エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクトは、2014年3月をもって終了いたしました。
長きにわたり、ご支援、ご協力を賜りありがとうございました。

研究内容

地域卓越研究室では、革新的エキゾチックナノカーボン(以下、ENCs)によるセルレーションナノアロイの理論研究に加えて開発材料の基礎評価、耐久評価、基本試作評価、および応用開発、製品適合性試験を実施し、合格したものについては実用化製品評価やマーケティングまで実施しています。

また、ENC研究開発コンソーシアムにて、参画企業間のオープンイノベーションにて前述の材料開発、製品適合性評価、製品評価(マーケティング)を実施し、迅速かつ広範に実用化展開を行っています。

革新的ENCsアロイの理論研究と材料開発

ENCsによるナノ空間制御 ENCsによるナノ空間制御

本研究では基礎研究・理論解明から革新的材料の開発に取り組んでいます。主な研究項目と詳細は以下の通りです。

①アルミニウムアロイの研究開発・・・物性アップとバランス調整(引張強さ、耐力、伸びのバランス調整)の実現により、従来材料からの差別化を目指すとともに、加工性の大幅向上に挑戦しています。

◆参考文献:T.Noguchi, A.Magario,S.Fukazawa,S.Shimizu, J.Beppu, M.Seki, “CarbonNanotube/Aluminum Composites with Uniform Dispersion”, Materials Transactions, 45 , p.602-604 (2004)

②樹脂アロイの研究開発・・・オレフィン系樹脂の製品適合性評価(自動車用部材)、新材料開発(引張強さ、降伏強さ、弾性率の向上)、フッ素系樹脂の新材料開発を実施しています。

◆参考文献:S.INUKAI, Ken-ishi. Niihara, Hiroyuki. UEKI, A. MAGARIO, Toru. NOGUCHI, Eisuke. YAMADA, S. INAGAKI, M. ENDO, “Preparation and Properties of Multiwall Carbon Nanotubes / Polystyrene-block- poly- butadiene-block-polystyrene composites”, ACS,Ind.Eng.Chem.Res, DOI: 10.1021/ie102380t

③セラミックスアロイの研究開発・・・強じん性SiC材料(破壊じん性値、曲げ強さ大幅向上)の材料開発を行っています。

ENCsエラストマーアロイの応用開発

ENCsエラストマーアロイ・セルレーション複合材のTEM画像、モデル、革新的性能 ENCsエラストマーアロイ・セルレーション複合材のTEM画像、モデル、革新的性能

エラストマーアロイの研究では、実用化の基盤である基礎研究や理論解明から、実用化材料の研究開発、製品化評価(実機耐久試験など)に加えてマーケティング調査まで、サイエンス→テクノロジー→エンジニアリング→インダストリーのフェーズを横断的に同時並行で実施しています。主な研究テーマは以下の通りです。

①基礎材料研究開発Ⅰ・・・ENCs複合エラストマーのセル・タイ理論の解明、新ENCsセルレーションの研究(新材料開発)、新ポリマーとの融合検討

基礎材料研究開発Ⅱ・・・TerronesGとの協業で、グラフェン系ENCsナノアロイの材料開発および実用化研究を行っています。

基礎材料研究開発Ⅲ・・・遠藤G、金子G、AjayanGとも協業で新規な素材の創出を目指して研究しています。

②スーパーシール(シーラント)の実用化・・・実用化材料開発、製品適合性評価、マーケティング調査まで実施しており、主な用途として地下資源探査装置用、配管機材用、燃料電池用など。

③タイヤ用コンパウンド開発

④新免震ゴム開発

◆参考文献:
①Noguchi,T., Inukai,S., Ueki,H.,Magario,A, Endo,M.: SAE Tech. Pap. Ser. (Soc. Automot. Eng), Page.5P(2009)
②Fei Deng, Masaei Ito, Toru Noguchi, L.F.Wang, Hiroyuki Ueki, Ken-ichi Niihara, Y.A.Kim, Morinobu Endo, Q.S.Zheng, “Elucidation of Reinforcing Mechanism in Carbon Nanotube /Rubber Nanocomposite”, ACS nano, 5(2011)3858-3866, (10.1021/nn200201u)

ENCsエラストマーアロイ(シーラント)の実用化実績

地下資源探査:260℃, 300MPaの革新的耐久性を有する超高性能シール材 地下資源探査:260℃, 300MPaの革新的耐久性を有する超高性能シール材

流体制御バルブ:物理的特性(磨耗耐久性)と化学的特性(耐薬品性)の双方の性能を向上させるシール材 流体制御バルブ:物理的特性(磨耗耐久性)と化学的特性(耐薬品性)の双方の性能を向上させるシール材

①地下資源探査用スタティックシール開発
表面構造を制御したCNTセルレーションによって、260℃, 300MPaの革新的耐久性を有する超高性能ゴムシール材の開発に成功しました。本材料は実際の油井での使用条件下(高温のみならず低温、ガス、液体など超過酷環境下)で機能するスーパーシール材です。この新材料を用い、実際に海外で10箇所以上の海底油田において実証実験を実施し、従来のシール材では不可能であった目標性能の達成を確認しています。これらの成功は石油資源、エネルギー問題を大きく緩和するもので、石油資源をほとんど保有しない日本にとって、石油掘削技術における貢献は資源の供給に寄与します。現行材料でも260℃で機能する静的シール材は存在しますが、海底油田など低温、また、酸、アルカリ、H2Sなど液体、またはガスに対する超高耐性も求められる環境下では、十分なシール性を確保できず、石油探査・生産設備などを損傷してしまうなどシール機能に問題がありました。高温~低温、高圧下で機能する新開発の超高性能ゴムシール材により、可採埋蔵量を現在の約2倍に拡大させることが可能と考えられています。

◆参考文献:M.Endo, T.Noguchi, M.Ito, K.Takeuchi, T.Hayashi, Y.A.Kim, T.Wanibuchi, H.Jinnai, M.Terrones, and M.S.Dresselhaus, “Extreme-Performance Rubber Nanocomposites for probing and Excavating Deep Oil Resources Using Multi-Walled Carbon Nanotubes”, Advanced Functional Materials 18, 3403(2008)

②流体制御バタフライバルブ用シール材開発
従来は二律背反であったエラストマー特性(化学特性と物理特性)において、開発したENCs複合セルレーションエラストマーは、双方の特性とも大幅に向上することを発見しました。具体的には、エラストマーの耐久性(引裂き強度)や剛性向上に加えて、耐薬品性(耐塩素性)や耐油性の改善する、従来法では不可能な新機能です。現時点では、エキゾチックナノカーボン・セルレーション技術により、強固なマトリックス保持(物理的作用)と、MWCNT-エラストマー界面における作用(化学的作用)によって、補強と劣化抑制が両立するものと推測しており、現在ではメカニズム解明~実用化評価までの研究を実施中しています。これらの研究成果を応用することで、最終製品の耐久性や耐薬品性を飛躍的に高めることが可能になります。

◆参考文献:M. Endo; K.Takeuchi; T.Noguchi; Y. Asano; Y. A.Kim; T. Hayashi; H. Ueki; S.Iinou. "High Performance Rubber Sealant for Preventing Water Leaks" ACS, Ind. Eng. Chem. Res., 2010, 49 (20), 9798.

研究者・研究チーム紹介