中山間地域データベースの構築
はじめに
中山間地域の再生・持続についての研究を行う上で、中山間地域に関する様々な情報(気象、地形、地質などの自然環境情報、動植物相、現存植生や伝統的作物や資源植物に関する生物資源情報、農林業による土地利用情報などなど)は、研究分野を問わず、必要不可欠とされる情報である。
本研究グループでは、これら多様な情報を収集し、系統的に整理するとともに、PCを用いてのデータベース構築を進めている。このことによって、本研究プロジェクトの推進において有意義なデータの効率的提供を可能とするばかりでなく、分野間の情報および研究成果の交流とこれを基盤とした新たな研究領域の展開においても効果を発揮するものと考えている。
結果と考察
データベースの構築状況
1)PCシステム
平成22年度において、データベースを作成するためのPCシステムの構築を行った。構成は以下の通りで、ルーターを介して学内LANに接続した。
*D-PC:2台(64ビット、27インチディスプレイ、ペンタブレット)
*NAS:2台(6T、2T)
*スキャナー:2台(A0大判スキャナー、A4フラットスキャナー)
*プリンター:1台(A3カラーレーザー)
なお、OSはWindows7、ソフトウエアーとして、MS-Office、ArcView(Spatial analyst込み)、Adobe Photoshop 、Adobe Illustrator等である。
2)データの収集と入力
■ 『日本の棚田百選』推薦地区(149地区)について
excel・access入力済みデータ
・所在地:都道府県、市町村(調査時)
・基礎諸元:平均勾配(1/x)、団地面積(ha)、耕作放棄面積(ha)、耕作放棄率(%)
・棚田の概況:枚数(枚)、水源(河川・ため池など)、事業導入の有無、法面構造(土羽・石積みなど)、開発起源(e.g.近世)
・営農の状況:対象農家数(戸)、10a当収量(kg/10a)、戸当り営農規模(ha/戸、枚/戸)
・維持・保全・利活用状況(地域によってはデータ無し)
・推薦項目(e.g.国土保全、景観)
・推薦理由
・「営農の状況」の「高付加価値農業」の項(地域によってはデータ無し)
■ 『傾斜地帯水田適正利用対策調査 成果図面集(長野県・静岡県)』
調査対象団地について、「位置情報(2.5万図上)」と「属性情報」の2つがある。
属性情報としては、
・社会経済条件ランク(2段階)
・農業条件ランク(4段階)
・国土保全機能ランク(2段階)
・傾斜(区分値:3段階)
・傾斜(測定値:%)
・耕作放棄率(30%を境に2段階)
・将来の展開方向に対する地元の意向(13種類)
・類型(10型+2オプション):利用の仕方による
の8項目についてのデータベース化を完了した。
位置情報については、調査対象団地のGISベクタデータ化の作業を完了した。今後の課題として、数値地図(国土地理院)の追加によって成果図(元データ)の再現を可能とすることと、面積、傾斜、分布などの解析方法について検討する。この位置情報に属性情報をリンクさせることにより、様々な「見える化」を可能とする。
なお、上記作業の「マニュアル」作成を行った。
■ 西春近地区の森林に関するデータ
伊那市西春近地区における森林情報として、以下のデータの収集と入力を行った。
・伊那市(旧伊那市)森林基本図の全図:H20年、1/5,000。GISで投影可。
・伊那市(旧伊那市)森林基本図林班図の全図:上記基本図に林班(枝番まで)を加えたもの。GISで投影可。一部ベクタデータ化済み。
・伊那市森林簿:林班(枝番)毎の標高、傾斜、林種、施業区分、層区分、面積、混交率、混交面積、林齢、樹高、材積、成長量など。一部は林班ベクタデータに付加済み。
・西春近周辺空中写真:計12枚。未オルソ化。
・伊那市都市計画図:1/2,500。
■ その他
*国土地理院発行数値地図25,000(地図画像)
20万図郭名で「富山」「高田」「高山」「長野」「飯田」「甲府」「豊橋」にあたる地域の1/25,000地形図をデジタルデータで所蔵。ArcGIS上の投影情報を付加済み。
*国土地理院発行数値地図25,000(空間データ基盤)
長野県内を市町村ごとに収録。1/25,000地形図より取得した基盤データ(50mおよび2秒メッシュ標高データ含む)。
今後の方針と計画
伊那市西春近地区の森林情報の操作画面例
昨年度から開始したデータベースのシステム構築は、主に棚田を中心として進め、本年度においては、例えば伊那市西春近における森林に関するデータベース化にも着手した。
今後とも、中山間地域に関する様々なデータ収集と蓄積を進めるとともに、本プロジェクトで行われている調査・研究データをも取り込んだデータベースへの発展を目指し、総合化の取り組みにおける有益なツールとして活用できるよう検討と作業を進めることを目指している。
研究者プロフィール

教員氏名 | 岡野 哲郎 |
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所属分野 | 農学部 森林科学科 山地環境保全学 |
兼担研究科・学部 | 大学院総合工学系研究科 |
所属学会 | 日本森林学会、日本生態学会、日本植物学会、植生学会、日本熱帯生態学会、森林立地学会、森林計画学会、日本農業気象学会、日本鱗翅学会 |
SOAR | 研究者総覧(SOAR)を見る |
他の研究 | 名勝・姨捨棚田の継続的耕作と文化的環境保全に関する研究 / 未利用資源の農畜林循環利用のシステム構築と実証的研究 / 農山村地域における景観計画作成手法の開発 / 農林業的土地利用形態と計画 / 山麓域集落の里地里山整備計画の構築と実施手法に関する実証的研究 / コアサイト設立のための準備 |

教員氏名 | 熊谷 真由子 |
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教員氏名 | 城田 徹央 |
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所属分野 | 農学部 プロジェクト研究推進拠点 |
所属学会 | 種生物学会、日本植物学会、形の科学会、日本森林学会、日本生態学会、日本根研究会 |
SOAR | 研究者総覧(SOAR)を見る |

教員氏名 | 内川 義行 |
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所属分野 | 農学部 森林科学科 農山村環境学 |
所属学会 | 農業農村工学会、農村計画学会 |
SOAR | 研究者総覧(SOAR)を見る |
他の研究 | 名勝・姨捨棚田の継続的耕作と文化的環境保全に関する研究 / 姨捨地区のため池~棚田における植生と雑草の管理~ / 姨捨における畦畔の持続的管理 / 農林業的土地利用形態と計画 / 山麓域集落の里地里山整備計画の構築と実施手法に関する実証的研究 / アルプス山麓域における土砂災害発生メカニズムと減災に関する研究 / コアサイト設立のための準備 |