人間の脳は、神経細胞(ニューロン)とそれを支える膠細胞(グリア)から成り立ち、ニューロンはシナプスを介してネットワークを広げ、情報の伝達を行っています。私たちは、シナプスで働く分子(遺伝子とタンパク質)の機能を研究することにより、脳が働くメカニズムの解明を目指しています。また、これらの機能が破綻することによって引き起こされる精神・神経疾患の解明を目指して研究しています。
Neurexin およびNeuroligin はシナプスに局在する細胞接着因子で、Neurexin はシナプス前終末、Neuroligin はシナプス後部にそれぞれ局在し、カルシウム依存的に両者が結合することにより、シナプス形成の特異性および機能獲得に寄与していると考えられています。近年、NeurexinおよびNeuroligin 、さらにはこれらと細胞内で相互作用する分子の遺伝子異常が自閉症をはじめとする神経発達障害の患者から見つかったことから、Neurexin/Neuroligin によって維持されるシナプス機能の破綻が、これらの疾患の病態と関係しているのではないかと考えられるようになってきました。
私たちの研究室では、Neurexin、Neuroligin の各種アイソフォームを網羅する遺伝子改変マウスを作成し、これらのシナプス機能を生化学的、薬理学的、電気生理学的、形態学的手法を用いて解析すると共に疾患関連行動を解析し、これら疾患との因果関係を調べています。
リンク:
・発達障害について
・自閉症について
・ADHDについて
CASKは、MAGUK(Membrane Associated Gualylate Kinase)ファミリーに属するシナプス足場タンパク質で、Neurexinの細胞内領域と結合することが知られています。CASKの遺伝子異常も、自閉症やてんかん、知的障害などの神経発達障害の患者から多数見つかっており、これらとの関連が指摘されています。近年CASKは、MICPCH(Microcephaly
with Pontine and Cerebellar Hypoplasia)症候群の原因遺伝子であることが判明し、注目されるようになりました。CASK遺伝子はX染色体上にあり、CASKが完全欠損の状態では男性は生まれてこないため、MICPCH症候群の患者の多くは女性です。MICPCH症候群の患者は、小脳の低形成に加え、広汎な神経発達障害の症状を呈します。CASKの遺伝子異常によって引き起こされるこれら疾患は、わが国ではCASK異常症として定義され、小児慢性特定疾病に指定されています。私たちの研究室では、CASKのノックアウトマウスをCASK異常症の疾患モデルとして研究を行っています。
IQSEC2は、シナプスに局在するADPリボシル化因子(Arf6)のグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)で、シナプス後膜のカルシウムの流入に反応してArf6を活性化し、興奮性シナプス後部でAMPA受容体の輸送を修飾することによりシナプス機能を調節していると考えられています。IQSEC2の遺伝子異常も、自閉症、知的障害、てんかんの患者から発見されており、神経発達障害との関連が指摘されています。私たちの研究室では、IQSEC2のノックアウトマウスをこれらの疾患のモデルとして研究を行っています。
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