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いいおか しろう

飯岡 詩朗

英米言語文化 教授

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授業関連 英米言語文化演習(-2006)

映画の教室2006

文庫本よりも安い価格で1950年頃までの優れた映画がDVDで手に入るようになり(とはえいえ、サイレント時代の作品はまだほんのわずかしかソフト化さ れていないが)、ともかくもそれがどのような作品なのかを見る(目で確認する)ことができるようになったのは良いことではあるものの、一方で、そうした作 品をフィルムで、そして映画館のスクリーンで目にする機会は、ここ10年ほどの間の名画座の相次ぐ休館もあり、ますます少なくなってきている。
kyousitu.jpg もちろん、公的な施設では、国立近代美術館フィルムセンターで、民間の施設では、たとえば、東京のアテネ・フランセ文化センターで、 過去の優れた映画が上映されることは今でもある。しかし、フィルムセンターでの上映企画は、監督をはじめとする「作家」特集など、良い意味で焦点を絞った ものが多いし、アテネ・フランセ文化センターでの年に数回行われる「映画の授業」のような企画は、フィルムセンターほど絞り込まれたプログラムではない が、かならずしもそれほど古い作品が中心的に取り上げられるわけでもない。つまるところ、英国映画協会(British Film Institute)なり、アメリカ映画協会(American Film Institute)なりが年に1度発表する映画史上のベスト10作品に毎年挙がるような、別の言い方をするなら、近ごろ復刊されたドナルド・リチーの 『映画のどこをどう読むか 映画解釈学入門』(徳間書店, 2006年)で取り上げられるような、「古典的名作」をフィルムで、そして映画館のスクリーンで目にする機会は思いのほか少ないのである。(もちろん、そ のような「古典的名作」とされる作品よりも優れた作品はいくらでもあるが。)
こうした「厳しい上映環境」を少しずつでも変えていこうという新しい試みがフィルムセンターで5月5日から始まろうとしている。それが「映画の教室2006」(5月5日(金)〜28日(日))である。その企画意図にはこうある。

春5月は、大学・専門学校等が新入生の受け入れを終え、在学生も本格的に新学年の活動を始める季節です。思えば1980年代よ り、名画座の相次ぐ閉館とともに映画史の古典をフィルム上映で鑑賞するという、かつては当たり前だった機会は激減しました。フィルムセンターはこの厳しい 上映環境に着目し、として、所蔵作品の中から世界と日本の映画史を学ぶ上で基本的な秀作を上映する「映画の教室」を開催することとなりました。

明確には述べられてはいないものの、「中心的なターゲット」とされる「新たに映画芸術に触れようとする方々」とは、映画史をはじめとする映画に関係する授業を受講する(首都圏の大学ではけっして少なくない)大学生だろう。
その意味では私が担当している「英米言語文化演習(映 画研究ゼミ)」や「英米映像言語文化関係論(映画史講義)」の受講生も「中心的なターゲット」に他ならないのだが、実際に彼らがこの「教室」に「出席」す るのはなかなか難しいだろう。各回の大学・高校生の入場料は300円と激安DVDよりも安いのだが、松本〜東京の往復交通費に少なく見積もっても6000 円程度はかかってしまうからだ。しかし、GW中に(あるいはその後でも週末に)東京に行く機会があるなら、その際にこの「教室」に「出席」してみてもよい だろう(というかしてみたほうがよい)。もちろん、フィルムセンターの展示室の常設展「展覧会 映画遺産」も必見である。
ちなみに、GW中の5月5日〜7日のプログラムは以下のとおりである。どれも間違いなく映画史上の「古典的名作」であり、歴史を超えた「傑作」であ る。(「映画の教室2006」を通してアメリカ映画が『駅馬車』だけというのは寂しいが。)この企画も優秀映画鑑賞推進事業に組み込まれ、全国で巡回上映 が可能になるとありがたいのだが。

 

5/5
5/6
5/7
12:00〜(103分) 12:00〜(84分) 12:00〜(93分)
『吸血鬼ノスフェラトゥ』
『ル・ミリオン』
『駅馬車 』
15:00〜(74分) 15:00〜 15:00〜(134分)
『戦艦ポチョムキン』
『ゲームの規則』
『赤い靴 』

 

* * *

5/5(金・祝)12:00〜
『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年)
監督:F・W・ムルナウ

5/5(金・祝)15:00〜
戦艦ポチョムキン』(1925年)
監督・脚本:セルゲイ・エイゼンシュテイン

5/6(土)12:00〜
ル・ミリオン』(1931年)
監督・脚本:ルネ・クレール

5/6(土)15:00〜
ゲームの規則』(1939年)
監督・脚本:ジャン・ルノワール

5/7(日)12:00〜
駅馬車』(1939年)
監督:ジョン・フォード

5/7(日)15:00〜
赤い靴』(1948年)
監督・脚本:マイケル・パウエル,エメリック・プレスバーガー


より詳しい情報は、フィルムセンター公式HP内の「映画の教室2006」を参照されたい。

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