教員紹介

いとう つくす

伊藤 盡

英語学 教授

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ことば・言葉・言語 学会 研究 英語史

第20回国際歴史言語学会

日本での国際学会

現在、国立民族学博物館にて、 20th International Conference on Historical Linguistics が開かれています。 世界中から、言語を通時的に研究する方々が300人近く集まって、日本で意見交換や研究発表、情報交換を繰り広げています。 最近の日本では、たとえば、英語学と呼ばれる言語研究は、わりと現在の英語ばかりを扱う研究者が多いのですが、言語学の研究はもともと歴史的に行われることから始まりました。 現在では 英語で linguistics と呼ばれる研究が、「言語学」と理解されることが多いのですが、実は、歴史的でありながら、今の言語についても視野を持つ、Philology と呼ばれる言語研究は、言語研究の根幹にあります。 どうも linguistics しか知らない人は、philology に対して偏見を持つ人が多いのは、困ったものですね。 研究というのは、幅広いアプローチが必要だと思うのですが。 面白いことに、歴史的(時間を通じて研究するので「通時的」研究と言われます)に研究する 研究者の多くは、言語はひとつの時代の状態を見るのは当然で、それに加えて、 他の時代と比べることが大切だと認識しつつ、その困難さを実感しています。 その一方で、現在の言語状況だけを研究する研究者の多くは、過去の言語を研究する ことにあまり乗り気でない人が多いようです。 いろいろな言語の知識が必要になるからでしょうか。 「歴史言語学会」という場では、専門の言語は違えど、皆がそれぞれの言語研究、 それも、歴史を通じて人間と拘わる言語の研究の面白さを話し合います。 昨日は、昼食を食べながら、コーカサス地方の言語研究者とお話しましたが、 そこでは、4世紀以来のコーカサスの近隣の言語の歴史について、それまでほとんど 知らなかった様々なことを伺うことができました。 セム系言語や印欧語族と関わり合いながらも、独自の言語としての立場を保持していること、 また、ソビエト連邦時代からソビエト崩壊後の研究の状況、そして考古学との密接な協力が 如何に必要かなどを教えて戴きました。 そういうことは、実は、英語の歴史についても言えるので、とても刺激になりました。

研究発表、無事終了

国立民族学博物館のある万博記念公園で

実は、私の研究に関係する発表が一番多く行われた火曜日には、 公務のために信大に戻らねばなりませんでした(肉体的にもお財布的にも痛いところ)。 けれど、最終日目前の金曜日の午後のセッションでは、英語の歴史的研究の発表が集まり、 知的刺激に溢れたものとなりました。 テキサス州でのドイツ語話者社会での、 ドイツ語方言の音声的特徴についての研究では 通常では、古い発音が保持されると思われる「移住者の言語」が、 もともとのドイツ語とは異なる変化を遂げたことと、 その社会的、歴史的な背景についての研究報告がありました。 スペイン人でアメリカの大学での研究する若手研究者は、 現代英語の lest の語源的研究を行っており、 古英語の言語資料の解釈を巡って、独自の意見を表明し、 会場から多くの肯定的反応を引き出していました。 京都大学の若手の女性研究者は、日本語の「明らか」と英語の clear の用法の共通性に 基づいて、中英語以来、形容詞的な用法と副詞的な用法がどのような認識に基づいて 表現されてきたかについて、とてもオリジナルな視点から解明しようとしていました。 私自身の発表についても、肯定的な反応や質問を戴くことができました。 特に他の言語との比較をさらに進めるように奨められたことは、勇気づけられました。

北欧の言語学者たち

面白いことに、今回の学会には北欧からの研究者が数多く来日しています。 デンマークやノルウェー、スウェーデン、そしてアイスランドからの研究者と 多くの意見交換や交流をはかることができました。 特に、二年前に急遽参加したトロンヘイムの学会でお会いしたオスロ大学の ヤン・テリエと アイスランド大学のトッリと再会できたことは嬉しかったのですが ベルゲン大学のヨーハンナとトーニャと知り合えたことは更に刺激になりました。 アイスランド語をたくさん思い出せたこともさりながら、トーニャはバークレーで 将来を嘱望された素晴らしい研究者で、最近は古高地ドイツ語の Heliand の翻訳を出されたそうです。 彼女の博士論文も送って戴く約束をして下さり、来る冬に、私がベルゲンに研究訪問を することができたら再会しようと言って別れました。 ヨーハンナは巨体を揺らすアイスランド人で、ベルゲン大学で教えている研究者ですが そのダイナミックで活動的、明るい性格はトーニャとも共通し、我が親愛なる同僚の 女性言語学者を思い出します。 先日のなでしこジャパンもそうですが、女性が元気ですと、その社会や共同体も 元気になる気がします。男性陣も負けぬようにしませう。

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