教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

久しぶりの杭州便り

阿里巴巴(アリババ)を遠巻きに見る

前回紹介しましたように、杭州師範大学倉前新キャンパス近辺は本当に工事中だらけで、数ヶ月後には景色も一変していることと思われます。ただ、どれだけ街並みが変わっても、この近隣の中核はここが担っていくんだろうなという大企業が、文一西路沿いに鎮座していました。日本で言えば「楽天」に相当する会社と言えばよいのでしょうか、ネット通販を主に手がける「阿里巴巴(アリババ)」という企業の本社がそれです。昨年、ニューヨーク証券取引所に上場したときに日本でも大きく報道されましたので、ご存じの方も多いと思います。この阿里巴巴の創業者の馬雲氏は、杭州師範大学の出身だそうで、母校と共に倉前に拠点を構えたようです。師範大の先生がわたしの滞在中にスマホを貸してくれて、そのスマホで「スターバックス」を検索したら、この場所が出てきたので、周りを散策(探索)してみました。入り口で身分証の提示が求められていたので、中にあるであろうスタバに行くのは断念しました(ちなみに、別のオフィスビル群のなかにスタバがあったので、そこに行き、珈琲を飲みながら、ぶつぶつぶつぶつと中国語の練習をしました)。

あの方々です

いまの中国は、日本以上に「ネット通販」が盛んなようですし、ネットに接続できる環境は日本以上に整っている印象があります。ただ、Gmailが全く使えない(同時期に中国に居た知り合いによれば、「以前なら100回に1回ぐらいはつながったのに、今回は500回試みても接続できなかった」そうです)ので、大変困りました。「中国でfacebookやLINEが使えない」ということは日本でも有名ですが、それに代わる「微博」「微信」があるので、中国国内の人に限って言えば、それほど困ることはないのでしょう。昨年9月に江西に調査旅行した際、メンバーの一人がLINEが使えるか試してみたら、何だか変な動作をし出して怖かった、と言っていました。ところが今回、西湖近くに出来た新しい商業区を歩いていたら、見慣れたキャラクターが大々的に現れてきたので、たいへん驚きました。知り合いからの情報によれば、LINEの会社が中国の企業と提携することになったそうです。時代は刻々と移り変わっているようです。

楓林晩

「ネット通販が盛ん」ということで一番あおりを食らうのが、例えば、書店でしょう。かつてどこかで「世の中には二種類の人間がいる。宮部みゆきファンかそれ以外だ」という文章を読んだことがあります(元ネタはたぶん別にあるのでしょうね)。この表現を借りるなら、「中国には二種類の本屋がある。新華書店かそれ以外だ」。「新華書店」というのは、要するに政府系・国営の書店で、中国国内の各都市にあります。杭州で言えば解放路や慶春路にあり、また「新華書店」とは名のっていなくても、文二路等にある「博庫」という本屋さんも同系列です。ですから、「それ以外」というのは民営の書店になります。さすがに杭州は文化あふれる街なので、良質の民営書店が多くあります。サバティカルの時には三日とおかず通った「暁風書屋」はその代表格です。今回は体育場路の本店、および浙江大学西渓校区店・紫金港校区店を訪れることができました。最近、中央政府の「領導」(指導者)が同店を訪れたようで、大々的に写真と記事が飾ってありました。浙江大学西渓校区ということで言えば、かつてその正門前の杭大路にあった(もっと昔には西門前の文三路にあった)「杭州書林」が、私のサバティカル中に郊外に移転してしまい、大ショックを受けました。今回、知り合いから借り受けたスマホで検索して、その移転先を探し歩いてみたのですが、どこにも見当たりませんでした。地価の高騰で郊外に移転したものの、移転先もまたさらに地価が急騰し(近くには巨大ショッピングモールが出来ており、近いうちに地下鉄も通る予定とのことです)、さらにどこかに移ったか、あるいはネット販売だけになってしまったのだろうと思われます。

通雅軒

今回の滞在中、杭州を代表する民営書店「楓林晩」にも立ち寄りました。この本屋も、以前は文三路にあったのですが、四五年前に紫荊花路に移転しました。サバティカルのとき、知人から借りていた自転車で同地を訪れたことがありますが、高級住宅街の一角を占めるそのロケーションに、「こっちのほうが地価が高くないのか?」といぶかしく思ったものでした。今回は、前回以上に「地価高騰感」がぷんぷんしていましたが、今後のご発展を祈念するしかありません。ちなみに、「楓林晩に行った」と中国の友人(80后)に言ったら、「ネットでその本屋から本をよく買うけど、実際に店に行ったことはない」と驚かれました。かつて文三路に同店があった際、常宿にしていたホテルの至近距離にあったため、研究者仲間たちと、ホテルに着くなり競うようにその店に直行していたことが懐かしく思い出されます。日本でアマゾンさんをバンバン利用している身としては、偉そうなことは全く言えないのですが、中国の本屋さん、特に民営書店さんが末永く存続していかれることを願ってやみません。ちなみに、今回初めて行った本屋さんもありました。文三西路にある「通雅軒」という民営書店さんで、時々、「国学講座」なんかも開かれているそうです。ずらーと並ぶ本の海に、嬉しくて気絶しそうになりました。

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