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≪詳報≫アクア・イノベーション拠点・第四回シンポジウム 「大きなターゲットを目指し、分野融合の取り組みを」  2017年2月16日

 アクア・イノベーション拠点が主催する第4回シンポジウムが2月16日、信州大学長野(工学)キャンパス内の国際科学イノベーションセンター(AICS)で開かれ、信州大や県内外の企業関係者ら140人が出席しました。一般向けに拠点の成果を紹介するシンポジウムは毎年冬に開かれており、2014年2月のキックオフシンポジウムから数えて4回目となります。今回は本プロジェクトの発足にかかわった3人による特別、基調講演を通じ、間もなく折り返し点を迎えるプロジェクトに新たな示唆を得る目的で開かれました。

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箱山さん「夢や希望を明確に持ち、努力を」

 招待講演者として登壇したのは、リオ五輪のシンクロナイズドスイミング団体で銅メダルを獲得し、「水」の世界で大きな成果を挙げた箱山愛香さん(長野市)=写真=です。
 箱山さんは、リオ五輪での日本代表の演技のようすを映像で紹介し、さらに厳しい井村監督の指導や苦しい練習のエピソードも披露。「どんな状況でも質の高い、完璧な演技ができるようにするため、技術と体力、さらには精神力を鍛えられた。どんなに辛くても毎日全力で練習し、闘ってきた」とコメントし、「自分の好きなことを継続し、多くの人たちに支えられ、メダルまで獲得することができた。夢や希望を明確に持ち、それに向かって努力することは大事なこと」と呼びかけました。

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文科省、JST、長野県からの来賓あいさつ

 招待講演に続き、シンポジウムの本編が開幕。濱田州博学長の開会あいさつに続き、文部科学省の神代浩・科学技術・学術総括官、科学技術振興機構の住川雅晴・ビジョナリー・リーダー、長野県の沖村正博・ものづくり振興課長が、来賓としてそれぞれあいさつ。
 神代総括官は、実験室を見学したことについて、「革新的な水処理技術のコア技術となる複合膜の開発、社会実装に向けたモジュール化などの取り組みが、着実に進ちょくしていると実感することができ、大変心強く思っている」とコメント。さらに、シンポジウムについて「COIも中盤に差し掛かった段階で、改めて初心に立ち返り、次へ進む決意を固め、関係者の一致団結を図るよい機会だ」と述べました。
 普段から拠点を指導する住川・ビジョナリー・リーダーは「新しい膜の見通しが出来て、チーム全体の目が輝く拠点になったことは大きな成果」と評価したうえで、「拠点間の相互交流においても、膜の開発で世界に冠たる日本一の技術を持っているところをどんどん活用し、実用化を急速に、さらに大きな形での開発に取り組んでほしい」とコメントしました。
沖村・課長も「県は成果の普及など出口戦略の一角を担う。革新的な成果を生み出すことに加え、みなさまのご健勝をお祈りしたい」と述べました。

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土屋・文科省顧問「分野融合の取り組みをより積極的に」

 これらのあいさつに続き、本プロジェクトの発足にかかわった文部科学省の土屋定之・顧問(元事務次官)、科学技術振興機構の中村道治・顧問(前理事長)、東レ株式会社の阿部晃一・副社長がそれぞれ講演しました。
 土屋顧問は、自らがCOIプログラムを発案した背景に触れたうえで、信大の取り組みについて「革新的な膜とその後の開発について、企業、大学が連携し、大きなターゲットを目指した取り組みの準備が進んでいることを確認し、安心し、喜んでいる」とコメント。さらに、「社会システムの変革という大きなターゲットを目指し、大学の他の部局、海外、企業との連携による、分野融合の取り組みをより積極的に進めて欲しい」と語りました。

中村・JST顧問「さまざまな用途に対応できるプロジェクトに」

 中村顧問は「わが国の持続的発展に向けたCOIの役割」と題して基調講演。国連が持続可能な開発のゴールとして掲げた17項目(SDGs)の話題を取り上げ、「全国のCOI拠点は、それぞれのテーマがどのゴールに相当するのか、明らかにしておくべき」と提言。さらに、信州大COIについて「水についてこれだけ成果を挙げ始めており、大変楽しみ。大きな社会的価値を生み、ぜひ我が国と世界の持続的な発展に貢献してほしい」「材料、モジュール、プラントと三つのレイヤーがあり、プロジェクトの出口はいろいろ想定される。プロジェクトの成果が最大化できるようこれからの進め方を工夫して欲しい」などと述べました。

阿部・東レ副社長「革新的なRO膜、ジャンプに期待」

 阿部副社長は「日本流イノベーションの創出」と題し、東レの研究・技術開発戦略を中心に、「研究者の自由裁量」「超継続」「分断されていない研究・技術開発組織」「産学官連携研究の推進」などの特長について解説。そのうえで、カーボン・ナノチューブ(CNT)を通じた遠藤守信特別特任教授との交流や、逆浸透膜(RO)における研究・技術開発の歴史を紹介し、「大学に挑戦的な研究、探索的な研究が求められる中、信州大COIは、ナノカーボンの材料と有機物を組み合わせ、革新的な膜を作ることに取り組んでいる。(ソフトDLC膜など)有機物の延長線上ではない、不連続な特性、ジャンプを期待している」と語りました。

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プロジェクトの進ちょく報告 「エネルギーコストの3割削減を目指す」(上田PL)

 また後半には、プロジェクトリーダーの上田新次郎・日立製作所産業水統括本部・技術最高顧問、COI研究リーダーの遠藤守信・特別特任教授、COI-S研究リーダーの高橋桂子・海洋研究開発機構地球情報基盤センター長による進ちょく報告も行われました。
 上田プロジェクトリーダーは、ナノカーボンを使ったRO膜による海水淡水化の効果について、「高速透水性による造水量増と耐ファウリング性による交換サイクルの長期化で、エネルギーコストを3割削減することを目指す。これが出来れば業界でも大きなインパクトを生むはずだ」と主張。遠藤COI研究リーダーも、ナノカーボンを用いたRO膜の研究・開発の最前線について報告し、「フェーズ1で取り組んだ、ゼロから1を生みだす段階を乗り越え、今は頭を切り替えて、1からNを生む取り組みに傾注している。バックキャスティングにより、よい膜を作り、農業や工業、水が原因で病気になる途上国の現状を変えるために貢献していきたい」と語りました。また、高橋COI-S研究リーダーは、大気、陸、海、地下水を統合した水循環のシミュレーションモデルを構築したことを報告し、「今後はいくつかの土地に展開し、湧水を生かした提案など、都市計画を科学的に作ることなどで社会実装の形を探っていきたい」と述べました。

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 会場には、拠点活動の成果を紹介するポスターも展示され、研究者が出席者と交流する姿も見られました。