平成30年度ものづくり・ことづくり演習II@チュラロンコン大学、タイ

活動報告

8月6日~8月11日の日程で、タイのチュラロンコン大学において、リーディングプログラム2年次の必修科目である『ものづくり・ことづくり演習II』として、CU-Shinshu Material Technology and Cultural Workshop(合同合宿)を行いました。今年度で4回目となり、10名のプログラム履修生が、チュラロンコン大学の教員および学生と学術的・文化的交流を深めました。
双方の大学の研究紹介、ポスターセッションを行い、盛んな意見交換が行われました。また、文化交流のセッションでは、プログラム履修生による出身国の紹介やタイの文化発表もあり、双方の文化を理解するよい機会となりました。今年度は、体験型の施設において、タイの人々の文化と生活を学ぶプログラムにも参加しました。

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8月10日には、タイにあるTEIJIN POLYESTER (THAILAND) LIMITEDにおいて、工場研修を行いました。普段見ることのできない工場内を見学させていただき、質疑応答の時間も予定より長くご対応くださいました。実際にタイで働いていらっしゃる信州大学繊維学部OBも駆けつけてくださり、グローバルで活躍するためには、どんな能力が必要であるか、実際に海外に赴任してどのような仕事をしているのか、どのように現地の人々と働いているのか、その課題や意識などについて、丁寧にお答えくださいました。お忙しいところ、実際の工場の稼動の様子をたくさん見学させていただいただけでなく、意見交換にもご対応くださり、TEIJIN POLYESTER (THAILAND) LIMITEDの皆様には感謝申し上げます。

