リウマチ・膠原病内科

診療科長ご挨拶

岸田 大

長野県全域のリウマチ・膠原病診療の
発展を目指して

リウマチ・膠原病内科 診療科長
岸田 大

 膠原病とは、本来は自分の体を守るはずの免疫に異常が起き、全身のさまざまな臓器に炎症を引き起こす病気の総称(共通の特徴を持つ複数の病気をまとめた呼び名です)です。『リウマチ性疾患』あるいは『全身性自己免疫疾患』とも呼ばれることがあり、発熱や倦怠感などの全身症状、関節痛や皮膚の発疹などの局所症状に加え、肺や心臓、腎臓、消化管、神経など、体のさまざまな臓器に炎症を起こす可能性のある病気です。

 この20年ほどの間に、膠原病の治療は大きく様変わりしました。たとえば関節リウマチでは、長期にわたって炎症が続いてしまうと関節の破壊や変形を生じてしまいますが、現在ではメトトレキサートなどの抗リウマチ薬や、生物学的製剤、JAK阻害薬などの登場によって多くの患者さんが“寛解”(腫れや痛みがない状態)が達成できるようになりました。また、多くの膠原病の治療では副腎皮質ステロイド(いわゆるステロイド薬)が使われます。とても効果的な薬ですが、長く使い続けることで動脈硬化や骨粗鬆症などの副作用が出やすくなることが問題となっています。最近では、免疫抑制剤を上手に組み合わせたり、新しいメカニズムの薬が開発されたりしており、ステロイドの使用をできるだけ少なくするための治療の方法も日々開発されています。

 また、発熱や腹痛、関節痛など全身の炎症を繰り返すことを特徴とする、『自己炎症性疾患』の概念が知られるようになりました。原因となる遺伝子異常を背景に多くの場合は小児期に発症しますが、成人になってから発症した場合は診断までに長い期間を要することも珍しくありません。当科では代表的な自己炎症性疾患である家族性地中海熱の遺伝学的検査を全国に先駆けて行い、全国各地の患者さんの診断、病気の普及、日本発のデータ構築に貢献してきました。

 当科は2001年に開設された、比較的歴史の浅い診療科です。私が入局した当初のメンバーは、わずか数名でした。それから20年以上が経ち、先輩方の懸命な努力と、頼もしい後輩達の頑張りに支えられ、長野県内の各地域でリウマチ・膠原病診療が受けられる体制が少しずつ整ってきました。しかし、まだまだ十分ではありません。自宅から遠く離れた医療機関に時間をかけて通院している患者さんも多くおられます。私たちは県内各地の先生方と連携しながら、長野県全域で誰もが安心してリウマチ・膠原病診療を受けられる体制づくりに、今後も力を注いでまいります。

 膠原病は、その性質上すぐに完治する病気ではなく、日々の生活の中で“うまく付き合っていく”ことが大切になります。しかし治療の進歩により、必要最小限の薬で安定した状態を保ち、普段どおりの生活を送ることは、十分に実現可能な目標です。医療は日々進歩しています。私たちも常に最新の知識と技術を取り入れながら、丁寧な問診・診察・説明を通して、世界水準の治療を皆さまに提供していく所存です。

診療紹介

当科では膠原病全般の診療を行っております。対象となる主な病気には以下のものがあります。

  • 関節リウマチと類縁疾患
    • 関節リウマチ
    • 悪性関節リウマチ
    • リウマチ性多発筋痛症
    • RS3PE症候群
    • 回帰性リウマチ など
  • 全身性自己免疫疾患
    • 全身性エリテマトーデス
    • 全身性強皮症
    • 皮膚筋炎などの炎症性筋疾患
    • 混合性結合組織病
    • シェーグレン症候群
    • 抗リン脂質抗体症候群 など
  • 全身性血管炎
    • 高安動脈炎
    • 巨細胞性動脈炎
    • 結節性多発動脈炎
    • 顕微鏡的多発血管炎
    • 多発血管炎性肉芽腫症
    • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 など
  • 自己炎症性疾患
    • 家族性地中海熱
    • TNF受容体関連周期性症候群
    • VEXAS症候群
    • A20ハプロ不全症
    • ブラウ症候群
    • PFAPA症候群 など
  • 脊椎関節炎と類縁疾患
    • 強直性脊椎炎
    • 乾癬性関節炎
    • 反応性関節炎
    • SAPHO症候群 など
  • その他の全身性炎症性疾患
    • 成人発症スチル病
    • ベーチェット病
    • 再発性多発軟骨炎
    • 好酸球性筋膜炎
    • IgG4関連疾患
    • 多中心性キャッスルマン病 など

特徴的な医療または高度な医療

  • 関節リウマチおよび関連臓器障害に対する生物学的製剤および分子標的製剤による治療
  • 炎症性筋疾患に対する、筋生検を含めた早期診断と難治性病態に対する治療
  • 全身性血管炎に関連する神経・筋障害の早期診断と治療
  • 難治性膠原病に対する免疫抑制薬併用療法
  • 家族性地中海熱をはじめとする自己炎症性疾患の遺伝子診断と治療

自己免疫障害メカニズム解明への挑戦~最先端医療の提供を目指して~