信州大学農学部 動物資源生命科学コース
生物資源研究室
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#17  「Carry-over (入試の後で必要な学力[英語]) 」

新しい年度が始まりました。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。大学というそれまで知らなかった新しい世界に驚き、ときに戸惑いながらも、これからの4年間でしっかり学んでいただいて、さらにそれだけではない、思い思いの人生のファンダメンタルを培ってもらえればと、願うばかりです。

受験のために勉強したことが大学に入ってすぐに要らなくなることはないと、ほとんどの人が考えていることだと思います。一方で、学びに継続性があるからこそ、大学に入ってからの効果的な学修のために、心掛けてほしいことについて、少し考えてみたいと思います。今回は、英語についてです。

客観的な数値でいえば、2015年度に農学部が新しいカリキュラムとなってから、1年次の6月と、3年次の6月と12月の合計3回、TOEIC-IPテストを受けてもらうのですが、同じ6月受検で比較(つまり、その時に出題される問題は同じです)すると、1年生と3年生、どちらが高いと思いますか?…2年長く勉強しているから、3年生? ではなく、1年生のほうです。つまり、それぞれの学生で見ると、1年次のスコアよりも3年次のスコアが低くなっている人のほうが多く、50-60点下がる人もいます。もちろん、変わらずに高い点数を上げている人もいますし、そもそもTOEICの試験形式や評価基準が大学で学ぶ英語が目ざすものとは違うのだからその比較に意味はない、という意見もあるでしょう。読む・書く・聴く・話す、どれかの能力が向上している可能性について、どんな数値尺度で測定してもそれは誤差あるいは妥協を含みます。とはいえ、実際に学生の英語は在学中に上達しているかについては、残念ながらその答えはYes! ではないようです。では、そのスコア変化は何を意味しているのでしょうか。

大学受験までの英語の学びが、読む・書く(あるいは読む・聴く)のように限定されたものであるとしても、限られた時間で効率よく、体系的、習慣的そして継続的に行われてきたことを、端的に示しているように私には感じられます。さらに言えば、その学びは高校などで提供される授業だけでなく、自主的な学習も含みます。英語が得意な人も、そうでない人はなおさら、自分がふだん使っている日本語とは違う言語を、毎日相当の時間を割いて勉強してきたこと、それによって少なからず蓄積されたものがあることを、もっと前向きに評価してよいのではないかと思うのです。その前提に立つと、つぎに、入学後の点数減少を防ぐために、どんなふうに取り組めばよいのでしょうか、どのように学びを変えればそのギャップは埋まるのでしょうか。

4技能すべてを得意とする人ではなく、すべてを苦手とする人の英語を見ていて、特に大きく困っているのだろうな、というのは、書く力であるように思います…4つの中でいえば日常生活で最も遠いから、とくに困ることもないのでは?となる。そう、困らないことが、困るのです。例えば読解力でいえば、英文をオンラインの無料翻訳にコピーペーストすれば、きわめて自然な和訳文章が生成されます(それでも、forageを画一的に秣[まぐさ]と訳されるのに閉口し、その直訳を衒うこともなくゼミ資料に載せる学生に落胆しますが)からそれを使えばいいですが、日本語の英訳は、まだまだそのレベルに達しておらず、使えるのは単語やフレーズの英訳がいいところです。この一点を見ても、(和訳と比べて英訳の)需要が少ないんだろうな…と思います。あれこれ言う私も、論文を英語で書いて英文校正の外注に出すと、校正なのにほとんど書き直されて戻ってきて、若干打ちのめされるのですが。

少し長くなって脱線気味にもなったので、この続きは日を改めて(がんばって今月中に)。


平成31年4月2日
上 野   豊

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