信州大学農学部 近未来農林総合科学教育研究センター
バイオリソース部門(生物資源研究室)
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Research

研究使命:動物消化管微生物群集の機能を解明し、動物生産への応用を図る

目標@ 消化管における動物と微生物との共生関係の解明
目標A 微生物機能の活用による資源有効利用技術の開発を通じた循環型社会完成への寄与


私たちの身の回りには、目で見ることはできませんが、あらゆるところに様々な種類の微生物が存在しています。それらの中には食中毒や病気の原因となるものがいる一方で、ヨーグルトや調味料、漬物といった食品(「発酵食品」といいます)の製造や医薬品・工業製品の製造に用いられているものもいます。また、ヒトを含めた動物の胃や大腸にも多数の微生物が存在し、動物の生命活動に欠かせない働きをしています。
この研究室では、こうした微生物を中心として、あまねく広く生物を資源としてとらえ、それぞれが持つポテンシャルを掘り下げて追求するとともに、その多彩な能力を有効に活用して、調和のとれた持続的な社会の形成に寄与できる研究に取り組んでいます。



未利用資源(食品系素材)の飼料化によるエネルギー循環系の構築
食品製造残渣や食品廃棄物の飼料利用は、資源循環のサイクルを完成させるために有効な手段ですが、嗜好性や栄養素の消化吸収性が低くなる場合があります。そこで、家畜による栄養消化吸収の仕組みを微生物学的、分子生物学的に解明することにより、個体の嗜好性が高くかつ給与による栄養的・環境的効果が期待できる、これまで使われなかった新しい資源の飼料化を模索します。

動物消化管微生物の新規機能探索
ヒトや動物の消化管では多様な種類の微生物による消化管微生物群集が形成されており、宿主動物に対して栄養素代謝や免疫防御機能などの重要な役割を果たしています。それぞれのメンバーは、宿主の発育に伴う器官発達やストレス、食事といったさまざまな要因に対して明確に反応しており、微生物が環境にすみやかに適応し、群集としての機能を最適化させている様子が窺えます。消化管細菌が持つ有用な機能がどのように発揮されるか、そのメカニズムを解明し、生体内または工業的に利用可能とするための研究を行っていきます。

消化管環境の改善を通じた家畜生産性向上
動物消化管群集と宿主動物の栄養・健康との関係を生かした動物生産への応用も進められています。具体的には、ウシの第一胃(ルーメン)内微生物群集の調節によるメタン生成抑制を通じた飼料効率の改善や、幼獣へのプロバイオティクス及びプレバイオティクスの投与による増体促進、健康状態改善などがあります。当研究室では、特定の素材を摂取することによる、家畜の消化管微生物構成の変動と生産性向上との関連を研究しています。


Equipment

研究で使用している装置機器類

GLOSSARY  【分子生物学的手法による微生物群集解析】
-微生物が持つ遺伝子またはその情報を利用しておこなう, 微生物集団の特徴づけ
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*地球上に存在する生命体のなかで微生物は主要なメンバーであり, 発酵による食品や化学製品の製造あるいは廃水処理プロセスといった産業的な有用性を取り上げるまでもなく, わたしたち人類は微生物と常に接して生活していると言えます. ヒトや動物の消化管に棲息する微生物群集(消化管微生物群集)は, ヒトを含めた動物と微生物との相互作用のなかで最も代表的なもののひとつです.

*微生物群集の構成を調べ, 微生物と宿主の相互作用を調べる手法としてこれまで培養法, すなわち生きた菌体を適切な環境下で増殖させて利用する方法が多く用いられてきました. 菌体を純粋培養することは, 菌株の性状を分析し, その分析結果から環境における役割を推定するために不可欠であり, 今後もその重要性が失われることはありません. その一方で, 培養法は以下に挙げるように様々な限界を持つ方法でもあります:
(1)ほとんどの環境下に棲息する微生物は分離培養が容易ではなく, 培養可能な微生物は数%程度であることから, 培養可能なものだけでは群集構造を完全に把握できません
(2)培養可能な微生物の系統分類体系は, 主に生理的, 形態的な特徴で構成されており, 多様なメンバーで構成される群集の分布を一様の基準で表現することは困難です
(3)純粋培養の際に, 標的とする微生物の種類ごとに特殊な組成の培地を必要とするほか, 消化管微生物群集の主要なメンバーである偏性嫌気性菌の増殖は極めて遅く, 倍加時間(細胞数が2倍になるための所要時間)が2週間というものさえ存在します. このように, 純粋培養は一般的に多くの時間と労力を要する作業であることも, 研究進捗を妨げてきた大きな理由のひとつと言えます.

* 培養法が持つこうした欠点を解消するために, 微生物が持つリボソームRNA(rRNA)とその遺伝子に代表される分子生物的情報を利用した技術により, 様々な微生物群集構成を効率よく解析する手法がこの20年間で種々開発され, 利用されてきました. 分子生物学を応用した簡便で単純化された(つまり, 多くの研究室で実施可能な)さまざまな手法の確立とその利用が, 微生物生態学における最近の急速な知見の蓄積に大きく貢献しています.

*分子生物学的手法の種類としては, まずDNAを利用するものとして, 16S rRNA遺伝子の数百〜数千クローンの塩基配列シークエンスをひたすら読んで解析するクローンライブラリ解析法, 群集同士の比較や経時変化をより簡便に追跡可能なフィンガープリンティング法(DGGE, T-RFLP), 定量性を持たせた定量PCR(リアルタイムPCR)法があります. このほかに,微生物細胞中のrRNA分子そのものを検出する方法も多用されており, 研究レベルではメンブレンハイブリダイゼーション法, Fluorescence in situ hybridization (FISH)法などがこれまでよく用いられてきました. これらはともに簡便性・迅速性や精度の面で改良の余地があったことから,微生物由来rRNAを指標とする, より迅速かつ正確に微生物群集解析を実施可能な手法を考案しました.

*この手法は, リボヌクレアーゼH(RNase H)とDNAプローブ(特定微生物グループ由来のrRNA配列に相補的なオリゴヌクレオチド)を利用して, 微生物由来SSU rRNA分子を配列特異的に切断することを原理としています(配列特異的SSU rRNA切断法). 本手法では, 様々な種類の微生物で構成されている中で, 特定の微生物群がどのくらいいるかを迅速に測定でき, 個体間の差異や微生物構成の経時変化を容易に捉えられます. このことから本手法は, 消化管微生物群集のように, 多様な微生物が条件によってその構成比を変えるような集合のモニタリングに適しています.



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