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学生の報告書より------------------------------------------------------------------------------
参加報告 プログラム2年 藤原 聖也
1. 参加の目的
 日本のものづくりは、東南アジア諸国連合の国々との関係を抜きにしては考えられない状況にある。これからものづくりの世界で、これらの国々との関係がさらに密接になっていくと思われる。そこで、この合宿では、東南アジア諸国の学生と共同でものづくりに関係するいくつかの課題に取り組み、こうした国々の学生とのチームワーキングスキルの向上を目指す。合同合宿の相手国としては、多くの日本企業が工場をもちものづくりを行っているタイ国を選び、その中でトップに位置するチュラロンコン大学を合同合宿先として選択した。合宿では、文化的背景と使用言語を異にする信州大学リーディング大学院学生とチュラロンコン大学院学生が合同でワークショップを開催する。ワークショップでは、両大学チームからの研究プレゼンテーションをもとに、関連する話題について議論する。また、両大学学生の文化交流を通して、学生間の交流を進める。さらに、TEIJIN POLYESTER (THAILAND) LIMITEDを訪問し、グローバル展開している企業の現場を見学する。この合宿を通して、将来、東南アジア諸国で活躍できる能力の向上も目指す。
2. 会議に参加した結果得られた課題
会議に参加して得られた課題として、以前としてある英語のコミュニケーション能力の不足と、タイの文化・生活に関する理解不足が挙げられる。 英語能力については、昨年オーストリアに研修に行った時と比較すれば現地の学生・先生方と円滑にコミュニケーションができるようになったと感じた。また自分の研究を英語にて説明する約90分のポスターセッションにおいても、ある程度は自分の研究について説明することができた。しかしながら、説明途中で必要な英単語が出てこなかった、英語での説明が滞ってしまった、ということが多々あった。また、本来ポスターセッションでは自分の研究を完結に説明する必要があるが、英語で話すことばかりに集中して冗長に話してしまうこともあった。こうしたことから、自分には未だ英語のコミュニケーション能力が不足しており、また英語での発表経験の不足も課題として考えられる。今後もリーディングプログラムの英語のカリキュラムや、英語論文の執筆、TOEICの勉強等を通じて、更に英語能力のスキルアップをしていく必要があると感じた。 タイの文化・生活に関する理解不足については、事前にある程度タイの生活文化について調べた上で今回の研修に臨んだが、現地においてはそれらの事前知識はごく一部のことであり、実際に行って体験して見なければ分からないことが多々あった。バンコク市内のビル群は日本の都市と遜色ない程度に発展している一方で、大通りを一本入れば出店や古い建物が複数立ち並んでいた。またバンコク市内をバスで1時間ほど離れると、そこは地平線すら見えるほど農地以外何もない場所が広がっていた。生活環境についても、日本のセブンイレブンが街中にあり、また外国企業の店も多く立ち並んでいた。また車のほとんどは日本車で、日本企業の浸透ぶりに驚いた。物価についても出店の料理が20バーツ(60円程度)であったのに、その向かいに店を構え1つが200バーツ(600円程度)であり、通りを挟んで物価が全く異なっていた。こうした1つ1つの生活文化の違いにとても驚かされ、またタイの魅力にも気づくことができた。リーディングプログラムに所属している以上、他国の生活文化に対する理解は非常に重要なものであると考えられる。こうした意味で、今回の経験は自分の他国に対する知識不足を痛感する機会になったと感じる。
3. 会議に参加した結果得られた成果
今回の研修において得られた成果として、TEIJIN POLYESTER (THAILAND) LIMITEDで勤務されている日本人技術者の方から海外赴任する上で必要な心構えをお話していただいたことが挙げられる。お話いただいたことに共通していたのは、"自分の技術を現地の方に伝え、自分の必要性を理解してもらうこと"、"なぜ工場の標語などが必要なのかを説明してわかってもらうこと"の2つが重要であるということだった。 海外に赴任する上で現地の人と円滑にコミュニケーションを取ることが最も重要なことではないかと考えていたが、技術者の方より、それよりも自分の技術をしっかりと伝えられることの方がさらに重要であるとお話いただいた。技術者が海外へ赴任するのであれば、その仕事は工場の管理だけではなく、その技術を伝えることであると、その時気づきハッとした。また、技術を伝えるためには、自分の持っている技術を説明できる力と、説明できるに足る知識を持っておく必要があると感じた。 また工場見学においては、日本の工場と同様にいくつかの標語らしきものが掲げられているのが見受けられた。その標語はタイ語であったため読むことはできなかったのだが、後でお話を聞いたところ、日本の工場でも多く用いられている5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)であるとのことだった。こうした標語が実際に日本以外でも受け入れられるのか疑問であったのだが、質問セッションにおいて、その標語にかかれていることの必要性を理解してもらうことで、その標語は理解し実践してもらえるとお話いただいた。例えば、油が床にこぼれていれば、転倒等により事故が起こってしまう、など標語の必要性をわかって貰えれば、国を問わずその標語の内容は自主的に実践されるものであるとのことだった。 全体を通じて、"現地の方に必要性を理解してもらうこと"が一番重要なことであると感じた。自分が将来的に企業に就職した際には、確実に海外へ赴任することがあると考えられる。こうした中で、今回実際に海外赴任されている技術者の方に経験や心構えをお話いただいたことは、非常に貴重な機会であり、将来に渡り心にとどめておくべきことだったと感じた。
4. 成果を今後の研究にどのように活用するか
今回のタイでの研修を通じて、タイにおいて日本の文化・製品がかなり浸透していることを感じ、またTEIJIN POLYESTER (THAILAND) LIMITEDの工場を見学させていただいたことで、日本のものづくりにおけるタイを始めとした東南アジア諸国の重要性を肌で感じることができた。日本とタイの関係は今後も続いていくものであり、また日本企業に就職すればいずれタイを訪れると考えられる。正直なところ、この研修に行く前までは、海外赴任に対してネガティブな印象を持っていた。親しんだ日本を離れることに対する忌避感や、海外で赴任して仕事を全うできるのかということが非常に不安に感じられた。しかし今回の研修を通じて、発展したタイの様子や、タイの魅力、また海外に技術者として赴任する意味を知ることができた。これらの経験は、タイを始めとした東南アジア諸国に対する海外赴任のネガティブなイメージを払拭するのに十分であったと感じる。また、自分の中で海外赴任に対するハードルが非常に下がったように感じた。こうした心持ちの変化は、グローバルに活躍できる能力を身につけようとしている自分にとって非常に良いモチベーションになった。

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