信州大学農学部 動物資源生命科学コース
生物資源研究室
Top    Message    Research    People    Facility    Archives   Misc
Message 2012, 13  2014, 15   
#15  「Mouth of funnel (漏斗の口) 」

3月になり、今年もたくさんの卒業生が信州大学農学部から飛び立っていきます。まずはみなさんの、4年間の真摯な学びに敬意を表し、これからの輝かしい前途を祝福したいと思います。 農学部卒業生の数は毎年160-170名、そのうち修士課程に進む学生は他大学への進学を含めても60-70名、その先の博士課程となると毎年数名…非常に鋭角の三角形ができます、どの向きを頂点とするかは別として。
こうした一種の歪さで表現される問題-後期高等教育の供給力に対する、需要の不足-は、いつものことですが、いま新しく提起されているようなものでもなく、したがって限られた数の人だけが認識していることでもありません。 何かを少し変えれば(あるいは何かが少し変われば)解決できるわけではない、根っこの深い問題です。

三角形の面積が広がらない(頂辺が伸びない)理由のひとつに、学部卒業を起点として考えたとき、それぞれの学生が時間と費用の二重コストをかけて培い、2年後あるいは5年後の出口で持ち得ている自身の値打ちを、 世界や社会はどこまで必要としているのかが、入り口からはなかなか見通せない、端的には将来望む仕事に就けるかどうかわからない、というのは、外れではないと思います。 時間軸というのはすべての人に平等であり、それゆえに誰も誰からも奪うことも誰にも与えることも能わない、なかなか絶妙な配分をしてくれるとつくづく感じます。
それはさておき、課題に直面しているそれぞれの学部学生に対して、真剣かつ具体的に、将来のことを一緒に考えアドバイスしてくれる専門のスタッフの人もいる中で、 私自身がだれかのロールモデルとなれるものでもなく、責任を負うわけでもなくただ「頑張ればなんとかなるよ」と励ますのにも、一抹の躊躇を覚えます。

一部の人は、20代真ん中前後の時点で明確な将来のビジョンが描くことができて、それはとても立派な、素晴らしい話で、周りはただそれを応援すればいいこと。 そうではなくて、ほとんどの人は手探りのなか自身の未来を見通したいと踠(もが)いているとしたら、そこで一時的に視野に入る障害物に対して、リスクを取るまたは避けるという表現は、実はどちらも適切ではないように思うのです。 本当の人生のリスクは、見え見えのところに転がっちゃいない。
自分が敷いている人生のレールが地平線まで一直線なんて人、私は知りません。左右へのカーブ、上り下りの勾配、そしていくつかの分岐器。レールの方向は人それぞれですが、その先が見えていないのはみんな同じです。 倍くらいの長さを生きてきた(だけの?)私は敷設現場の作業員になって、新しいレールと枕木と犬釘(とバラストと金鎚)を準備して傍に立ち、こんなふうに問いかけると思います。
「あなたがこれから向かう先はあなたにとって十分に楽しい場所ですか?あるいは、そこがどんなところだろうと想像することを常に楽しんでいますか?」


平成30年3月23日
上 野   豊

生物資源研究室 TOP