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子宮筋腫

Q-子宮筋腫とは何ですか?

子宮筋腫とは、子宮の中や、その周りの筋肉(平滑筋)にできる腫瘍(こぶ)のことです。30歳以上の女性の30pp~40%に存在すると言われるほど、高頻度に見られる病気で、子宮と女性骨盤に発生する腫瘍の中でもっとも頻度の高いものです。

年齢的には40歳代の女性に多く、筋腫の多くには月経の終了(閉経)とともに小さくなっていきます。55歳以上や18歳未満の女性にはあまり見られません。
つまり、子宮筋腫は性成熟期に発生し、月経が始まる前の若い女性にはほとんど発生しないことと、閉経になると筋腫が小さくなることから、筋腫の発育には卵巣から分泌されるホルモン(卵巣性ステロイド)が深く関わっていると考えられています。
子宮筋腫は、子宮の中のいろいろな場所にでき、できる場所によって、症状が異なります。

Q-どのような症状があるのでしょうか?

A. 経時における多量の出血とそれに続発する貧血
B. 月経痛
C. 不正性器出血(月経ではないのに出血がある)
D. 稀に、筋腫が膀胱や直腸を圧迫することによって頻尿や便秘がおこることもあります。
E. 筋腫によって子宮内部が変形したり、卵管を狭めてしまうことによって精子の移動が阻まれることがあり、これが不妊の原因であると考えられる場合も治療を行います。

Q-子宮筋腫と思われる症状があります。どんな診察を受けるのでしょうか? 痛みを伴う検査も行われるのでしょうか?

診察、検査は次のような流れで行われます。検査による痛みはほとんどありません。
<step-1 来院>
先に述べた症状があり、産婦人科を来院する。
<step-2 問診・外診>
医師が患者さんの症状を聞きます。貧血の有無を確認。
<step-3 内診>
内診台で骨盤内の様子を見ます。「筋腫」と考えられる腫瘤(こぶ)があるかを診ます。
<step-4 画像などによるより確実な診断>
A.超音波診断
B.MRI(磁気共鳴画像)
C.血液検査
(採血して血液の成分を検査します。貧血や、筋腫の影響で増加する酵素の値を調べます。)

Q-検査の結果、子宮筋腫と診断されました。手術を受けなければなりませんか?また、手術にはどのようなものがありますか?

腫瘍(こぶ)の種類や大きさ、また患者さんの状態によって治療方針は異なります。
<step-5 治療方針の決定>
A.良性の筋腫である可能性が高い場合(基本的に筋腫は良性です)
a.(腫瘍の大きさが)こぶし大以下で症状がない場合
医師の指示(例えば半年ごと)の定期検診で経過を観察
b.こぶし大以下で症状がある、またはこぶし大以上
《薬物療法》患者さんの年齢が50歳以上で、閉経が遠くないと考えられる場合や、個人的事情によりすぐに手術が行えない場合などに行われます。筋腫結節を消失させることはできないため、あくまでも一時的な治療法であると言えます。
《手術療法》手術方法は主に次の2種類があります。
◇単純子宮全摘除術
筋腫の最終的な治療手段であり、筋腫を含めて子宮全体を摘出します。この方法では、筋腫が再発することはありません。月経はなくなりますが、膣はそのままであり、性生活への影響はほとんどありません。
◇筋腫核出術
筋腫のみを取り除き、子宮を温存する手術です。
手術後、妊娠や出産が望めますが、わずかに筋腫が残ることがあり、これらが後に増大する可能性があります。実際、この手術を受けた患者さんのうち、4人に1人は数年後に再手術を受けています。

B.悪性の腫瘍である可能性がある場合
《手術療法(子宮全摘除術)》

Q 妊娠中、筋腫が発見されました。赤ちゃんは大丈夫でしょうか?手術をしなければなりませんか?

妊娠により筋腫の大きさが急速に増大する場合が多くあります。しかし、大部分の場合筋腫と胎児は共存し、無事に妊娠末期まで至ります。
妊娠中の筋腫に対しては、手術を行わず、保存的に経過観察を行うのが原則です。
治療においては、筋腫の大きさ、症状の有無、患者さんの状態、そして患者さんの希望をよく考え合わせて、それぞれの患者さんにとって最良の選択をすることが大切なのです。