切りを迎えますが、これからも引き続き信大COIをよろしくお願い致します。