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いとう つくす

伊藤 盡

英語学 教授

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Tolkien おしごと

映画版『ホビットの冒険』第二部日本公開について

2月28日は、2月の最後の日。 ですが、日本人にとっては、映画『ホビット 竜に奪われた王国』の公開が始まった日です! ピーター・ジャクソン監督による、J.R.R.トールキンの著したファンタジー小説(邦訳『ホビットの冒険』瀬田貞二訳(岩波書店刊)+『指輪物語』瀬田貞二・田中明子共訳(評論社刊))の映画化で、10年前に公開された映画版The Lord of the Rings(邦題『ロード・オブ・ザ・リング』)三部作の前日譚となっています。 既に昨年末には全世界で公開され、軒並み観客動員数で1位を獲得した素晴らしい映画ですが、日本でも公開最初の一週間で、観客数も堂々の1位になりました。 ワーナー・ブラザーズ・ジャパンもホッと胸をなで下ろしていることでしょう。 私もホッとしました。 今回の第二部は、冒険ファンタジーの古典である『ホビットの冒険』をアドヴェンチャー映画として、スリルある作りに翻案しています。 原作にはないエピソードや登場人物も登場しますが、 原作者トールキンの意を汲んだ場面も数多く、 原作が大好きな私も、映画は映画として十分に楽しむことができると思っています。 是非是非、劇場で、できればHFRの3D画像で、堪能して頂きたいものです。

HFR 3D映画としての『ホビット 竜に奪われた王国』

HFRとは、「ハイ・フレイム・レート」の略で、従来のフィルム映画と同じように、 これまで1秒間で24コマで動かしていた画面を、倍速の48コマで動かすように撮影+上映するものです。 ピーター・ジャクソン監督は、この映画を撮影する際に、敢えて最初からこの手法での撮影を望みました。言わば、「中つ国」(トールキン原作の、現在の私たちの生きる世界と繋がるファンタジー世界)の世界を観客に十分味わって貰い、自分があたかもその世界の住人になったように感じて欲しいと考えたようです。 HFR撮影+上映の結果、実感として、まず眼の疲れがかなり軽減されました。3D映画は、右と左で見る画像を少しずらすことで立体感が出る効果を利用しているのですが、やはり眼鏡で人工的に作られている映像を長時間観るのは疲れます。その点、HFRの3Dは、観ている映像もなめらかに見えるだけでなく、ゆったりと安心して観ている気持ちになれます。 残念ながら、信州松本の映画館では、まだHFR上映は不可能ですので、県外に行かねばなりません。是非一日も早く、『ホビット 竜に奪われた王国』のHFRの3Dを導入して頂きたいものです。 とはいえ、それまでは各劇場で堪能して下さい。

映画『ホビット 竜に奪われた王国』の翻訳監修

辺見葉子先生の読売新聞2/22の記事

私は、映画版『ホビットの冒険』前作『ホビット 思いがけない冒険』に引き続き、 今回も慶應義塾大学文学部の辺見葉子先生高橋勇先生の両名とともに、字幕版、日本語吹き替え版の翻訳監修およびプログラム制作監修に携わりました。 僕たち3人は、大学の学部時代からトールキンの作品研究を本格的に始め、大学院に進学してからも、その研究を深めることに心血を注いできたと言ってよいでしょう。 そして、研究を深め、広げる中で、J. R. R. トールキンが過去から現在を結びつける「知の巨人」であることを知り、彼の膨大な知識の中の一部分を、3人3様のやり方で研究してきたのです。  辺見葉子先生は、トールキン作品のエルフがケルト的な要素を含んでいることに注目し、ケルト文学の方面を追求なさり、高橋勇先生は、トールキン作品が「現代に産み出した」ファンタジー作品というジャンルを、過去から現在にいたる系譜の中で位置づける研究をなさっています。  かくいう私は、トールキンが教授として、リーズ大学やオクスフォード大学で研究し、教えてきた中世英語文献学(古英詩『ベーオウルフ』『ガウェイン卿と緑の騎士』はその代表です)、さらにトールキン教授がその繋がりを重視して、学生たちと一緒に倶楽部まで作って読書会や飲み会などを楽しんだ、中世北欧文献学の分野へと進んでいきました。  私たちは、自分たちの研究を深めることで、さらにトールキン作品の魅力や、トールキン教授の意図や作品に込めた意味などを深く知ることができるようになったと思っています。 また、その内容を広く人々に伝えることによって、浅薄な読みではなかなか至らない視点や視座を読者に持って貰い、作品を楽しみ、愛するようになって欲しいと願っています。

吹き替え版の監修の仕事

 このように、トールキン作品は、いわゆる「奥が深い」作品ではありますが、映画として多くの方々に楽しんで頂くための工夫は、わかりやすい映像となっています。そこで、私たち3人は、ピーター・ジャクソン監督の工夫や、原作との繋がりを意識した場面やセリフを、日本語版の翻訳や吹替にも反映するようにお手伝いをさせて頂きました。  具体的には、例えば登場人物の背景を意識したセリフ、永遠の命を持つ生きもの「エルフ」の種族ごとのモノの見方の違いや、永遠の命を持つがゆえに何千年もの歴史や記憶を持つエルフのセリフには、数千年前の記憶が鮮やかに反映されています。そのようなセリフは、ただ英語を読んだだけでは、日本語に訳すに十分ではありません。  また、日本語吹き替え版では、原作者トールキンが創作した言語を、日本人の声優の方々に発音して頂かねばなりません。その場合、細かなニュアンスを伝えたり、言語(エルフの言語)ではどのような意味合いなのか、なども伝えることがお手伝いになります。発音についても、英語話者の声優さんとは違う難しさや、逆に容易な発音もあります。   『ホビットの冒険』の続編となる『指輪物語』が映画となった2001年以降の『ロード・オブ・ザ・リング』三部作でも私はエルフ語の監修者として働かせて頂きましたが、今回も、ガンダルフ役の羽佐間道夫さんとレゴラス役の平川大輔さんと再びお会いし、発音の練習をしました。さすがに経験者であられるお二人は流暢にエルフの言語を発音なさっております。 ちなみに、エルフ語ということでは、前作『ホビット 思いがけない冒険』では、魔法使いの1人ラダガスト役の野島昭生さんのクウェンヤの呪文は素晴らしいものです。今回はラダガストの呪文のセリフがなかったことが残念なほどです。そちらは、今でもDVDで聴くことができます。   一方、今回初めて登場する2人のエルフ、王スランドゥイルと女戦士タウリエルのエルフ語はそれぞれ素晴らしいもので、お二人とも前世はエルフだったのでは?と思えるほどでした。   字幕版のみならず、日本語吹き替え版も是非堪能して頂きたいです。

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