研究テーマ6

L型Ca2+チャネル阻害薬を用いたQT延長症候群の治療法の研究

心筋細胞のL型Ca2+チャネルは,心筋の興奮収縮連関の要であると同時に,心筋細胞の長い活動電位を作り出す役割を果たしています。したがって,L型Ca2+チャネルの機能異常は,種々の不整脈を引き起こします。我々は,心室筋活動電位中でのL型Ca2+チャネルの機能調節を研究しており,(1)L型Ca2+チャネル電流は,活動電位1-2相では不活性化により,第3相では脱活性化により減衰する。(2)このため,QT延長症候群などで先天的または後天的異常で外向きK+電流が減少すると,第3相におけるL型Ca2+チャネル電流の消退が障害され,活動電位の延長と早期後脱分極が発生することなどを見出しました。さらにこれらの結果を基にした研究では,10-100 nMのニフェジピンが,正常の活動電位の幅をほとんど変化させず,早期後脱分極を有する延長した活動電位の幅を効果的に短縮させることが分かりました。このことは,低濃度のジヒドロピリジン系薬物が,活動電位延長に伴う心室筋の再分極不均一性を補正する抗不整脈薬として使用できる可能性を示しています。(Yamada M., et al. (2008) J. Membr. Biol. 222: 151-166)

L型Ca2+チャネル阻害薬ニフェジピンが,コントロールの活動電位と,E4031および293Bを投与して延長した活動電位に対する効果を検討した(モルモット心室筋)。低濃度のニフェジピンは,延長した活動電位をコントロールの活動電位より有意に強く短縮させた。したがって低濃度のニフェジピンは,活動電位延長に伴う心室筋の再分極不均一性を補正する可能性がある。